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大阪で働く法務パーソンのはなし

ついにハンコ文化が動く?

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緊急事態宣言が全国に拡大し、当社グループも今週からは「出社8割減」を目標として、出社制限の範囲を全国に拡大しています。
出社を8割減らして、売上7〜8割を維持できるなら、これからもそういう事業モデルでいいのかもしれません。
さて、在宅勤務を励行しても、どうしても出社しなければならない総務業務に押印・郵便/荷物・電話がありますが、先週はハンコ問題で盛り上がりましたね。自社のペーパーレス化が進まないことに苛立ちを感じている私は、GMOさんの「決断」と「実行のスピード感」に心から尊敬を覚えました。

IT政策担当大臣の答弁が大手企業を動かした

先週、竹本IT政策担当大臣の答弁が物議を醸しました。
記者が「はんこ文化がテレワークの障害になっているのではないか」という趣旨の質問したところ、「しょせんは民・民の話」と答弁されたのです(IT mediaより)。

それを受けて、GMOの熊谷さんが以下のようにツイートされ、サイバーエージェントの藤田さんをはじめとする経営者、弁護士さんが反応を示されていました。

このツイートを見たときは、「おぉ。GMO頑張れ!」と、やや他人事のように感じていたのですが、その2日後、GMOさんは本当に行動に出るのです。「GMOインターネットグループ お客様手続きの印鑑を完全に廃止・契約は電子契約のみへ 〜印鑑による出社対応を不要に〜」というリリースを出されました(以下は一部を引用したもの)。先週金曜日にYahoo!トピックス(GMO、印鑑を廃止へ IT担当大臣(はんこ議連会長)の「しょせんは民間の話」コメント受け社長が即断)に上がっているのを見て仰天。はやっ。(熊谷さんの即断で中の人はさぞかし大変だったと思いますが、みなさん正しいことをされたと思います!)

 

GMOインターネットグループは、新型コロナウイルスの感染拡大で出社が制限される現在の状況が長期化すると考えられる中で、当社グループを含む多くの企業において、契約業務をはじめ捺印のために出社対応している状況を受けて、以下の2つの方針を決定いたしました(※1)

(1)サービスにおけるお客様の各種お手続きから、印鑑を完全撤廃(印鑑レス)

(2)お取引先とのご契約は電子契約のみとする(ペーパーレス)

この方針(1)に基づき、まずはGMOインターネットで提供している各サービス(※2)において、本日2020年4月17日(金)正午、お客様の手続きから印鑑を完全撤廃いたしました。また、方針(2)に基づき、GMOインターネットグループでは、今後、お取引先企業へ電子契約の利用を要請していきます。

GMOインターネットグループでは、これによりパートナー(従業員)の出社対応の場面をなくしていくとともに、グループを挙げて電子契約の普及・発展を推進してまいります。

(※1)監督省庁、金融機関への提出書類等において捺印を必要とする場合を除く。

(※2)GMOインターネットのサービス一覧はこちらをご覧ください。

(URL:https://www.gmo.jp/service/search/1/1/2,3,25,4,5,7,1,6,8,9,10,23,32/

 「おぉ。GMO頑張れ!」ではなく、「GMOとお取引したい!」という気持ちになりました。しかも、心憎いことにGMOさんは、テレワーク支援のために、自社が提供する電子契約サービス「Agree」のスタンダードプラン(電子サイン)を1年間無償で提供することも合わせて公表されました。この会社、やばい。ついにハンコ文化が動くかもしれません。

ついに無料の電子契約がサービスイン

くしくも?今月下旬には、ブロックチェーン技術を使った完全無料の電子契約がサービスインする予定です。このサービスだけでは認定タイムスタンプは付与されないようなので、どの程度受け入れられるかは未知数ですが、ブロックチェーンを使うので、「誰」だけでなく、「いつ」や改竄がないことも担保できるはず。まだ勉強不足で全体像を掴んでいないのですが、これが普及したらどうなるんだろう?

他人が押せる、朱ければいい?

竹本大臣がはんこ議連の会長だということは、就任当初から問題視されていましたが、はんこ業界は、過去に「デジタル・ガバメント実行計画」に関する要望書というものを提出されており、そこには次のような一節があります。たまげる。

 

欧米のサイン制度と違い、代理決済(原文ママ)できるという印章の特長が、迅速な意思決定や決裁に繋がり、戦後の日本経済の急速な発展にも寄与してきたという自負があります。

ハンコ文化が不要だとか、なくなるとは全く思いませんが、意思表示手段としてハンコを用いるのはやめたほうがいい。そもそも、他人が押せるとか、朱ければいいとか、おかしくありませんか?他人が押せるのに、誰でも簡単に作れるのに、実印以外は相手はそれが本当にその人のハンコ(意思表示)であるかわからないのに、なぜみんなこんなにハンコが大好きなんだろう。
大臣は「しょせん民・民の話」とおっしゃいましたが、行政だってハンコ大好きですよね。登記なんて事実上紙ベースだから議事録も完全には電子化できないし、「民・民」の契約でも法律上書面で締結を求められているものがあります。

私は力不足で自社の電子契約やペーパーレス化に貢献できていませんが、GMOさんを見習って、諦めずに頑張ります。(GMOさんが当社と取引してくれたらいいのになー。)