商標調査対決「AI vs 弁理士」なるイベントが開催されるそうです。
AIと現役の弁理士が、商標出願に際して避けて通れない先行登録商標の検索、類否判断、識別力判断で競うという、商標実務に携わる者にとっては大変興味深いイベント。東京開催で観戦に行けないのがとても残念です。
対決の中身
イベントでは、AIと商標のプロフェッショナルである弁理士が、以下の3つのステージで競うそうです。
■1st Stage「画像商標対決」
実際に出願された画像商標1つに対し、最も似ている画像を見つけてくる。(制限時間10分)
特許庁の審査官が似ていると判断した画像が含まれていれば勝利。
■2nd Stage「類否判断対決」
実際に出題された商標を2つ提示し、それが似ているかどうか(類否)を判断する。(お題10問、制限時間10分)
正答率が高い方が勝利。
■3rd Stage「識別力対決」
実際に出願された商標とその商品・サービスを提示し、特徴があるかどうか(識別力)を判断する。(お題10問、制限時間10分)
正答率が高い方が勝利。
どのステージの作業も日常的に行うもので、判断に迷うことも多いですが、とりわけ骨が折れるのは、図形商標の検索です。
図形商標検索は難しい
文字であれば、通常の検索や称呼(ヨミ)検索でかなり簡単に精度の高い調査ができるのですが、図形となると難易度が半端ない。
まず、図形等分類表から、出願しようとする図形の分類番号を見つけないといけないのですが、これがかなり細かい上、ぴったりのものがあるとは限らないので結構大変です。
ひとつ選んで検索してみると、かなりの量の登録商標が表示され、この中から類否の判断をするのも相応の労力を要します(以下参照)。これを複数の分類で行うことも多いのですが、分類の選択が恣意的だし、数百の図形を見るので、漏れがありそうでとても怖いです。
図形商標検索に現れた救世主?「Toreru」
今回のイベントでAI側としてプレイするのは、Toreruという特許事務所のものです。AIの力を使って、商標出願のサービスをかなりリーズナブルに提供されているところで、大変太っ腹なことに、商標の類否検索サービスは無料で提供されています。
というわけで、私も何度か利用させていただいたことがあるのですが、問題のマークをアップロードすると、あっという間に「似ているかもしれない」先行商標を表示してくれ、類否の検討を格段にラクにしてくれました。
出願審査は生身の人間である審査官が行うので、どうしてもブレが生じ、AIが示す通りの結果になるわけではないと思います。それでも、少なくともマニュアル操作で数百の商標とにらめっこするよりはずっと効率的で、類否判断の精度をぐんと上げてくれる素晴らしいツールだと思います。きっと、プロアマ問わず、あっという間に浸透するでしょうし、すでに浸透しているのかもしれません。
今回のイベントでは、「ある商標が登録されるかどうか」で競われるので、勝負の行方は経験値を備えた人間に分がありそうな気がしますが、引用商標候補を導くタイムバトルであれば、100%Toreruの勝利でしょう。
オンラインで観戦できたらいいのにな。