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大阪で働く法務パーソンのはなし

ファンドへ出資するかどうかの判断方法

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今の投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)が施行されて15年ほど経ちました(それ以前は中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律)。

このLPSは、勤務先がLPとなるほど広く浸透しています。

※今日の記事は、いつにも増して、私の少ない経験から感じたことを書いているということを最初にお断りいたします。

LPSの仕組み

これまで、勤務先でもいくつかのLPSにLPとして参画してきました。

この分野のプロではないので、LPS契約を見るのは苦痛でしかないのですが、幸いにもLPSには法律やモデル契約の逐条解説があり、実務上もモデル契約をベースに作られることが多く、弁護士のサポートを得ながらなんとかやっています。

…というのは半分虚偽で、ほとんどGPの言うがままです。。

いわゆる「ファンド」には、民法上の組合や匿名組合などいくつかのスタイルがありますが、現在最も多いのはLPSの形ではないでしょうか。

LPSは、無限責任組合員(General Partner:GP)と有限責任組合員(Limited Partner:LP)が組合契約を締結して組合に出資し、GPがその資金を運用するというものです。ファンドの資金のほとんどはLPが賄い、GPがその資金から管理報酬を受けて投資活動を行うため、LPは投資先の選定などに関与しません。

つまり、LPはカネは出すが口は出さず、リターンのみ求めるというわけです。

ファンド(LPS)はいかに作られるか?ーLPはGPが集める

そんなLPSは、どこから生まれるのか?

コネと知恵のあるGPが、そのコネクションを使ってLPを集めてくるのです。我が社では、顔の広い人たちがどこからともなくGPを連れてきます。そして、GPにより次のようなセールストーク?を受けます。

 「(我が社より大手の)A社やB社やC社も出資予定です。」

ここで「おぉ、我が社が関心を寄せているこの分野で、このGPだと、A社もB社もC社も乗ってくるのか。それは安心だし、高リターンが期待できそうだ。出資しよう!」と口車に乗せられてしまうケースがあったりするのです。

こういうタイプの投資に慣れている金融機関や超大手企業は、どこで見極められているのか興味深いところです。

出資の最終判断はどのタイミングでするか?

では、投資初心者の一般企業はどのように判断すればよいのか。

法務の立場でそんな助言をすることはないのですが、聞かれれば、私は、組合契約時点で想定の規模を用意できないケース(=追加クロージングを行うケース)は、参加すべきではないと答えます。

理由は、次の2点です。

  • 投資には一定の資金が必要(最初にお金がなければポートフォリオを組めず、良い投資ができない)
  • LPSでは、後から参加しても最初から組合員だったかのように扱われることがある(GP管理報酬などを負担させられる)

100億円のファンドを考えていたのに、10億円しか集まらなかったら、投資先が限定され、その分リターンも小さくなる可能性が高いです。後から誰かが入ろうにも、すでに締結された組合契約を変更するのは難しいので、後から入るインセンティブがあまりありません。

万一、そんなファンドに出資してしまったら、できるだけ早く撤退(地位を譲渡するなり解散するなり…)したほうが良いと思います。GPや他のLPと喧嘩覚悟で。

GPを見極めろ!

つまるところ、GPが肝なんです。

GPが優秀であれば、良いLP仲間も投資先も見つかるはずです。投資の世界は広いようで狭いらしく、「この人は有名人だから大丈夫!」みたいな話も聞きますが、実際にはLPや投資先の一つも見つけられなかった、というケースがあるのも事実。

GPを見極めるには、ある程度そのジャンルに明るくなければ難しく、ど素人がするのはとんだ博打だと、最近思い知らされています。

GPの見極めや出資の意思決定基準やタイミングなどをもっと勉強したいのですが、スタートアップの投資や運営に関する書籍は数多あるのに、LPの立場で書いてくれているものって、お目にかかれていません。雑誌の方が良いのでしょうかね。