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大阪で働く法務パーソンのはなし

他社の株主総会から学ぶ〜準備編

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6月となり、6月総会の会社さんの招集通知が届いています。

最近は、集中日解消で総会日が前倒しになるばかりか、招集通知の発送時期も早期化しています。私はあまりお手伝いしていないので、傍から見ているばかりですが、担当部署は大変そう。しかも、今年に限っては、大阪では6月末にG20もあるので、会場を押さえるのも大変とかなんとかで、一層前倒しになり、21日(金)が集中日のようです。

この時期は「他社に学ぶ月間」として、例年、他社の株主総会に(株主として)参加するなどして学ばせていただいています。

(余談ですが、この勉強法は多くの会社さんで採用されているのか、我が社の株主総会でも質疑内容等を熱心にメモしてらっしゃる方が何名かありました。)

まずは会場選び

我が社では、会社から公共交通機関で30分強ほどのところにあるホテルで開催します。すぐ近くにも立派なホテルがいくつもあるのですが、ある理由で使いません。それは「会社から近いから」です。株主が「ついでに本社をのぞいてみよう」と来たら困るというわけです。お越しいただいても、本社部門しかないので、中に入れないんですけども…

これは、よく採用される作戦のようで、キタに本社があるのに難波や大阪城のほうのホテルを会場とする企業をいくつも見かけます。例外は、鉄道会社さんでしょうか。鉄道会社さんは、系列のホテルで開催されたりすることが多いようです。自社の鉄道等を使っていただかないといけませんしね。

個人株主に議決権行使してほしい

我が社は消費財を扱いますので、主な株主は個人(=消費者)です。

持ち合い株式がネガティブに捉えられ、モノいう投資家が増え、創業家も相続等で力を弱め、持株会が流行らなくなった今、個人株主は、最大の安定株主という見方もあります。

個人株主を長期保有してくれる「ファン株主」に育てることが、IR活動の重要な業務になりつつあるようで、我が社でも個人株主向けの説明会や情報発信、株主優待には熱心です。

個人株主の多くは、基本的に会社に肯定的だし、モノいわぬ株主で、会社にとってありがたい存在ですが、株主優待を受けるために必要な最低単元数の株式しか保有していないと思われます。それに、影響力のなさは自覚しているから、招集通知が来てもさらっと眺めておしまいで、配当や優待を心待ちにする。ここで問題となるのが、定足数です。

普通決議については定款で定足数を排除することができますが、特別決議や役員変更などでは定足数を完全に排除することができず、少なくとも1/3は確保しなければなりません。

大口の安定株主が減り、小口の個人株主が増えた結果、これを満たすのが容易ではなくなっている会社さんもあるようにお見受けいたします。というのも、招集通知に加えて「議決権行使のお願い」というような紙が別に同封されている会社さんを私の知る限りでも複数見たからです。

ある会社さんは、「議決権行使してくれたら、食事券●円分を差し上げます」という大盤振る舞いをされていました(今年は諸事情により中止だそうですが)。総会当日にお土産を配る会社(=我が社)も、同じ魂胆ですね。

環境保全・保護など企業活動のアピール

個人株主に長く保有してもらうために「ファン株主」にするのが大事ということで、HPはもちろん、開示資料などもわかりやすさ(見やすさ)を一層追求するするようになっていると思います。

株主総会招集通知ももれなくで、カラー化やイラストの挿入などがここ数年でぐっと広がっています。また、企業活動や姿勢を伝える絶好の機会ということで、社長メッセージを添える例も目立ちます(我が社も)。

メーカーの場合、自社の商品にこんな思いを込めたのだ!とか、こんな工夫で環境負荷の低減に努めているのだとか、結構ストーリーを書きやすいのですが、流通業の場合はなかなか難しいみたいです。

イオンさんは「電子投票してくれたら、書面投票でかかる郵送料の一部を自然保護活動に充てます」と書いてありました。まぁ、書面投票だと議決権行使書を3ヶ月保管しないといけないし、集計も大変だから、その作業を発生させたくないというのが本音とは思うのですが(「郵送料の一部」がいくらか書いていませんでした)。

内部統制システムの運用状況を読むべし

自分が法務・コンプライアンスという仕事をしているからか、「こんな姿勢で取り組んでいます」という華やかな紙面にはあまり興味はありませんでして、注意深く読むのは次の2点。

  • 全体の表記のゆれ
  • 内部統制システムの運用状況

表記のゆれは、私の癖みたいなものですが、いくら印刷会社さんがチェックしてくれても漏れがあるもので、その会社さんの誠実度合いや管理部門の力量をはかるのにはいいかなと思います。最近は分業制で作るので、全体でみると「および」「及び」が混在しているとか、結構あるんですよね。いまどき、wordですぐに確認できるんだから、チェックすればいいのに(我が社も)。

内部統制システムの運用状況は、数年前の法改正で新たに事業報告の記載事項となったものですが、企業はここをもっと真剣に書くべきだし、株主も読むべきだと思います。今の多くの企業は、毎年ほぼ同じことを書いていて、法務省が期待した内容になっていないのではないでしょうか。どんなに綺麗事を並べても、全社が意識しているか、きちんとPDCAを回しているのか、このパートを読むとボロが出ていそうな気がします。