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大阪で働く法務パーソンのはなし

事業部門への法務ファーストステップ研修

春がすぐそこまで近づいてきて、新入社員研修のスケジュールが決まってきました。

コンプライアンスをテーマとした新入社員研修の内容や工夫について、以前に経営法友会でシェアする機会があります。そのときに感じたのは、社会人になりたてで、これから会社の看板を背負う若者たちへ、伝えたいことを明確にし(極力削ぎ落とし)、簡潔に伝えるようにみなさん創意工夫されていることです。

会社にもよりますが、未成年を相手にする会社さんも珍しくなく、レジュメの文字が多くなりすぎないように、など、みなさんの工夫を学ばせていただきました。

 

でも、今日の記事は、新入社員研修のお話ではありません。

実務的な研修はビジネスロージャーナルの記事を参考にしよう

今日は、少し前の記事ですが、ビジネスロージャーナル1月号の記事をご紹介したいと思います。特集記事の名前は、「法務研修のWHATとHOW」

www.businesslaw.jp

 

新入社員向けのコンプライアンス研修は、それなりに経験もあるのですが、その先となると手探りも手探り。毎回、フィードバックをもらいながら、試行錯誤しています。

とはいえ、今のところ実施できているのは、管理職以上向けのコンプライアンス研修のほかは、事業活動に関する法律の解説がほとんどです。根本的な問題意識である法務リテラシーや法的リスク感度の向上を目的とする研修ができていない、うまいやり方が思いつかないと歯がゆく思っていました。そんな折に出会ったこの記事。

かゆいところに手が届く、そんな気分でした。

ぜひトライしたい参加型研修@ブラザー工業さん

現在、私の部署で企画・実施している研修は、座学中心です。

それでも、毎回質問はたくさんしてくれるし、フィードバックのアンケートも概ね高評価をいただいて、やってよかったなと終了後胸をなでおろします。他方で、果たしてこれはきちんとみんなの力になっているのだろうか?という疑問が心の片隅で燻ります。

そんな私の問題意識に応えてくれたのが、特集記事の1本目、ブラザー工業さんの「契約実務スキル×参加型でやる気を引き出す」

この研修の対象者等は、次のとおりと説明されています。

 

T a r g e t
事業部門の中堅社員(数年以内の管理職昇格を目指す総合職)・新規事業分野の担当者(管理職含む)
1回当たり約20~40人(任意参加)

 

R i s k
・ 契約書作成の遅延や抜け漏れ等により、納期遅れや業務手戻りが発生する。
・ 場当たり的な契約交渉により、取引目的が達成されなかったり、トラブルが発生したりする。
・ 決裁者(押印責任者)への説明が不十分なため潜在リスクが顕在化し、押印プロセスの遅延につながる。

 

G o a l
契約業務のスキルを習得するとともに、契約業務全般への意識を高める。

「決裁者への説明が不十分なため潜在リスクが顕在化し、押印プロセスの遅延につながる」というリスクはどのようなことか、わかりかねるところもありますが、少なくとも押印の手前で止まるということは、踏みとどまっているわけですから、管理職の法務リテラシーはかなり高いのでは?と思うのですが、そのほかのリスクは、どこの会社の法務担当者も「あるある」なことでしょう。

そこで、ブラザー工業さんが取り組まれたのは、知識を授けない参加型の研修。これが、大変興味深いのです。

ケーススタディでグループワーク

実際にどういうものか。

簡単にご紹介すると、①あるケースで起きる出来事を時系列に並べかえ、②どこで法務に相談するか、どんな契約書が必要かを議論し、③交渉のシミュレーションを体験し、④決裁(押印)をもらうための押印者への説明にチャレンジする、というもの。これを、4人1組や2人1組のグループワークで行うそうです。

とてもいいなと思ったのは、①や②において、カード(札)を用意し、手を動かすということ。議論が白熱して時間のコントロールが難しくなるという嬉しい問題が起きる可能性が高いですが、当事者になって具体的にイメージしながら取り組むことは、学んだことを血肉にするために非常に有効的なはずです。

 

実は、今回、やっとのことで手にできた研修枠があり、ターゲットも近いので、ぜひこの方法を真似させていただきたいと思いました。「思いました」というより、真似させていただくつもりです。

 

そのほかにも、今回の特集記事では、もっと契約実務によった研修や、役員向けのインサイダー取引防止に関する研修の紹介などもあり、もっとじっくり読んでみようと思っているところです。

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