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大阪で働く法務パーソンのはなし

和暦か西暦か

古い契約書を確認する機会があり、その契約期間を見たら、「昭和62年●月●日から昭和72年●月●日まで」とありました。

「平成」の到来を予測できた人はいなかったでしょうし、上記の記載はやむを得ないことですが、今回は、平成32年がこないことも、次の元号が「令和」であることもわかっているので、さてどうしよう?という問題があります。

外務省は西暦に統一する?

新たな元号が発表されようというときに、外務省が省内で作成する文書は西暦に統一することを検討しているという報道がありました。

公文書の書き方として、和暦を使うのは慣習としては確立しているようですが、「和暦を使わなければならない」という明確なルールはないようです。そうすると、外務省は外国とのやりとりの多い官庁ですし、外国語で作る文書には今でも和暦は入っていないはずなので、私は特段違和感もなく感じました。

結局、トーンダウン?

「外務省が西暦に統一しようとしている」という報道を受け、官邸や与党は批判的な姿勢を見せたと報道されました。

以上の一連の報道を受け、元号発表の翌日、河野外務大臣は以下のように会見で述べ、和暦を完全に排除する趣旨ではない、いまと何も変わりませんよ、というようなことをおっしゃっています。これにより、「外務省はトーンダウン」と報じられています。

 

外務省が作成する文書の中で,例えば閣議関連の文書ですとか,会計関連の文書は,これは和暦でやることになっております。これは引き続きそうなると思います。それからシステムを使って作成するものについても和暦ということに,これはなると思いますので,それはそのままになると思います。
 外務省,特に在外公館等で外国とやりとりをする,あるいは駐日各国大使館とのやりとりなど(略)の文書についてはこれまでも西暦ということにしてございます。(略)外国とのやりとりについてはこれまでどおり西暦でいいよ,あるいは和暦をわざわざ付ける必要はないということを,確認をするということにしたいと思っております。
(略)特にシステムを変更するとか,和暦の提出が求められている会計文書などを西暦に直すということではありません。

平成31年4月2日 河野外務大臣会見記録

 

企業は、この機会に西暦へ移行か?

ある程度の規模の会社さんには、「文書作成要領」みたいな社内ルールがあると思います。我が社もしかり。そこでは、公用文に倣って、「日付は和暦を使う」となっていることが多いのではないでしょうか。

我が社もそうでしたが、昨年から西暦移行を進めており、社内文書は「原則西暦」となりました。

・・・というのは絵に描いた餅でして、実際には和暦が健在であり、ルールを守る人とそうでない人が混在し、取締役会議事録を見ても、「平成31年度●●の件」があれば、「2019年●月実績」もあるという混乱ぶりです。

法務部門では、平成31年5月がこないことは明らかでしたので、最近の契約書はすべて西暦に統一していました。「平成32年」と書いたところで特別の問題はないはずですが、こないことがわかっている元号を使うのは、法務パーソンとしてはかなり気持ち悪いです。

元号が発表されるまでは、新元号がわからないということもあり、原案が和暦ならばガシガシ修正していたのですが、新元号が発表された現在はちょっと悩みます。慣れていないからか、「令和」を使うのにためらいがあるのです。少なくとも今月までは西暦への修正を使い続けます。

来月からは、担当者や相手方の好みに合わせることになりそうですが、一度西暦を使い始めれば、和暦に戻す積極的な理由はありません。

したがって、私と同じように、今回の改元を機に西暦を導入する会社さんはかなりあるものと推察します。

昭和↔︎西暦、平成↔︎西暦、令和↔︎西暦 の転換作業は結構面倒ですし。