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大阪で働く法務パーソンのはなし

契約書の弁護士レビューの適正対価は?

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ある法律事務所が、契約書チェック・レビューのアウトソーシングとして、定額サービスを提供されているということを聞き、そのサービス内容を調べてみました。

割高感を覚えたのは、私が大阪で働いているからでしょうか…

弁護士報酬の適正さはいつも悩ましい

契約書チェックに限らず、弁護士報酬の適正性のチェックはいつも難しいです。訴訟の場合は、各弁護士会が一応報酬基準を設けていますし、日弁連のアンケート結果によれば、相談は一般民事だと1時間1万円が相場のようですが、基本的に報酬は当事者間で自由に定めることができ、企業相手の法律事務所の場合、それほどお安くはありません。

大規模事務所になれば、基本はタイムチャージで最低でも1時間2万円〜くらいでしょう。スタッフ(パラリーガル)でさえ、1時間1万円はとるのではないかと。

現在、日本には法律事務所が16,720か所存在

日弁連の弁護士白書によれば、2018年3月現在、日本には16,720の法律事務所があり、過去3年で見ると、毎年3%弱の割合で増えています。

私の個人的な感覚でも、BIG4とか5とかいわれる大規模事務所に在籍されていた弁護士が、どんどん独立されています。BIG4から独立されたある弁護士は、「BIG4に残るのは『普通の弁護士』」とおっしゃっていたほど。いや、BIG4に入所できるのは「普通の弁護士」ではないんですけれども。。

弁護士のサービスは間口が広くなっている?

ビジネスが高度複雑化し、大企業でなくても弁護士のサポートを必要とするようになっているという事実はあると思うのですが、それでもこうも弁護士や弁護士事務所が増えるとお客さんの取り合いが起きるのか、最近の法律事務所は顧客開拓に熱心です。

BIG4/5ですら、定期的に顧客向けに無料のセミナーを実施したり、地方にサテライトオフィスを開設しては営業活動をされたりするほど。

弁護士レビュー1通5万円はお手頃とはいえない

前置きが長くなりましたが、件の定額サービスは、もっともお手軽なプランで月額10万円。上限は月2通までだそうです。つまり、1通5万円。ボリュームディスカウントがあって、月額60万円のコースだと、月20通まで。

どんな契約書でもよいかというと、そんなわけはなくて、日本語のみ、かつ、5,000字程度(A4 5枚程度)とのこと。

こういったサービスが、既存クライアントにだけでなく新規クライアント向けにも提供される(HPで売り出される)ようになったことは、リーガルサービスが身近になったんだなぁと感慨深いのですが、さて、法務パーソンは、この金額をどうお感じになるでしょうか?

私は、高い!と思いました…クオリティを存じ上げませんが。

ちなみに、別の法律事務所では、月額5万円の顧問料を支払うことで、契約書チェックは無制限でしてくれるそうです。(本当か?)

簡易な契約書なら、MAX3万円くらい?むしろ顧問料で吸収を

「A4 5枚程度の契約書」というと、一般的な(売買)取引基本契約書程度のボリュームかと思います。案件にもよるとはいえ、一人前の法務パーソンなら、1時間もあればレビューが終わるのではないでしょうか(定型的な契約については雛形を用意するなり、効率化に努めていないと問題です)。すなわち、弁護士ならもっと短時間で終わりそうなものですが、案件把握に若干の時間を要するとして、やはり1時間程度と見積もった場合、3万円以上支払うのは割高でしょう。BIG4/5の働き盛りのジュニアアソシエイトのアワリーチャージでも3万円を超える方はそうおらず、むしろシニアアソシエイトレベルの単価ではないでしょうか。

そもそも、顧問契約を締結している場合には、その顧問料の範囲でやっていただきたいところ。以前、ある雑誌で「10万円の顧問料を払っていれば、月3通の契約書を見てもらっていなければ価値なし」といったようなことも書かれていました。

実際には、そんな簡単な契約書のレビューは弁護士に頼まない

ここまで書いて元も子もないのですが、そもそも、一定規模の企業では、A4 5枚程度の契約書を弁護士に見てもらうことはほとんどしないと思います。なぜなら、それくらいは法務担当者で見られるから。わからないところだけ、あるいは、雛形を変更するときだけ、スポットで弁護士に尋ねるのが普通だと思います。

とすると、比較的ライトな契約書のレビューを必要とするのは、専任・一人前の法務担当を置けない企業ということになります。そういう会社さんは、よほど景気の良くない限り、契約書レビューに1件5万円をかける余裕はないでしょうね。

やはり、「契約書アウトソーシング」だけのサービスは、もう少し廉価で提供しなければ利用者は伸びなさそうです。