Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

6/15週の法務関連ニュース

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先週は、個人的に大きな衝撃を持って受け止めるニュースが多かったです。先週の記事に書いたHubbleのNDA統一規格化もその一つですが、そのほかにも法務省関連のニュースが興味を惹きます。

登記にもクラウド電子署名が認められた!

先月末に法務省クラウド電子署名を認める旨の通知を出したらしいと先日書きました。

legalxdesign.hatenablog.com

登記はどうなるのか?と思っていたら、6月15日に法務省サイトが更新され、クラウドサインAgreeを利用したものがOKになりました。代表権の異動を伴うものはローカル型の電子署名を施さない限り書面対応が必要ですが、それ以外のほとんどの手続がペーパーレスでできるようになったということ。数週間前までネガティブだった法務省がこんなに素早く対応するとは、新型コロナウイルスの影響大きすぎる。。

商業登記申請はオンラインですることが増えているそうですが、これで添付書面含めて完全オンラインに移行する企業も増える…でしょうか。

「特定技能」の対象業種にコンビニを追加?

また、先週、こんな報道にも接しました。

「特定技能にコンビニ追加を」 自民、外国人在留で提言朝日新聞

「特定技能」の対象業種にコンビニを追加することを来年度予算案の「骨太の方針」に盛り込むよう自民党が求めたというもの。リーダー層の育成を目指すコンビニ業界からの要請だそうです。「日本人をリーダー層に育成したいから現場は外国人に任せたい」というように聞こえるのですが…

人材不足を補うために、特定業種に限っては単純労働を含めて認めるという「特定技能」が導入されたのが2019年4月のこと。多数が利用するであろう1号について、なぜ家族の帯同を認めないのか?という批判も記憶に新しい。

新型コロナウイルスの影響で職を失ったという方が大勢いるというニュースの一方で、「人手不足」を理由に外国から(低賃金でも仕事をしてくれる)単純労働者を呼ぶ。日本はどうなっているのでしょうか…

 

押印慣行を見直すための「押印についてのQ&A」

そして、法務省内閣府経済産業省との連名で先週金曜日に出したのが、「押印についてのQ&A」。以下のようにメディアでも取り上げられていました。

www.nikkei.com

しかし…なんじゃこれは。

  • 契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。
  • 押印に関する民事訴訟法のルールは、どのようなものか。
  • 本人による押印がなければ、民訴法第228条第4項が適用されないため、文書が申請に成立したことを証明できないことになるのか。
  • 文書の成立の申請が裁判上争われた場合において、文書に押印がありさえすれば、民訴法第228条第4項が適用され、証明の負担は軽減されることになるのか。
  • 認印や企業の各印についても、実印と同様、「二段の推定」により、文書の成立の真正について証明の負担が軽減されるのか。
  • 文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どのようなものが考えられるか。

「押印についてのQ&A」は、以上の合計6問について、政府が見解を述べたものです。そんなことを政府に言ってもらわないとダメなの?というものから、そんなことを政府が言ってもいいの?というものまで…

たとえば、押印がなくてもいいの?という問いに対しては、「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない」といった回答が記載されています。多分、多くの国民が知っていますね…このQ&Aのせいで、「締結に至らなかった契約が『締結済み』と扱われるのでは?」という懸念が生まれているという話も聞きます。確かに、押印のない契約が出てきたとき「本当にこれが最終版か?(多分絶対違う)」と不安になります。。

また、民訴法上、押印があれば文書の真正成立が推定されますが、「相手方の反証が可能なものであって、その効果は限定的」とか「二段の推定により証明の負担が軽減される程度は、(略)限定的」といった記載もありました。それは行政機関が言うことではないのでは。。加えて、文書の真正成立の推定が働かない場合に真正成立が争われた際、立証を容易にする具体的方法の例まで紹介されていました。それは、電子署名や電子認証サービスの利用のほか、以下のようなメールのやりとりをすること。意思表示を認めた裁判例もあるのだろうけど、メールには改ざんの可能性もありますよ?

  • メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存
  • PDFにパスワード設定
  • 上記のPDFをメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
  • 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)
  • PDFを含む送信メールおよびその送受信記録の長期保存

デジタル容認にシフトするのは、民間としてはありがたいことだけれど、最も消極的に思われた法務省がこうも攻め?の姿勢に変わるとは…少し危なっかしくて不安です。