Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

役員の兼務 是か否か

f:id:itotanu:20190722221638j:plain

先日の弁護士さんとのやりとりで、「特別の利害関係」に一層悩むようになっているのは、先週書いた記事のとおりです。

事前に「特別の利害関係」を把握できず、うっかり議決に参加させるリスク

先日、取締役会で少し難しい議案がありました。

保守的に考えるなら、代表取締役を特別利害関係人と扱うことも想定される内容です。

議案の内容を事後的に知った私は、上司に「これ、特別利害関係人と扱ったほうがよかったかもしれませんね。」と報告したところ、記録係として取締役会に座っていたその上司は「じゃ、議事録でそういうことにしよっか。って、できないよねぇ。」と頭が痛い様子でした。結局、その件では特別利害関係人にはしないことにしました。

我が社の場合、取締役会事務局は経営企画部門が担うので、法務部門の私たちが事前に知ることができるのは議案名のみで、資料や審議の内容は、取締役会の末席に座って初めて知ります。

上司も、記録係として座ることが許されているだけで、議案の内容の説明を受けながら「これは特別利害関係取締役では?」と指摘することなどできず、指摘できるとき=取締役会終了後では時すでに遅し。代表取締役にリスクを負わせてよいものでしょうか…

もし、実際に当社の代表取締役が特別利害関係を有していた場合、我が社では議長を代表取締役が務めているので、決議無効になってしまいます。とはいえ、第三者の取引の安全を図る観点から、事実上は取引が無効になることはなく、結果、取締役の善管注意義務違反の問題だけになろうかと思います。すると、代表取締役本人の義務違反はもちろん、ほかの取締役会メンバーも、特別利害関係があるのに議決に参加させたということで、みんな仲良く責任を問われることになるのでしょうか。だったらまぁいっか、ということにはなりませんけれども。

兼任はやめよう

実は、その難しい議案は、子会社との取引に関するものでした。

当社の代表取締役は、子会社の非業務執行取締役を兼任しており、特別利害関係人として扱うか、悩ましかったのです。

こういったことで悩まなくて済む方法は簡単で、当社(親会社)の取締役に子会社の役員を兼務させないことです。

我が社の場合、今はまだ親会社の代表取締役が複数のグループ会社の取締役を兼任しています。オーナー企業でもあるので、親会社代表取締役の意向を無視して事業が進むことは考えられないし、今でも兼任しているからコントロールができているというわけではないから、代表取締役が取締役を兼任するメリットはなく、ただただリスクでしかないのではと懸念しています。招集通知に記載する「重要な兼職」に悩む必要もなくなるし…

実際、社内の人間に割り当てられる取締役の椅子が減っているということもあってか、親会社の取締役のグループ会社役員との兼任は、減っていると感じます。社外取締役ですら、4社以上兼任すると十分に仕事ができないといわれていますし、多くのグループ会社の取締役を兼任して仕事ができるのか?という投資家の厳しい視線もあるからと推察しています。

私たち法務部門も、関連部門に対し、代表取締役を守りたければ、兼任はさせないように進言したほうがよさそうです。「わかっちゃいるけどやめられない」のでしょうが。