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大阪で働く法務パーソンのはなし

公用文の書き方が変わる?

現在、文化審議会国語分科会では、「公用文作成の要領」の見直しが行われています。

そこでは、社会の多様化と日本語の変化に対応すべく、単に表記にとどまらない、公用文作成の在り方まで検討されており、素人にもわかる「公用文とそうでない文章の違い」がついになくなりそうです。

公用文作成の要領は70年選手

公用文の作成には、一定のルールが定められています。

そのルールである「公用文作成の要領」は、昭和27年(1952年)に制定されたあと、若干の読み替え等が行われているものの、基本的には67年経った現在もなお有効なままです。

そして、法律実務家や学者などが「格調高い」文章をしたためるときには、この要領に従うことが好ましいとされていると思います(少なくとも私は、最初に就職した会社でこの存在を習いました。)。

ついに「、」に統一?

現在、公用文作成の要領では、句読点の打ち方は次のように定められています。

 

句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。

横書きの公用文では、「、」を用いずに「,」を用いるというルールになっているんですよね。素人でもわかる違いです。

これが、文化審議会国語分科会の報告案によれば、以下のように提案されていました。

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「公用文作成の要領」の見直しに関する国語課題小委員会の検討状況(案)

公用文以外では、「、」を使うのが普通になっているから、公用文もそうしようよということだそうです。

実際には、すでに多くの省庁で「、」を使うことのほうが多いように思われ、今更感もありますが、法務省文化庁は「,」を用いていますし、公用文の最高峰のひとつ?でもある判決文にも、しっかり「,」が使われています。

公用文以外でも「,」はまだ健在

省庁の出す文書では、「、」がすでに幅をきかせていますが、(公用文ではないのに)学術論文では「,」が健在に思われます。

私が通学していた某国立大学では(法学研究科でしたけれども)論文作成時に特段指導はなかったのですが、しっかり指導される教員もいらっしゃいますし、実際、掲載誌を見ると「,」が使われていることも多いです。

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「特集≪諸外国の知的財産制度の最新トピック≫(考察) 標準必須特許のFRAND実施料率の算定と『非差別的』についての分析-TCL v. Ericsson 米国訴訟-」パテント2019年9月号6頁

「公用文作成の要領」が変わったら、この習わしも変わっていくのでしょうか。

多くの人にとっては読点は「、」なので、公用文だからという理由で異なる符号を用い続ける必要はなく、私は好ましいことと感じています。