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大阪で働く法務パーソンのはなし

「業として」問題

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法律を読んでいると、「業として」という表現がよく出てきます。

一定の行為を「業として」行うのであれば、一定の資格が必要とか、一定の事項を遵守しなければならない、とかいう感じです。

「業として」の解釈は法律を問わず同じ(一義的)だと思うのですが、適用を考えるのは難しいです。

他社への貸付けに貸金業登録は必要か

先日、「他社(取引先)に貸付けを考えているが、貸金業法に抵触するか(登録せずに行ってもよいか)」という相談を受けました。

貸金業法では、貸金業を営もうとする者は、内閣総理大臣又は都道府県知事の登録を受けなければなりません(貸金業法3条1項)。「貸金業」とは「金銭の貸付け・・・で業として行うもの」とされています(貸金業法2条1項本文)。

したがって、この問題の論点は、その他社への貸付けが「業として」に当たるかどうかということになります。

「業として」は①反復継続性、②事業の遂行とみることができる

 「業として」とは、一般には、「反復継続し、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度のものをいう」と理解されています。

では、反復継続しなければいいのか?すなわち、ただの一回の行為なら、「業として」に当たらないか。あるいは、「事業」とはいえない、たとえば無利子なら「業として」ではないのか。

この点、理屈上は、そうはなっておらず、ただの一度の貸付けでも、無利子でも、「業として」に当たる可能性があります。

というのも判例があり、反復継続の意思をもって金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介をする行為をすれば足り、必ずしも報酬を得る意思や、実際にそれを得たことは要せず、貸付けの相手が不特定多数のものであることを必要としないとされているのです(最判昭和30年7月22日)。そして、反復継続しているかどうかは実態に即して、その反復継続した行為が、社会通念上事業の遂行とみられる程度のものである否かは、行為の主体等に即して具体的に判断することになると考えられています。

つまり、「よくわからない」ということですね。

実際には、登録なしの貸付けも

実務では、「反復継続」を重視して、1回こっきりの貸付けであれば、「業として」を満たさないと考えて、登録を受けないで行うケースもそれなりにあるそうです。

「反復継続」は貸付回数ではなく、あくまで「意思」に注目しているので、1回ならいいという問題ではないと、私は思うのですが… 

1回=契約書1本?

仮に、1回こっきりの貸付けなら登録不要と解した場合、その「1回」とはどういう意味でしょうか?口座に振り込む行為を1回と考えるのか?1通の契約書で行われるものを1回と数えていいのか?

貸付けの場合、必要資金を都度貸し付けたり、1年ごとに返済させ、また貸し付けたりするということがあります。私としては、「そんなの、どうみたって反復継続しているじゃないか」と思うのですが、財務視点では契約書が1通であれば「1回の貸付け」とみることもするみたいですね。。

法の趣旨を考えれば、登録はいらなそうだが

そもそも、貸金業が登録制度を敷いているのは、貸金業者の業務の適正を確保し、借入者の利益を保護するためです(貸金業法1条)。そうすると、一企業が取引先に貸付けを行うことは、法の規制を受けずとも借入者の利益が不当に害されることは考えにくく、貸金業法の適用は適さないようにも思われます。

しかし、貸金業法は、グループ会社間の資金融通(いわゆるCMS)については、明文で適用除外を謳っており(貸金業法施行令1条の2第6号)、そこで「貸付けを業として行う会社等・・・であって・・・(筆者注:グループ会社)以外の貸付け・・・を業として行わないもの」と定めているのを見ると、少なくとも貸金業法は、「業として」をかなり厳格に捉えていると思えてなりません。

 

というわけで、短期ロールでの貸付けを考えているという相談者には、「『業として』を満たしてしまう可能性が高いので、やめてください」と回答しました。

そうすると、資金提供の手段は、増資か社債の引受け(又は寄付)になってしまうのですが、いずれも事実上無担保で提供することになり(社債は担保をつけることができますが、何かと負担が重いので無担保社債が普通)、資金の出し手としてはなかなか難しいところです。