Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

取締役会議事録で使う印章は?

f:id:itotanu:20190630204944p:plain

先日、子会社から、「社長は、取締役会議事録にはどのハンコを押せばよいですか?」という質問がありました。

悩んだことがなかったポイントですが、現実、当グループでは統一されていません。

代表印か個人印

その子会社には代表取締役が1名しかおらず、社長=代表取締役の会社のため、社長は、個人印に加えて、法務局に登録した印鑑のハンコ(代表印)も有しています。子会社からの質問は、そのどちらを取締役会議事録に押印すべきか、というものでした。

会社法上は、取締役会議事録が書面をもって作成されているときは、出席取締役及び監査役がこれに署名又は記名押印しなければならないと定めているだけで(会社法369条3項)、用いる印章について特別の定めはありません。

ただ、私の知る限り、二段の推定の問題もあってか、代表印を登録している代表取締役については、代表印を用いている方が圧倒的多数だと思います。まれに、署名の会社があったり(なぜなら外国人だから)、認印のような印章を用いていることもあったりしましたが、その横には代表印も押捺しているというケースが多かったように思います。これまでの法務人生で数百社の議事録を見たり作ったりしてきましたが、代表取締役が代表印を用いていないケースは、かなりレアです。そのうちの2社が、我が社とその親会社だという…

我が社とその親会社は、代表印を登録している代表取締役社長も普段の取締役会議事録にはフルネームの個人印を押捺しています。我が社も親会社も、社長自身が代表印を管理しているという規模的に見ると珍しい会社なのですが、それでも個人印を使うのはなぜなんでしょう(理由はわかりません)。

商業登記法上、一定の要請あり

普段は、取締役会議事録に代表取締役が個人印を押捺している我が社とその親会社ですが、年に一度だけ、代表印を押捺することがあります。株主総会後の取締役会議事録です(取締役の任期は1年です。)。

以前にも書きましたが、代表取締役の変更登記にあたっては、変更前の代表取締役が自身が登録している代表印を取締役会議事録に押捺していない限り、出席取締役及び監査役全員の印鑑証明書の添付が求められるので(商業登記規則61条4項)、重任である場合には必ず代表印を押印してもらうのが通例です。

我が社で過去、代表取締役社長がいつものように個人印を押してしまい、隣に代表印を押したこともあったような気がするのですが、私がこれまでに見てきた、「サインと代表印」「個人印と代表印」が並ぶ議事録は、こんなうっかりから生まれたものなのかもしれません。

考えるのも面倒だし、代表印を押しておけばよいのでは?

冒頭の子会社からの質問には、自社を棚に上げて「代表印を押すのが普通と思う」と回答しました。多分、間違いないです。

前述の登記上の要請もありますし、代表印は代表取締役の名前で印鑑証明書が発行され、当該代表取締役の意思によるものという証明も可能なので、登記の際に迷ったり、何かあったときに色々心配したりする面倒を考えれば、代表印を用いるのが合理的な判断ではないでしょうか。

我が社はどうするのかな…