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大阪で働く法務パーソンのはなし

取引先が破産!そのとき

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当社のお取引先には、地方の中小企業も多くあります。そしてここ数年、後継者不足、経営悪化等の理由で廃業を余儀なくされるところが増えています。

後継者不足での廃業も残念なのですが、当社にとっても最も困るのが、突然の営業停止です。

行ったら貼り紙

年に一度くらい、営業部門から「取引先に行ったら営業停止の貼り紙がしてあった!」と電話がかかってくることがあります。

最初の頃は、「えー!」と驚いていたのですが、最近は、「あ、そうですか。では、債権の確認を…」と落ち着いた対応になりました。以前は、法務の仕事=債権回収といわれた時代もあったそうですが、私を含めて、最近の法務パーソンで債権回収の豊富な経験を有する人は極めて少数ではないかと思います。急な営業停止とか、最近はあまりありませんからね。

まずは、未回収債権をチェック

取引先が破綻したとき、まずは未回収債権を確認します。当社は掛け売りが基本なので、大体1〜2か月分の売掛金が溜まっています。

次に、担保を確認します。一応、与信管理をしているので、通常は担保(保証金)が未回収債権額を上回っているはずで、充当して残額を管財人に返還して債権回収・整理は終わりです。ただし、こんなにスムーズに行くことは多くはありません。なぜなら、

  • 支払停止後に債権を取得してしまう
  • 担保が足りない

というケースがままあるからです。

問題①支払停止後に債権を取得してしまう

支払停止に陥ったことを知れば、即座に取引を停止しなければなりません。支払停止後に得た債権は、保証金充当ができないためです。

そうなのですが、当社では、諸般の事情で急には取引を止められないものもあり、支払停止後に債権を取得してしまって破産債権として届け出る=ほぼ返ってこないということがあります。

問題②担保が足りない

支払停止後に債権を取得してしまうのは、当社の事業特性上仕方ないところがあります。問題は、担保が足りないことがあること。あるいは、担保が不動産で実行に手間がかかる(し、いくらになるかわからない)こと。

こういうケースでは、所有権留保がついた商品であれば取り返して債権を減らしたり、動産売買の先取特権の行使を考えたりすることもあるのですが、動産売買の先取特権の場合は倉庫にある商品のどれが対象商品かわからないとか、もう第三者に販売されて即時取得されたとかで、実際にはあまり大きくは債権を減らすことができません。

取引先対応も待っている

お金の話は、比較的早期に対応のメドが立ちますが、大変なのはお客様対応です。当社の場合、事実上、取引先がある一定の地域を担当している状態なので、取引先が破綻すれば、その取引先が担当していたお客様の今後のフォローを近隣で対応しなければなりません。自社でできるケースもありますが、他のお取引先のご協力を仰がないといけないことも多いですし、何よりお客様にご迷惑をおかけしては申し訳なく、迅速対応が必要です。

また、当社の商品は人が口に入れるものなので、商品が信頼できない業者に回らないようにもしたいところです。とはいえ、管財人としては、換価して1円でも多く債権者に配当しなければならないので、基本的に「返品」には応じてくれません。品質問題になりかねないので廃棄処分をこちらですると申し出て回収させてもらうことはあります。

対応メドがたったら契約解除

債権債務が確定して保証金充当が完了し、取引先対応もひと段落し、破産手続開始決定も出たとなれば、最後に契約解除の通知をしてひとまずの対応を終えます。ここまで、早ければひと月足らずでしょうか。保証金がしっかりあれば、支払停止前の債権についてはいつでも充当・相殺が可能なので、お金の処理はそれほど急ぐ必要はありません。

今回は、破産した場合を想定して書きましたが、自主的に廃業なさるケースでもスピード感は違えど概ね同じ手順になります。

取引先のリアルタイム与信管理が重要

法務では与信管理をしないので、こういった問題が起きたときに初めて支払状況等を拝見するのですが、滞留債権があったり、自転車操業的な支払だったり、与信額と担保額があっていなかったり…ということも珍しくありません。現場にはしっかりウォッチいただきたいところです。

一方、与信額と担保管理のズレは、担保の管理と取引先の支払状況をウォッチしている部署が違うことに起因しているように思います。同一システム上でリアルタイムで共有できるようにすればいいのに…と、ついついシステムで解決したくなるのですが、安易でしょうか。。