Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

契約書チェックの仕方

他社の法務の方々が集まる場所で、「契約書チェック依頼はどのように処理するんですか」と聞いて回ったことがあります。n=8くらいではありますが…

  • 審査基準はどうなっているのか。
  • 法務でどのように見るのか。

といったことです。

 

公式・非公式に何らかの基準を持っているところが多い

京阪神企業へのヒアリング又は実体験の結果、公式であるか非公式であるかの違いはあれ、何らかの基準をお持ちのところが多いようです。

しかし、その基準は各社各様。

上場企業であっても、全件チェックというところもあれば、秘密保持契約は見ない、ひな形利用は見ない、社長名で締結される契約は見る、頼まれなければ見ない・・・など。

 

「秘密保持契約は見ない」という企業は、日本人なら誰でも知っているような超有名企業なのですが、そこの法務部門のご責任者は、「国内企業同士の契約なんて、問題になることがほとんどないんだから、契約書チェックに時間を割くのはあまり効率的とはいえない」という、かなり割り切ったお考えでした。

もっとも、この方法が実行できるのは、社員の方がある程度法的リテラシーを備えていることが条件ですよね。

 

と書いておきながら、結局、契約書は千差万別なので、一律に審査基準を設けることは難しい。きっと、どこの会社さんも臨機応変になさっていることでしょう。

「全件チェック」は気持ち的にはやりたいけれど、さすがに無理です…

契約書チェックはシングルが基本?

依頼がきたものを何人が見るか?という点では、原則1名というところが多く、私としては結構驚きでした。全員が一人前というところが多いのでしょうか。

というのも、私は、現在、全件ダブルチェックをしています。厳密には、その上の管理者も概要は目を通すので、トリプルチェックです。

この方法を採用しているのは、以下のような理由によります。

  1. 今のところ、何とか対応できる
  2. 上長(部門責任者)にせめて入り口と出口だけは知ってもらいたい(誰がどんな依頼をしているか)
  3. 契約書は、より多くの目で見たほうがよい(どうしても人間には癖がある)
  4. リソースが少ないので、若手にも難易度の高い契約書を任せている
  5. 若手に必要以上の精神的負担を負わせたくない
  6. 主担当にとっても、レビュー担当にとっても、勉強になる

→時間を少し長めにとってでも、ダブルチェックの方が会社にとってプラス

 

もちろん、一人前の担当者の場合と若手の場合では、レビューの気合いというか、かける時間や精度は変えます。若手は成長の手応えを直に感じることができるので、その点でも良いですね。

依頼フローはメール派とワークフロー派に分かれる

契約書の依頼はどのように受けるか?についてもお尋ねしたところ、メールベースというところと、ワークフロー経由というところが半々くらい(ワークフロー派が多め)でした。色々ご意見あろうかと思いますが、私は絶対にワークフロー経由にすべきだと考えます。

メールベースの依頼の場合、依頼を受けた法務部門はこんなことをしているのですから。

  1. 依頼メールや資料をダウンロードして法務の共有フォルダに保存する
  2. 受付簿をつける
  3. レビュー結果をメールで返信する
  4. レビュー結果と返信メールをダウンロードして法務の共有フォルダに保存する
  5. 受付簿に返信日を記入する
  6. 再チェック依頼があれば、また保存→返信→保存

ワークフローならこの作業はすべていらない。

そして、ここまでして保存するのに、フォルダ内の検索をするのは結構手間!法務のナレッジとして活用しにくい。。だから、この管理方法をやめようと思ったことも何度かあるのですが、将来の法務の人が過去のデータがなくて困ってはいけないと、やめることができません。。

AIは契約書チェック業務を助けてくれるか

今のところ、契約書チェックの依頼が来たら、ドラフトをプリントアウトして、いざ!という感じでチェックしていくわけですが、この作業は効率化できないのか。

契約類型に応じて、チェック項目を作ったり、ひな形となる条項を設けるといった工夫をされているところも多いでしょうが、基本的に目視&手作業。よって、時間はかかるし漏れもあるかもしれない。

このペインというか、課題をAIで解決しようとしてくれるサービスも現れつつありますが、企業が締結する、内容においても形式においてもありとあらゆる契約に対応するのはまだ難しいようです。近い将来ぐんと改善されることは間違いがないと思いますが。

それに、ありがちな話で、一定程度のシステム環境が必要で、必ずしも用意できるとは限らない…残念。