Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

自社の内部通報件数と不祥事案を分析してみた

f:id:itotanu:20190920234625j:plain

前回の記事で、 経営陣のリスク感度を磨くために、まずは内部通報件数と不祥事案を分析してみようと思い、取り急ぎ今年上半期の事案をまとめてみました。

内部通報はグループ全体でもかなり少なかったけど「普通」らしい

当社グループでは、グループ共通の内部通報窓口を社内と社外にそれぞれひとつずつ設置しているのですが、上半期の通報件数はかなり少なかったです。

消費者庁の調査によれば、従業員3,000人超の企業で一年間の通報件数が10件以下のところは、全体の4割弱、30件以下だと7割弱というデータもあるのでいたって標準的といえそうです。

東洋経済の記事によれば、最も内部通報の多い会社としてセブン&アイHDが紹介されており、2016年度の通報件数が845件だったそうです。99位だった野村ホールディングスほかが42件でした。前職は、パート従業員が数万人いる企業だったのですが、そこそこ頻繁に通報の電話がかかってきていましたので、非正規含めた従業員数に比例する部分が大きいのかなと推察します。

通報内容はハラスメント系が多い

続いて通報内容ですが、最も多い通報はパワーハラスメントでした。

パワハラを内部通報窓口で受けるか、という議論もありますがそれはさておき、実際問題として、ハラスメント系の相談が内部通報窓口に寄せられることはよくあるようです。

 

従業員数別にみると、”3,000人超”では「職場環境を害する行為(パワハラ、セクハラなど)」の回答は86.1%と高く、「不正とまではいえない悩みなどの相談(人間関係など)」、「会社のルールに違反する行為(就業規則違反など)」いずれの回答においても5割以上を占める(それぞれ54.0%、52.8%)。

消費者庁平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」

調査に乗り出すのが難しいものや、事実が確認できないものも多いですが、なかには、情報の取扱いなど真っ当な指摘もありました。

どちらかというと、子会社からの通報のほうが深刻度が高いように感じます。それだけ子会社を普段見れていないということでしょうか。

不祥事案も少なかった

なにをもって不祥事案とするか難しいところですが、今回は、「危機」と「危機もどき」、そして懲戒事案をカウントしてみました。我が社では、一定の事態が生じたときには「危機」として事務局に一報をいれるルールになっていて、情報の一元化を図っています。また、懲戒事案は、管理職向けにリリースされます。

上半期にどんな事案があったか振り返ってみると数はわずかで、現金着服、外部業者による誤配送などでした。当社グループでは、多くの従業員が日常的に少額の現金を触るので、どうしても現金着服事案は一定程度生じてしまいます。ここは、現金を触らせないオペレーションを作っていかねばならないと思うのですが、なかなか実現しません。誤配送というのは、配送業者さんが宛先と違うところに届けてしまったというもので、当社に落ち度はありませんでした。

こうやってみると、直近では組織的な不正や不祥事はなく、コンプライアンスで著名な郷原先生が「ムシ型」とおっしゃる、個人の利益のための単発的なものやアクシデントのようなものばかり。したがって、実績?を報告しても、経営陣の危機意識を高めることにはならないように思われました。

隠したがるボスたち

以上のわけで、我が社のいまの状況では、過去に起きた不祥事を紹介するのでは、経営陣の危機意識を覚醒させるには物足りません。

そこで、私のチームでは、今どんな内部通報が寄せられているのかを明らかにするのがよいのでは?と考えています。そのような提案を自分のボスや社長にもしてみたのですが、あまり良い顔をされず、忖度して「NG」と理解しました。

「どこの誰」という話をするわけではないのに、ネガティブな情報は隠したいんですね。。