Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

LegalTechお使いですか?

クラウドサイン、AI-CON、Holmes、LegalForce、HUBBLE、LEGAL LIBRARYなどなど、ご利用でしょうか。

先日、あるリーガルテックのセールスの方が、アップデートがあるということでご紹介のためお訪ねくださいました。

折しも、BUSINESS LAW JOURNALの今月号の特集にも、「リーガルテック導入の検討状況」という記事が掲載されています。

進化するサービス

お越しくださった会社のサービスは契約書レビュー支援に関するもので、創業者の方の思い(ビジョン)もよく伝わるし、設計も優れているとは思うのですが、どうしても価格で折り合えず、導入を見送っています。

今回のご紹介では、トライアル時から格段に充実したサービスについてお話いただき、今後の拡充予定についても教えてくださいました。素晴らしいと思います。お値段も。

我が社は、そのサービスにご提案の価格を支払うことはできないのですが、サントリーグループ始め多くの会社さんが利用されていることは周知の事実ですし、お世話になっている法律事務所でも導入されているそうなので、決して支持がないわけではありません。(法務にかける予算の違いはどこから出てくるんでしょうか。。)

リーガルテックにユニークユーザーは必要か?

私の知っているリーガルテックでは、課金形態が「1ユーザーにつき月額●円」というものが多いです。せっかくデジタルなんだから、「誰がいつ何をやったか」を正確に記録して分析に生かすべきだという、もっともな理由からだと思います。

しかし、果たして「1ユーザーに1アカウント」必要でしょうか?

たとえばレビュー支援。たとえば文献検索。

「誰がどの案件を担当したか」を記録することは大切です。我が社では、評価にも直結するほど。

現在のリーガルテックの多くは、特定の作業を支援するものが大半です。よって、案件記録は別につけていたり、ワークフローで管理されていたりするのが通常で、「レビュー支援を誰がかけたか」「誰がログインしたか」でカウントすることはありません。こういうサービスでは、アカウントは1つあれば十分です。

ちなみに、私のチームでは案件管理などのためにkintoneを使っているのですが、この使い方だとkintoneもアカウントは1つあれば十分です。ただ、最低契約数があるから1人につき1アカウント付与しています。

今はまだまだ? でもこれからの飛躍に期待!

BUSINESS LAW JOURNALの記事では、リーガルテックの使い心地に関する正直な意見も紹介されていました。拝読して驚いたことが2つあります。

ひとつめは、契約書レビュー支援サービスに関する評価が今ひとつなこと。「信頼して使うには至らない」というご意見が目立ちました。契約書のレビュースキルは、何年経っても極めることなどできませんし、AIが苦手な「行間」や「前提」「背景」を理解しなければレビューしたとはいえません。だから、あくまでAIは「助けてくれるツール」だと私は理解しており、「信頼して使う」という発想はなかったのですが、法務パーソンがこのサービスに寄せる期待の大きさに驚きました。その期待に応えるには、さすがにもう少し時間がかかりそうですね。。

もうひとつは、手厳しい契約書レビュー支援サービスの評価とは打って変わって、AI翻訳(主に英訳)に対する評価が高いこと。書類によるでしょうが、「招集通知英訳も内製化した」という企業もありました。我が社もあるAI翻訳を利用しているのですが、「イケてる!」と思ったことはないような…これまで、契約書や提案書などを翻訳にかけてみましたが、手直しにかなり時間を要します。定義された言葉を統一的に使うことが難しいみたいだし、倒置文だと主語がおかしくなっていることが多い。

でも、AIは学習していくものですし、まだ黎明期といえるでしょうから、これからの飛躍的な成長に期待しています。

営業活動は事業部門や人事部門へ(できたら社長へ)

リーガルテックを使うのは法務パーソンなので、営業を法務にかけるというのはごく自然なことですが、それでは先に進むのが難しいのでは?と推察します(他社は法務に力とお金があるんでしょうか?)。

というのも、基本的に法務部門は可処分予算がほとんどありませんし、システム導入にあたってはシステム部門の理解と協力が欠かせません。法務は、相手を納得させたり、説得したりすることが得意ではあるけれど、依頼者に尽くすばかりで自分の利益のために働くことがないので、自分たちのために予算を引き出すのはかなり難儀ではないでしょうか。少なくとも、私は他部署の理解を得る自信がありません。。現に何度も失敗してます。。

リーガルテックの企業には、導入することで得られる会社全体への効果(人件費の削減とか生産性の向上とか)について、法務だけでなく事業部門や人事部門へ営業をかけていただくといいのではないでしょうか。契約書がなくなって嬉しいのは営業部門ですし。