我が社はこれまで、経営会議や取締役会といった重要会議は、「一堂に会する」方法を守ってきました。
しかし、さすがに経営陣が社会的距離を確保できない密室で何時間も議論するのはまずいと、先月から「分散」参加となっています。
遠隔地からの参加方法
①電話会議
その場に行かずに参加するもっとも簡単な方法は、電話です。スピーカー機能を使えば、かろうじて携帯電話や普通の固定電話でもしのげますが、多人数×多人数の場合は、電話会議システムが必要でしょう。
重要会議で使用する例がどれほどあるかわかりませんが、多人数×多人数の電話会議は、国内外問わず、商談などでよく利用されているものと思います。私も、かなり長い間ポリコムにお世話になっています。
ただ、電話だと音声だけになるので、聞き取りが難しかったり、表情が見えずニュアンスを確認できなかったり…という不便があります。そこで、次に出てきたのがテレビ会議システム。専用の機器を設置することで、クリアな画像で会議を進めることができます。これだと、ほぼほぼ違和感なくコミュニケーションが取れます。
③web会議
テレビ会議システムは、非常にクリアな画像が魅力的ですが、機器が必要で、コストがかかったり、自由に持ち出せずに専用会議室でしか使えないといったデメリットがあります。
そこで出てきたのが、インターネットさえあればつながるweb会議システム。当社の重要会議も、これを使って開催しています。
最近だと(良くも悪くも)zoomが注目されていますが、web会議の場合、インストールされたPCがあればいいし、画面を共有することで、参加者全員が同じ画を見て議論できるというユニークな強みがあります。
旧法時代から遠隔地からの参加は認められていた
旧法時代は、取締役会や株主総会を電話会議やテレビ会議で開催することを法が認めているかは定かではありませんでしたが、平成の中頃に解決されています(参照:BUSINESS LAYERSの記事)。
もっとも、こちらの記事にもあるように、「出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態」が会議中担保されていることが条件とされており、議事録に次のように記載することが事実上求められていました。
日時 ●年●月●日●時●分(日本時間)/●時●分(イギリス時間)
場所 東京都●●
出席取締役:●●及び●●
出席監査役:●●
●●, UK
出席取締役:●●(電話会議システムによる出席)(開会宣言・定足数確認)
議長は、電話会議システムにより、出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認して、議案の審議に入った。
(議事の経過・要領)
本日の電話会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく議題の審議を終了したので、議長は●時●分閉会を宣した。
会社法下では要件が緩和された?
15年ほど前に施行された会社法では、役員らが一堂に会さなくてもよいことが明確になりました。というのも、取締役会を例にあげると、議事録の記載事項を定める会社法施行規則では次のように定められています。
会社法施行規則101条(取締役会の議事録)3項
取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
(以下略)
保守的な弁護士・司法書士は、旧法から特に変更がないものと理解して、従来の記載を踏襲されているように思いますが、会社法上は、議事録には「出席の方法」さえ書いておけばよいように読めますから、上記の例だと、イギリスからの参加とか、即時・双方向が担保されていることは書かなくてよくて、「●●は電話会議システムにより出席」とさえ書いておけば足りるはずです。実際、書籍の中には、そのような記載にとどめるものもあります。
議事録には「web会議システム」でOK?
電話会議もテレビ会議もまだまだ健在ですが、web会議システムの普及には目を見張るものがあり、実際、当社もweb会議システムを利用して重要会議を開催しています。
しかし、手元の文献を見ても、「電話会議システム」「テレビ会議システム」を用いて開催する議事録の記載例はあるけれど、web会議システムを用いた例は見当たりません。。とはいえここは「web会議システム」と書いておけばいいのだろうと思っていますが、司法書士さんや法務局からクレームが来るでしょうか。