Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

リーガルテックのコストパフォーマンス

去年から今年にかけて、いくつかのリーガルテックの資料を取り寄せ、あるいはデモを拝見するなどして、導入を検討しました。

結局、現時点ではいずれも見送ったのですが、その最も大きな理由は、コスパが評価できなかったことです。

導入を検討したリーガルテック

導入を検討したのは、具体的には以下のリーガルテックサービスです。

電子契約のクラウドサイン

www.cloudsign.jp

AIによる契約レビュー・ドラフトサポートのLegalForce

legalforce-cloud.com

コミュニケーション&文書管理のhubble

hubble-docs.com

 

クラウドサインは、現在、じわじわと広まりつつある電子契約サービス。コストは、月額100,000円+200円/通だそうです。

LegalForceは、この春に正式版がリリースされ、昨年には5億円という日本のリーガルテックでは最高額とされる資金調達に成功したベンチャーで、クラウド上に契約書をアップロードすると、AIが一瞬で抜け漏れや不利な条項をチェックし、さらに修正案を提案してくれるという、法務にとって夢のサービス。ライブラリを作れるなど、これだけでも記事が書けるくらい素晴らしいサービスなのですが、それは割愛。コストは、正式版リリース前のお話では、月額100,000円(3ユーザーまで)〜と伺いました。

hubbleは、社内外の人たちとのキャッチボールで作られる契約書について、その過程をつぶさに記録してくれるサービスで、誰がいつどこを修正したのかを記録してくれるものです。wordの修正履歴で足りるんじゃないか、という見方もあるかもしれませんが、実際にはなかなかそうはいかないのですよね。コストは、 月額1,980円/ユーザーとのことです。

法務に月額100,000円のサービスは妥当か?

結局、月額100,000円とか、1ユーザーに月額1,980円(hubbleは自分だけ使っていても意味がない)とか、そこまでコストをかけてそれ以上の何かを生み出せるかと言われると自信がなく、我が社では見送りとなったのでした。具体的な事情としては、以下のようなものがありました。

  • 年間の(法務での)契約書レビュー件数は月に数十件
  • 契約書締結件数は、年間で数万件だが、印紙が必要なのはごくわずか
  • 契約書を直接持って行って相対で話すのも仕事のうちという業界
  • お取引先の理解を得るのが難しい(個人も多いので)

リーガルテックを調べてつくづく思ったのは、結局、これらのサービスは、法務で潤沢な予算を持つ大企業(や大規模法律事務所)を相手にしているのであって、今のところ、私たちのようなところはお客じゃないということでした。もっとも、サブスクリプションサービスは、スタートが最も安く、どんどん上がっていくのが定石らしいので、有力な同業他社が出てこない限り、今よりも手が届きやすくなることはないそうですが…

余談:AI翻訳もトライしましたが…

純粋なリーガルテックではありませんが、契約書のAI翻訳も2つほどサービスを試してみました。これらも、法務としては見送りの結論でしたが、会社としては一部導入となり、法務にもアカウントを割り当ててもらうという幸運に恵まれました。

ただ、法務で使用するにはまだ難ありです。やはりAIには学習が必要で、大量のデータがあり、かつ、定型的である一般条項は翻訳精度が高いものの、とくに契約書の前半部分、個別性が高いところは、手直しにかなりの時間を要しました。語順がイレギュラーだったり、ちょっとカンマが入ったりすると、すぐにトンチンカンになってしまいますね。頑張れ、AI!