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大阪で働く法務パーソンのはなし

法務人材の育成

昨日、グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(案)について書きましたが、ここでは、法務人材の育成についても触れられていたので、今日はこのことを掘り下げてみたいと思います。

第2線・第3線の人材は、意欲的に取り組むことが不可欠

指針案では、第2線・第3線を担う人材について、以下のような記述があります。

 

第2線・第3線が実効的に機能するためには、法務・財務・監査などの専門的知識を有した人材がミッションの重要性を認識したうえで意欲的に取り組むことが不可欠となる。このため、中長期的な人材育成の実施や人事評価・昇進面でのインセンティブ、研修の受講や専門資格の取得の促進を通じた専門性やプロフェッショナル意識の向上などを行うことが検討されるべきである 。

(「『グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針』(仮)について」P.36)

「意欲的に取り組むことが不可欠」なのは、どんな仕事をしていても同じだと思うのですが、それは措くとして…そのために必要なことの例として、以下3点が挙げられています。

  1. 中長期的な人材育成の実施
  2. 人事評価・昇進面でのインセンティブ
  3. 研修の受講や専門資格の取得の促進を通じた専門性やプロフェッショナル意識の向上 

資格の例として、具体的に「公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)(内部監査人の能力や専門性を証明する目的で、内部監査に関する指導的な役割を担っている内部監査人協会(IIA)が認定する国際的な資格)、公認情報システム監査人(CISA)、内部監査士(QIA)や公認不正会計士(CFE:Certified Fraud Examiner)(ACFE (公認不正検査士協会、本部は米国) が認定する、不正の防止・発見・抑止の専門家であることを示す国際的な資格)等」という注記もついているのですが、法務関連資格はないという。笑

「弁護士」と書きたいけれども、社会人が取得するにはハードルが高すぎるということでしょうか…

専門職は評価が難しい

たしかに、中長期的な人材育成ができたらいいだろうし、評価でインセンティブが適切に与えられたら嬉しいのですが、法務・財務・監査といった専門職で行うことは非常に難しいです。財務は、どんな会社にもあるので、もしかするとある程度可能なのかもしれませんが、法務は「法務なんてなかった」という会社がほとんど。世の中の流れで組織は作ったけど、ボスは生え抜きの非法務畑、社員はキャリア採用…みたいなところが多いと思います。

そうすると、挨拶程度の秘密保持契約と、定型の取引基本契約書と、一からドラフティングする業務委託契約書では、どれが最も難易度が高いのかなんて、ボスにもわからない。いわんや人事部門をや。

私自身、これまで評価いただけたのは、契約書を速く適切にレビューしたからではなく、弁護士相談で弁護士と対等に話ができたとか、聞かれてすぐに回答できたとか、そんなことの積み重ねだと思います。法務の能力が評価されたわけではない。

 

専門職の評価は非常に難しいので、中長期的な人材育成をしましょうとか、適切なインセンティブを与えましょうといったところで、実践できる会社がどれだけあるでしょうか。

このあたりのサポートをもっと提供いただけたらうれしいのですが。

法務はスポット研修は豊富だけど体系的なトレーニングは少ない

法務のお仕事をされている方で、プロフェッショナル意識の向上が必要な方にお目にかかったことはありませんし、新たに配属されるうちの若手も、先輩の背中を見て正しく意識を身につけていると思います。

専門性についても、少しお金を出せば、あるいは無料でも、セミナーや講座を受けることができます。ただ、体系的なトレーニングを受けることは難しい。

私は、働きながら2年間大学院に通いましたが、大学院・勤務先・家族の理解と協力がなければ成せないことです。でも、通って本当によかったと思います。若いとき、もっと勉強しておくべきだったと深く後悔しつつ、今受けている恩恵を精一杯自分のものにしたいとたくさん勉強できましたから。そういった機会をもっと手頃に手にできてしかるべきだと思います。

私自身、大学院では知的財産法しか学べていないので、企業統治などについてももっと勉強したいので。