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大阪で働く法務パーソンのはなし

法務のキャリアパス

BUSINESS LAW JOURNAL 4月号のもうひとつの特集は、「法務部門の管理職に聞く人材採用・キャリアパスの課題」

コンパクトM&Aに続いて大変興味深い記事でした。

BUSINESS LAW JOURNALは、いつも興味をそそる特集を組まれますね。どういうご経験を積まれた方が考えてらっしゃるのでしょうか。

法務人材は空前の売り手市場?

第2特集のトップ記事は、「管理職のための採用・リテンションの最新動向」です。執筆者は、西田章弁護士。弁護士のキャリアについて語る人といえば、私は西田弁護士以外存じ上げません。商事法務の記事を読みすぎでしょうか。

あるネットの記事で、「法務は空前の売り手市場」とあるのを見かけたことがあり、「本当かしら?」と思うのですが、実際、私も中途採用活動を行なっており、かつ、苦労しています。また、転職活動をしていないのに、紹介会社から連絡がきたり、法務の集まりに顔を出して半分冗談・半分本気でスカウトされたりしたこともあり、確かに法務もまた人手不足なのかなぁという気がいたします。

さて、西田弁護士によれば、「売り手市場」といいながら、ジュニア/中堅/シニアで状況は異なるとのことで、

ジュニア→量的には供給十分

中堅 →海外案件を扱えるかどうかで希少性が分かれ、海外案件の即戦力となると採用難易度が急に上がる

シニア→スペシャリスト採用された人は、世代交代時に処遇に困る

ということだそうです。

「海外案件を扱える」というのは、どういうことをいうのか。何ができたらいいのか、そこを書いてほしかったです。笑

もっとも、自分が「海外進出しているがドメスティックな会社」に勤めているからか、一部の会社を除いて、それほどまでに「海外対応力」を求める意味があまり理解できません。そんなに自前で対応しなければならないんでしょうかね。英語の読み書きができれば何とかなるんじゃないか、というのは甘いでしょうか。なお、我が社では、英語が読めれば何とでもなると思っており、むしろ、あまりに海外志向が強い方はお断りの方針です。そんなにはお仕事がないので。

また、西田弁護士は、優秀な法務人材が欲しいなら、報酬をもう少し上げることを提案するというようなことも書いてらっしゃいました。私も同意します。

実際には違うのかもしれませんが、求人票に出ている報酬は、法務人材が負う負担に比べてちょっと低いんじゃないでしょうか。法務は、その仕事をするために、業務内外でかなりの研鑽を積むので、そこのあたり、もう少し加味いただけたらと思います。そして、粉骨砕身している現在の人材にも還元してほしい。

 

西田弁護士の記事の最後に、以下のような記述がありました。

 

ー弁護士資格がない法務人材を社外役員に誘うニーズはあるでしょうか。

弁護士資格よりも、取締役会で取り上げられるような議題の審議に参加した経験のほうが重要です。経歴的には執行役員を経験している人のほうが誘いやすいとはいえます。そうでなければ、コーポレートガバナンスや内部監査等に関する論文を公表していると、候補者としての適性を指名委員会等に伝える材料を得られるので、紹介業者としてはありがたいですね。

ーBUSINESS LAW JOURNAL 2019年4月号53頁 

 BUSINESS LAW JOURNALには、ぜひ、法務パーソンが論文発表できる場をもっとたくさんご提供いただきたいですね。

法務部門の管理職は、離職防止に心を砕いている

また、記事によれば、リテンションがこれまで以上に重要視されるようになっているそうです。

法務は、仕事柄、高い集中力が要求されるし、言いにくいことを言わなければならないし、見たくないものを見なければならないし、と、ストレスがかかりやすい職種だと思います。やめたいと思うときがあって当然です。

先日、20代半ばの部下との評価面談の際、「『誰か』の役に立っているという実感はあるけれど、『会社』の役に立っているという実感はあまりない」と言われ、この子はなんと聡明かと感動しました。「力不足でごめん」というほかありません。

管理職としては、そういう優秀な人材のリテンションに努めるのが会社のためなのでしょうが、こんなに優秀な人が他で働きたい場所を見つけたのなら、それでいいじゃないかと思います。自社では、優秀さを生かせる仕事や快適な労働環境を与えられないわけですから。

法務のキャリアパス

法務のキャリアパスは、大きくはスペシャリストかジェネラリストの2択です。

ジェネラリストでは、ジェネラルカウンセル(GC)やチーフリーガルオフィサー(CLO)といった専門性を生かすかどうかという選択も可能です。特集記事での報告によれば、GCやCLOは、今後は有資格者が担うだろうから、若手なら資格取得を目指すことを勧めるコメントもありました。

確かに、GCやCLOという肩書きをつけるなら、弁護士資格は必要になってくるんでしょうね。そのためにも、政府と大学には、リカレント教育にもっと注力してほしいです。(司法修習は別にしても)なぜ、働きながら取得する機会がこんなにもないのか(特に地方!)。

ちなみに、管理職の今後のキャリアパスとして、教員やコンサルタントへの転身をあげる方々がいらっしゃったそうです。私もこの選択は大ありだと思います。

地方は苦戦ー柔軟な働き方を認められないか

東京の人材獲得競争も大変だとは思いますが、採用活動がもっと深刻なのは地方ではないでしょうか。

社内にしっかりした教育体制があり、新卒から育てていける大手企業さんはよくても、業容拡大にともなって法務人材が即戦力で必要な場合に、地方で確保するのはかなり大変だと思います。実際、スカウトを受けるのも地方の企業さんです。

大阪ですら同じだと感じますが、大阪の場合は、法務をたくさん抱える大手企業がいくつかあって、そこが法務人材を育てて輩出してくださっているように思います(会社が輩出(流出)を望んでいるわけではないはずですが)。

 

ここで、法務人材の確保に悩む採用担当者に提案があります。

テレワークをお認めになってはどうでしょうか。

法務は、会議出席とか打ち合わせとかがあるものの、比較的自分たちでタイムマネジメントができる職種だと思います。たとえば週に1回だけ出社して、あとは在宅を認め、簡単な打ち合わせはウェブ会議で済ませるとか、そういう働き方をお認めになれば、特に女性を中心に応募が増えるのではないでしょうか。

開放的なオフィス環境が推奨されている現在、周囲が電話や雑談しているところで何十ページかの契約書や永遠に終わらなそうな条文とにらめっこするのは集中力を削がれるので、家でやらせてくれたほうが何倍も捗るし。

私だって、そういう会社さんがあれば応募したいです。そうしたら、お昼に学校に通うこともできるし!