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大阪で働く法務パーソンのはなし

軽減税率がわからない(涙)

今年の10月から消費税率が引き上げられることはずいぶん前から決まっているし、「予定通りやりますよ」と政府も言っているのに、どこかで再び延期されるのではないかという希望?予感?を拭いきれず、今ひとつ対応に本腰が入らないのは、私だけでしょうか。

今回の増税から、軽減税率制度が導入され、飲食料品等は税率が据え置かれますが、線引きが難しいという問題はまだまだ残っています。

コンビニのイートイン問題が代表例

まだ解決していない(財務省としては解決済と思いますが…)代表例は、コンビニのイートインですね。コンビニの前を通ると、大勢の人がイートインスペースを利用しているのを見かけます。

テイクアウトなら軽減税率が適用されるのに、そこで飲食してしまうと外食になって10%が適用される。

コンビニ業界としては、ここまで浸透したイートインを今更やめることは難しいと考えているようですが、財務省は譲る気配なし。

このままいくと、テイクアウトかイートインかでレジ袋の色を分けるとかするのでしょうかね。もし、テイクアウトと申告した顧客がイートインスペースで食べだしたら、2%分追加で徴収するのか?などと、疑問が湧き出てきます(そんなわけないと思うけれど…)。

Aコンビニでテイクアウトで購入し、近くのBコンビニで食べる、などというナンセンスがことが起きたりしないかしら。

川上の事業でも軽減税率があった

恥ずかしい話、つい最近まで、軽減税率があらゆる食品に適用されるという事実を把握していませんでした。

食品添加物といったものも、「食品」として販売される限り、BtoCだろうがBtoBだろうが軽減税率が適用されるんですね。

 

飲食料品を販売する事業者が、人の飲用又は食用に供されるものとして譲渡した場合には、顧客がそれ以外の目的で購入し、又はそれ以外の目的で使用したとしても、その取引は「飲食料品の譲渡」に該当し、軽減税率の対象となります。

(消費税軽減税率制度の手引き 9頁)

製造委託は「飲食料品の譲渡」か「加工」か

私は飲食料品を扱う会社に勤めているのですが、先日、生産管理部門から「製造委託の委託料は8%のままでよいか」という質問を受けました。

一瞬、「え?10%でしょ?」と思ったのですが、踏みとどまって考えてみました。

製造委託、弁護士さんは「製作物供給契約」とおっしゃるこの契約類型は、世の中で広く行われているわりには、なかなか謎な契約書です。

果たして売買なのか、請負なのか。売買なら「飲食料品の譲渡」なので、軽減税率適用、請負なら「加工」で対価は「加工賃」だから、軽減税率適用なし。

英文では、製造委託は、”contract manufacturing”とかいって、受託者のことを”contractor”(請負人)というので、「請負」と整理するのかなぁ?などと、あまり意味のない想像をしたこともあります。英語で考えて理解できる問題ではないのに。笑

 

私の認識では、下請法や印紙税法では、製造委託は「請負」という整理になっていると思うのですが、会計処理は「売買」ということもあるそうです。

製造委託は「売買」であり「請負」である

弁護士さんや税務アドバイザーさんも巻き込んで検討した結果、我が社の場合は「売買」でよいのではないかという結論に至りました。

その理由は、私たちが「仕様を指定して最終製品を納品してもらう」という契約形態で、「加工」とは違う、ということによります。

これが、原材料を当社が完全無償支給している場合、もはや「加工」であり、「請負」でしょうというお話もありました。

複数の製品を製造委託している場合、A製品は無償支給が多く、B商品は完全にお願いして作っている、ということも容易に想像できるし、支給品の割合がどれくらいだったら「請負」とみるべきか、それは原材料価格でみるのか、重量でみるのか、など、考え出したら深みにはまります。もし、A製品は10%、B製品は8%で、なんてことになったら、生産管理部門も財務部門もシステム部門も(そして監査法人も)パニックになりそうです。

おまけ:販売協力金は「対価の返還」&請負の場合は要印紙

恥ずかしながら、この問題に付随して学んだことがもうひとつ。

事実上のボリュームディスカウントであることの多い「販売協力金」。売上を大きく見せたい方にとっては、値引きではなく「費用」とみせるほうがよいらしく、日常的に行われているようです。

これは、印紙税法上は「割戻」と呼び、対価の返還として取り扱われます。つまり、結局値引きと同じですね。さて、そうすると、売買取引における「販売協力金の支払覚書」は継続的な売買契約の重要事項(=価格)に関する取り決めになり、原契約を参照していようがいなかろうが、原契約と同じ印紙税を納付する必要があるのか!?

答えは否です。印紙税実用便覧に明確に書いてありました。

一方で、これは例外的に?非課税となったそうで、請負契約における協力金の支払の場合は、しっかり課税文書になるとのこと。その差はどこからくるのですか?と税務アドバイザーに聞いたものの、「そうなっているの」という取りつく島のない回答でした。

 

ちなみに、我が社の製造委託は「売買」と整理したので、委託料(代金)には軽減税率が適用され、それに対するボリュームディスカウントである協力金についても消費税は8%にする、ということで落着しそうです。

でも、印紙税法上は、製造委託は「請負」じゃなかったっけ?