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大阪で働く法務パーソンのはなし

新任管理職研修で伝えるべきこと

先日、今年新たに管理職に昇格した従業員に対し、研修を実施しました。

本当は半日くらいみっちり、なんなら少人数制で行いたいところですが、さすがにそこまでの時間はもらえません。

限られた時間の中でなにを伝えるべきか、この数か月間考えた結果、今回の目的は、コンプライアンスを自ら実践し、チームに実践させること、そして法務マターを自分ごと化することと設定しました。もちろん、法務の宣伝も欠かせません。

まずは価値観を共有してほしい

新任管理職研修は、まずはコンプライアンスを取り上げるように言われていました。しかし、正直、私は「コンプライアンス研修」があまり好きではないので(笑)、かなり絞って伝えました。だって、「コンプライアンスが大事」なんて、今や新入社員だって知ってますから。

結局、コンプライアンスで守るべきは、会社の理念とその土台となる企業倫理、すなわち価値観なので、我が社の価値観をチームで理解し、実践してほしいという点のみ伝えました。相手は管理職ですから、もっと踏み込んで、コンプライアンス違反があったときの対応方法などをレクチャーできたらよいのですが、またそれは別の機会ということで…

ビジネスは契約で成り立っているから、契約は法務のものではない

研修の目的のもうひとつの柱に、「法務マターを自分ごと化すること」を選んだのは、残念ながら「契約書は法務だけが見ればいい。自分は関係がない。」という考えの人が一定数いるからです。

ビジネスは他者との合意、つまり契約で成り立っているわけで、その合意をするのは法務ではなくあなた方です、法務に正しいインプットをせず、ろくに契約も見ずに、「自分たちに有利な契約を作れ」と依頼するなんて滅茶苦茶だと思いませんか?

とまではいいませんけれども、みなさんの力になるには、みなさんの力も必要なのですよということをワークも交えて伝えました。

法務の機能は今も昔も3種類?

昨年4月に経済産業省から発表された報告書では、法務は「守り」と「攻め」を備えたビジネスのナビゲーターだという整理がされています。

そして、その報告書を踏まえて、その後【法務機能強化実装ワーキンググループ】と【法務人材育成ワーキンググループ】が発足し、企業の課題や悩みに応えようと成果物の作成が進められているところです。

そのうち、法務機能強化実装WGにおいて議論されている資料によれば、法務機能の理想像は以下の3つの機能が相互に支え合う関係だといいます。

(以下のすべてが法務の機能とすれば、「ビジネスのナビゲーター」はミスリーディングなコピーだったかもしれませんね。。)

 

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第3回国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 法務機能強化実装ワーキンググループ事務局資料

一昔前、法務には、【臨床】【予防】【戦略】の3つの機能があって、より【予防】や【戦略】に重点を置いていく必要があるといっていたのですけれども、令和の時代には、会社やビジネスを【守る】【助ける】【創る】という3つの機能を法務は担い、生き残るためにはイノベーションが必要なので、【創る】仕事をどれだけできるかにかかっているということでしょうか。

こんなことを新任管理職に伝えても「ぽかん」だなぁと思いつつ、法務が何を使命に活動しているのかを知って欲しくて、これも簡単に取り上げてみました。

少しでも響いて、私たちを活用するようにしてくれたらうれしいのですが。

 

なお、研修のメインはグループワークにしました。みんなワイガヤで取り組んでくれまして、他部署の人から学ぶこともあったようで、かなり好感触でした。おすすめです。