この春、健康増進法が(また)変わります。
オリンピック・パラリンピックを控え、急ピッチで整備された感が否めませんが、喫煙者にとっても、施設管理者にとっても、かなり大きな改正ではないでしょうか。
改正の趣旨
今回の改正の趣旨は、望まない受動喫煙をなくすことです。ラグビーW杯や東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、2017年に改正法が成立しました。
ラグビーW杯に合わせ、すでに昨年7月から子どもや患者等に配慮が必要な施設(学校や病院)などでは敷地内が原則全面禁煙になっています。そして、オリンピックイヤーの今年4月からは、オフィスなどを含む公の場が原則として屋内禁煙となります。非喫煙者にとっては好ましい改正ですよね。
紙巻きたばこが吸えるのは「喫煙専用室」だけ
今回の改正により、喫煙可能な場所は以下のようになります。
屋内で喫煙できるのは、以下のいずれかです。
- 喫煙専用室
- 加熱式たばこ専用の喫煙室
- 既存小規模飲食店
- 喫煙目的施設
- 自宅や客室などのプライベート空間
つまり、オフィスで紙巻きたばこが吸えるのは「喫煙専用室」だけになるのですが、その条件は結構厳しいです。JTのわかりやすい説明は以下のとおり。
「缶コーヒーを飲みながら一服」がなくなる?
そして、喫煙専用室は「専ら喫煙をすることができる場所」なので(改正後の健康増進法33条1項)、飲食が許されません。喫煙のあるある風景「缶コーヒーを飲みながら一服」が違法になります。行為者である喫煙者には罰則がないので、本当になくなるかはわかりませんが……
我が社が入居するビルには、各フロアに自販機を備えた喫煙ルームがあるのですが、きっとまもなく撤去されるんですね。設備要件も満たさなそうだから、喫煙ルームごとなくなるかもしれません。
重要な情報交換タイムであったたばこ休憩もなくなってしまうのでしょうか。まぁ、非喫煙者との間では不公平感を生むものですので、歓迎すべきなのでしょうが。
ここまでしなくてはならなかったのか?
私も非喫煙者ですし、望まない受動喫煙をなくすことは重要です。屋内全面禁煙化が進んでいる諸外国と比較して、日本の対策が遅れていることも事実です。
が、改正健康増進法をもってしても世界との遅れを挽回できません(適用除外が多いからです。)。それなのに「たばこを吸う以外何もしてはいけない」というルールを設ける必要があったのか、甚だ疑問です。自らの健康と引き換えにたばこを吸う人が、喫煙ルームで何をしても自由だと思うのですが……
なぜ、JTはこの改正を許したのでしょうか。大株主様(=国)には逆らえなかったのでしょうか。
我が社にとっても今回の改正は事業に少なからぬ影響を及ぼすので、改正法が成立したとき、立法経緯や改正内容を研究したのですが、時すでに遅し。ルールを変えたりデザインしたりすることの重要性が説かれる昨今ですが、自分たちレベルではロビイング活動なんて夢のまた夢だなと、このとき思いました。ただ、JTを巻き込んだり、同業他社と組んだりすれば、違う結果が得られたのではないか?という気もしています。公正取引委員会も、事前に相談すれば、同業他社との取組みが独禁法に抵触するかどうかジャッジしてくれますしね。
初動が遅れたこの件は、苦い思い出になりそうです。