Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

法務担当者のための契約実務ハンドブック

民法改正まで、約1年となりました。

1年ほど前、ある改正民法セミナーで、「改正対応は2019年3月までに終わらせておくべき」という話があったと部員が言っていたのですが、そこまで対応できている会社さんはかなり稀と信じます。なぜならば、我が社はこれからだから。 

そんな2019年3月、このような書籍が発売されました。

Q&A形式で各種契約の変更要否がわかる

この本は、継続的な売買契約、賃貸借契約、消費貸借契約といった典型契約から、利用規約業務委託契約、製作物供給契約、コンサルティング契約といった非典型契約まで、ビジネスシーンで日常的に締結される様々な契約について、民法改正で対応が必要かどうかをQ&A形式で簡潔明瞭に答えてくれます。

サンプル条項もあるので、具体的にどう変えるか、ということも示されています。

ひとまず、チェックリストを作ってみよう

今のところ、民法改正を理由とした契約書の再締結依頼や、改正民法を前提とした契約書の起案・レビューを依頼されたことはありませんが、夏をすぎればそうも言ってられるまいと、私もようやく重い腰をあげようとしています。

まずは、手始めに、こちらの書籍をもとに、対応必須〜望ましい事項をリストアップしてみようと考えています。

というわけで、必須→赤、望ましい→橙、留意点→緑で付箋をつけてみました。

f:id:itotanu:20190314230948j:image

付箋をつけてみると、(写真では見づらいものの)もちろん少なくはありませんが、対応必須のものはさほど多くはなさそうです。

これまで、あるいはこれから入手する様々な情報を基に、こちらのリストをさらにブラッシュアップして、契約書を見直していこうと思います。

悩ましい問題①:「瑕疵」は「契約不適合」へ変える?

改正民法では、「瑕疵」は「契約の内容に適合しない」といった表現になります(改正民法562条1項)。もともと、「瑕疵」など馴染みのない言葉なので、廃止するのは良いことだと思います。が、しかし、法律用語としてはとても便利な言葉だったので、「瑕疵」をどのように言い換えようか悩ましいです。

「契約の内容に適合しない」とは具体的にどういうことなのか?売買契約において、売買の目的物の購入目的を書いておきなさいということでしょうか。最近の契約では、欧米の契約に倣って、買主の使用目的に適うことを保証しないことを明示的に書くものもあるのですが…このあたりは、研究が必要そうです。

悩ましい問題②:身元保証(個人根保証)の極度額は?

入社時に身元保証書の提出を求める会社はまだまだあると思います。改正民法では、個人根保証は、極度額を設けなければならなくなったので、身元保証を引き続き求めるのであれば、これを定めなければなりません。

さて、一体いくらが妥当なんでしょうか。

個人の事情はそれぞれですから、額によっては固辞する保証人もいるかもしれません。もっとも、会社としても、本気で連帯責任を負わせようというよりは、入社する本人に自覚を促し、また、保証人を得ることで身元を確認したいという程度の必要性ではないかと推測します。

私は、身元保証人をつけることを肯定的に捉えておらず、これを機に廃止すればいいのではないかと考えています。使用者は、身元保証人をとるよりも、緊急連絡先をしっかり定期的に確認しておくことで十分ではないでしょうか。

 

民法改正との闘いは、始まったばかりです。