Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

法務部門に対する意識調査を実施してみた

f:id:itotanu:20191127225410p:plain

先日、念願かなって、法務部門に対する意識調査を行うことができました。

N数として不十分ですし、質問は極めて限られたものでしたが、最初の一歩を踏み出せたことに大変満足しています。

法務機能=クリエーション+ナビゲーション+ガーディアン 

先月、やっと国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書〜令和時代に必要な法務機能・法務人材とは〜(「本報告書」)が公表されました。

まだ全部をきちんと読めていないのですが、これまでのワーキンググループでの議論のように、まず、法務機能とは、①パートナー機能と②ガーディアン機能を有し、①はさらにクリエーション機能とナビゲーション機能をいうものと整理されました。そのうえで、法務機能の可能性について、以下のように述べられています。

 

企業の法務機能を担う者は、法務機能に含まれる3つの機能を継続的に発揮して、社内外の関係者の期待を意識し、法的素養を活かした広義のコミュニケーションを通じて、健全で持続的な価値を共創することができる。

法務機能強化の方法は、トップダウン型とボトムアップ

そんな素晴らしい法務機能をどのように実装・強化するのか。

本報告書では、①トップダウン型と②ボトムアップ型が提言されています。

言わずもがなですが、短期間で強化する方法は、①トップダウン型。しかし、これにはトップのコミットメントが必要です。平和的な(不祥事がまだ発覚していない)企業では事実上難しい方法でしょう。

すると、②ボトムアップ型、つまり不断の変革を続けることで強化していくしかありません。具体的には、取組み→価値の提供→信頼獲得→新たな取組み→…というサイクルを回していくことになります。ものすごく地道ですね。。

その組織変革のサイクルをどのように回すか、というのを示した図は以下のとおりで、まずはビジョンを設定し、現状把握から始めましょうと提言されています。

f:id:itotanu:20191125225215j:plain

組織変革のイメージ図(本報告書20頁)

現状把握に有用な手段はアンケート調査やヒアリング

現状把握の必要性について、本報告書では以下のように述べられています。

 

法務機能を十全に発揮するためには、法務部門が直接にそのサービスを提供する相手となる経営陣や事業部門等の関係者が法務部門に何を期待しどう見ているか、事業(価値)の創造に貢献しているかを認識し、これをも踏まえて、(略)法務部門の方針(新たな理念やクオリティ改善等)を決定していくことが必要である。

そのため、経営陣や事業部門等の関係者に対してアンケート調査やヒアリングを行うことで、法務部門に求める事項及びそのパフォーマンスを確かめることが有効である。

そこで、実施した研修に対するアンケートの一部に、法務部門のサービスに関するアンケートを実施してみました。

本社部門の利用率は約85%で質・スピードともに概ね満足だが 

今回は、本社部門の管理職向けにアンケートを実施したのですが、「法務を利用したことがあるか?」という質問には、約85%の方が「ある」と回答しました。営業部門だとなかなか相談できない方もあるので、かなり上々の認知度・利用度ではないかと思います。

質やスピードに対する満足度もかなり高かったのですが、我が社の風土として、フィードバックは高めにするところがあるので、割り引いて見ることにします。ただ、全体的評価として、不満をお持ちの方がいなかったのは胸をなでおろしました。具体的なコメントには、次のようなものがありました。

  • 相談しやすい
  • 質はわからないが、色々質問してくれ、理解してくれる
  • Yes・Noがはっきりして助かる
  • 理由を明確にしてほしい
  • 曖昧な回答のときがあり、はっきりしてほしい

「相談しやすい」「理解してくれる」という評価は、まさに私たちが得たい評価であり、素直に大変うれしいものです。

「Yes・Noがはっきりして助かる」「はっきりしてほしい」という正反対のコメントについては真摯に受け止めなければなりませんが、私たちが明快に助言ができるのは、相談者に「想い」「パッション」があるときだと思います。「これがしたい!」と言われれば、なんとか(安全に)実現できる方法を考えるし、「これ、どう思いますか?絶対にセーフですか?」と聞かれれば、やや杓子定規な回答に終始してしまうこともあります。ほとんどの相談は、絶対にダメというものではないし、一線を少し踏んづけても見過ごされることは世の中にいくらでもありますからね。。

最後に、「理由を明確にしてほしい」というコメントには、ハッとさせられました。もちろん、回答するときには理由を付しますが、契約書のチェックなどでは不十分なところがあるかもしれません。

で、どうするの?に解はない

アンケートの結果、私たちのサービスは、概ね社員に満足していただけていることがわかりました。

よって、私たちが進んでいる方向は概ね正しいのだろうと思います。

しかし、コメントの中には上述のように改善を希望するものもありましたし、法務へのコメントを書かない(書けない)人も相当数いるという現実を見ると、私たちは、「法務のポテンシャル」をもっと見せていかないといけないと感じています。

 

「で、どうするの?」はこれから考えます。