先日のセミナーの続き。
先日のリーガルテックのセミナーで、効率化を追求するなら、一気通貫のシステムが必要だというお話がありました。
契約交渉から押印までのフロー
取引先と契約を締結することになった場合、多くの会社では次のような流れをたどるはずです。
契約書審査
↓
内容確定・稟議
↓
製本・押印
真面目にやると、チェックにうなされる
このフローの各矢印のところでは、真面目な会社・法務パーソンは、以下のようなチェック作業をすると思います。
- 最終版は、審査時の指摘が反映されたものになっているか?
- 調印版は、稟議で承認されたものと相違ないか?
正直なところ、今の会社ではこの作業をやっていません。理由は、
- 法務の指摘が採用されるとは限らない
- 「契約稟議」という慣習がない(部門長がよいといえばよい)
- 法務が稟議を見たり押印手続に関与したりする慣習(発想)がない
前職では、まさに契約書審査と契約稟議の間、契約稟議と押印の間で、一字一句をチェックしていました。大嫌いな作業でしたね。笑
一気通貫にすれば、チェックから解放される
登壇された会社さんでは、契約書審査〜押印申請までが一気通貫に連携されたそうで、審査を受けたものがそのまま稟議に付され、その後押印に回るので、2度の「ただ字面を追う」という確認作業から解放され、格段に効率化が図れたとお話されていました。確かに、「法務がこれで」といったものがそのまま押印に回ってくればかなり楽です。
しかし、契約というのは相手方との合意により成立するもので、こちらの意見が通らないこともあるはずです。「審査して、法務が『こうすべき』といったのを現場が聞かなかった場合は、このシステムはどうなるんですか?」と質問したところ、「そういうことはほとんどない」との回答でした。
法務どんだけ強いんだ。。いや、大企業のなせる業ですかね。M&Aのときはどうするんだろう?
法務の提案は絶対じゃないけれど
契約とは、相手方との合意であり、パワーバランスが交渉に影響を与えます。それに、ほとんどの契約条件は、相手方の要求を飲んだところで会社がつぶれるようなことにはなりません。
組織人の法務としては、会社にもっとも有利なように修正を提案しますが、法務がA案といったところで、B案になることもあります。B案が多少当社に不利な条項だからといって、ビジネスを止めることは本末転倒であり、不利な条項を飲むことによる不利益が受容可能なものかどうかは、最終的には現場で判断してもらうべきです。
私は、法務の提案を聞かない現場も大いに結構だと考えているので、契約審査〜押印の一気通貫というのはちょっとナシかなと思います。法務にOKもらえるまで申請を繰り返すのもナンセンスですし。稟議〜押印のリンクはアリだと思いますが、全件でやるのは現実的ではないので、そのルートに乗せるかどうかの基準を作るのが大変そうです。我が社も、法務チェックを受けるかどうかに明確なルールはありませんし。。
つまるところ、まずはしっかり自分たちで考えて、必要なところは法務に相談して、最終的にやはり自分たちで(もちろん法務も一緒に!)腹をくくる、ということが必要で、全社的な法務リテラシーをあげていく必要があるのだと、改めて思いました。