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大阪で働く法務パーソンのはなし

法務の情報処理能力

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新しいメンバーのOJTをしたり、他社・他部署の方と話したりしていると、法務には知らず知らずのうちに確実に身につくスキルがあるのだなとつくづく感じます。それは、ひとことでいえば「情報処理スキル」です。

膨大な情報処理が迫られるビジネスパーソン

産業が発達して、いろんなことが高度専門的になり、加えてインターネットの普及で情報へのアクセスが容易になった現在。たとえば、自社製品の市場シェアを調べようとググると、玉石混交の検索結果がずらりと並びます。

また、チャット形式?のコミュニケーションがビジネスシーンでも使われるようになり、情報が大量に細切れに供給されます。

そうすると、「信頼できるソースによる本当に必要な情報」を限られた時間で見つけだすことがかなり難しくなり、

  • 同じ情報を提供しあう
  • 提供された情報を見落とす

といったことが頻繁に起きます。先日も私以外は法務でない方々20人くらいでweb上で議論したのですが、200-300の投稿の中で、すでになされた指摘が繰り返されたり、見落とされたりしていました。どうしても、自分の関心の強い意見にひっぱられるようです。

でも、法務パーソンなら、そのような漏れ、ダブりがかなり少なく、たくさんの情報の中から、信頼に足るリソースからの情報をいち早く抽出できる。法務パーソンは、そのようなスキルが長けているように思われます。

法務はとりわけ情報処理スキルが必要

件の議論では、私が「こんなご指摘もありましたね」といったそれまでの投稿の掘り起こし?をすることが何回かありました。

私は記憶力がとりわけ優れているというわけではないと思うのですが、「どこかで見た気がする」という既視感にはかなりの確度があるみたいです。初出か既出かの見分けがつく。あとは、どこで初めて見たかを確認すればよいだけ。これが難しかったりするのですけれど。

私たち法務の仕事は、ただ契約書を作るとか相談に回答するというのではなく、そのベースには、事実確認や調査といった綿密な裏付けがあります。

情報が氾濫する現代では、この作業は簡単なようで昔より難易度が上がっているかもしれません。なんといっても、ネットや雑誌など、リソース量が違いますし、加えてスピード感は一層求められるからです。

法務は日常から鍛えている

「裏付け」なので、当然誤りなど許されるはずもなく、法務には、「必要な情報を見つけ出し、使う」という高度な情報処理スキルが求められ、実際そんなトレーニングを日常繰り返しているように思います。たくさんの情報をヒアリング/リサーチし、そこから必要な情報を取り出す、過去の案件を参考にする、そしてアウトプットするといった具合に。これによって、一度見たものの原典は、なんとなくあたりをつけられ、また、発掘されやすい工夫も随所に施しています。たとえば、記録のデータベース化などですね。

私たちは、経験値がそのまま戦力になるし、普通の社員が何気なく発言したことや作成した書類などから「動かしがたい事実」を探すという仕事が多いので、知らず知らずのうちに高いスキルを身に付けるようです。

このスキルは、法務部門以外でもかなり役立つスキルなので、ぜひみんな法務部門で修行してくれたらいいのにと思います。