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大阪で働く法務パーソンのはなし

経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針

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遅まきながら、経済産業省が公表した「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書〜令和時代に必要な法務機能・法務人材とは〜」の経営者層に向けた周知用資料「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」(「本指針」)を読みました。

正直な感想は、「これ、誰がどうやって経営陣に届けるの?」です。

法務機能を使いこなす意義

本指針では、まず、法務機能を使いこなす意義を次のように説いています。

 

企業経営者は、「法務機能」を使いこなすことによって、法的リスクを乗り越え、「事業の創造」を可能とし、「企業価値の向上」を果たすことができるのである。 

そして、事業の創造に成功した例として、DeNAの個人間カーシェアサービス事業やAirbnbの民泊事業を挙げるとともに、日本企業が「法務機能」を十分に活用していない根拠として、経営法友会が実施した調査結果を引用し、経営陣から意見・判断を求められる頻度の日米の比較を挙げています(日本では週数回と回答した割合が18.9%に対し、米国では毎日・週数回と回答した割合が7割弱)。

その上で、行動指針を提起した背景として、昨年春に「日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」を公表し、その後も企業ヒアリングをしてきたけれども、未だ経営と一体となった法務としての取組みが進んでいるとは言い難いという実態を述べています。

経営者の行動指針

法務機能を使いこなす意義を踏まえ、経営者に向けて提起されている行動指針は次のとおりです。

  1. 経営者は、法務部門を「事業の創造」に貢献する組織にし、その貢献が発揮される環境を整備できているか?
  2. 経営者は、経営戦略における法務機能の活用に対するスタンスを明確にしているか?
  3. 経営者は、“経営法務”を遂行できる高度な人材を経営陣の一員、かつ、法務部門の責任者として登用しているか?
  4. 経営者は、法務部門の責任者との意思疎通を密にしているか?
  5. 経営者は、“経営法務”により得ることができた新事業の創出や企業価値増大の効果を評価しているか?
  6. 経営者は、法的リスクを乗り越えてビジネスチャンスにつなげるため、自らの責任で合理的な経営判断ができているか?
  7. 経営者は、“経営法務”人材の獲得・育成活用について戦略的な方針を示しているか?

これだけだとやや抽象的ですが、各項目には具体的な行動も例示されており、訴えたいこと自体は拍手喝采もの。たとえば、上記1の具体的な行動には「経営者は、法務部門をして、専ら“出来上がった契約書案を審査するのみ”の組織に留めていないか。」といった手厳しいものが含まれています。

誰が経営者に読ませるのか?

私も、ぜひこの行動指針を社長や経営陣に読み、行動に移してほしいと希望します。が、しかし、この行動指針はこんなA4 3枚の文字だけの紙。

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経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針

3枚に収まっていることに感謝すべきかもしれませんが、今時の経営陣は、短時間で理解できるように資料をまとめてもらうことに慣れており、たとえ3枚でも文字だけの資料を読ませるのは難しいのでは?と思います。(「法務部門をして」という表現が理解できない人もいるかも…)

加えて、この行動指針は法務部門が経営陣に説明して差し上げることが憚られるほど手厳しい内容です。3つめの行動指針なんて、私は恐ろしくて自分のボス(=取締役)にとても説明できません!「漫然と」って書きすぎではないか。笑

「読んでおいてください」で終わらせたくない

もし、経営陣が行動指針に従った行動をとってくれたら、法務は動きやすくなるし、ひいては企業価値向上に資すると信じます。だから、ぜひこの行動指針に目を通し、ご自分の行動を振り返ったり律したりしていただきたいのですが、法務部門から説明すると経営陣を責めているのと等しい。かといって、「読んでおいてください」では頭に残らなそう。。

一目でわかるようなビジュアルにして、こっそり決裁ボックスにでも忍ばせるか、経団連とかで取り上げていただくかするといいと思うのですがどうでしょう。我が社は経団連に入っていないですけれども。。(なお、社長にこの方針の存在をご紹介しようとしたところ、上司に止められました…)

少し古い報道によれば、AmazonGoogleは、紛争が多いこともあってか、研究開発費よりもリーガル費用の方が高額なのだそうです。新しいことをする会社は、そうやってリーガル(ロビイング含む)にも本気で取り組んでいるということも、もっと知らしめたいところです。