少し前になりますが、BUSINESS LAWYERSが会員向けに実施したアンケートの結果が公表されています。私、BUSINESS LAYWERSの愛読者です。
N=169のアンケートなので、日本企業の法務の姿を映していると評価するのは難しいかもしれませんが、大変興味深い内容です。
法務パーソンの標準モデルは「週の平均業務時間49.3時間、うち30%は契約業務が占める」
アンケートでは、「どの業務にどれくらい時間を割いているか?」という質問があり、その結果は、
①週平均の業務時間 49.3時間
②契約業務にもっとも時間を費やしており、その中央値は30%
だそうで、訴訟等管理、コーポレート、資金調達、法務相談、内部統制、コンプライアンスなどに10%ずつ時間を費やしているのだとか。
今回のアンケートのボリュームゾーンは、課長・部長クラスにもかかわらず、みなさんプレイヤーとしても頑張っているというわけですね。
ちなみに、私の週平均の業務時間は、42時間程度(8時30分〜18時くらい)で、通常取引の契約業務が占めるのは15%くらいでしょうか。メンバーがレビューしたものをチェックするだけです。もっとも多く割いているのはおそらく相談対応で、あとはなんだかんだと紛争やプロジェクトなどで特命案件に取られていることが多いように思います。
3年後激減するのは契約業務と予想@大企業
大企業(従業員300人以上)に務める法務パーソンの多くは、3年後には契約業務が減ると考えているそうです。私もその一人。
その理由は、やはりリーガルテックやAIによる業務の自動化があげられるようです。
日本企業の海外進出が進んだり、コンプライアンスだのガバナンスだのといわれたりして、「契約書をきちんと作る」という文化が日本で深く根付いてきた証でしょうか。
3年後増えるのはコンプライアンス
他方、大企業で増加すると予想された業務の順位は以下のとおり。
1位 コンプライアンス
2位 契約
3位 法律相談
4位 グループ会社
5位 M&A・投資・合弁・提携
中小企業では、契約業務が1位でした。
契約業務が減ると考える人が多い一方で、増えると考える人も相当数いらっしゃることがわかります。技術的には、やはり定型取引の契約業務はAIが対応できるし、リーガルテックが生産性を高めてくれるはずなので、その技術を使える資金力があるかどうかで分かれているのではないかと推測します。
アンケートの紹介記事では、次のように締められていました。
「現状で全体30%近くを占める契約業務は、リーガルテックにより時間削減・効率化できるはず」。回答者の多くがそんな確信を抱く一方、そうして減少した業務分から創出されるリソースを次のどの領域に振り向けていくべきか。この点、今回のアンケートでは、「グループを含めたコンプライアンス体制の構築にじっくりと取り組んでいく」というストーリーを描いている方が大勢のようにも見えました。しかし、回答にはばらつきもあり、回答者それぞれがまだ明確なビジョンを描けていない様子も見受けられます。
果たして3年で変化はあるか?
自分に置き換えて、改めて今の仕事や環境を振り返り、直近の将来の環境を予測すると、3年で「契約業務が激減する」ほどの革新は起きないような気がします。3年後はただ忙しくなっているだけかも?
その理由は、現在の業務量(年間の契約書チェックと相談対応が各300件程度)が新たな投資をするには少なすぎるから。資金的余裕がある本当の大企業とそうでない企業で差がぐんと開く3年になるかもしれません。