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大阪で働く法務パーソンのはなし

ハラスメントはどこから?

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6月にいわゆるパワハラ防止法が施行され、パワハラ防止措置を講じることが企業の法的な義務になりました(罰則はないけれど)。

これに合わせて、当社では、改めて自社の相談窓口を周知したり、ポスターを貼ったり、管理職にeラーニングを受けさせたり、と人事と法務で矢継ぎ早に施策を実行しています。

パワハラ防止のために事業者が講ずべき措置

パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)により、企業は、パワハラ防止のために以下の措置を講じることが義務になりました(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針。中小企業には1年の猶予期間あり)。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. その他併せて講ずべき措置として、プライバシー保護や不利益取扱いがないことの労働者への周知・啓発

以上から、一般労働者に対しては、窓口を改めて周知する一方、管理者に対しては、eラーニングを受講させるとともに、「対応」にスポットを当てた研修をすることとしました。

管理職向け「ハラスメント対応研修」

外部が提供するeラーニングでは、パワハラの定義や種類について細かな知識を提供してくれるので、私たちは、「ハラスメントの相談を受けたらどうする?」「ハラスメントを見かけたらどうする?」というテーマを選びました。
なんとなくわかるようで、誰も教えてくれないテーマと思いませんか?たとえば、こんな問題です。
  • 部下から「折り入って相談がある」と言われたらどこで相談を受けるか?
  • 「ハラスメントを受けている」という相談だったら、その次どうするか?
  • ハラスメント行為を見かけたらどうするか?

どれも答えは一つではありませんが、「絶対NG」「望ましい」といった対応があるので、それを受講者に伝え、また、指導するときに気をつけてほしいことを伝えるのが研修の趣旨。

アンケート結果から

当社では、研修後にはアンケートをとることにしています。これは絶対にやったほうがいいです。

素直・前向きな方が多く、「話を聴くときに『手を止めてじっくり聴く』というのができていないことがあるので気をつけたい」といった正直なコメントや「『ハラスメントを受けたら記録を取る』というのは、牽制の意味でもすごくよかった」といったお褒めのコメントもいただき、難しいテーマながらやってよかったなと思います。

反対に、困るコメントとして、毎回のように「具体例が聞きたかった」というものがあります。いつも思うのですが、このコメントって話を聞いていない証左ではないでしょうか。

とりわけ、今回はハラスメントでしたので、「ここからハラスメント」という明確な線引きはできないということを1時間弱の講義で5回くらい伝えたし、それでもやはり何か判断材料を…と思い、「こういう言動は一回でもハラスメントになる可能性が高いですよ」「こういうことも回数を重ねることでハラスメントになりますよ」と10以上は紹介したのですが…

加えて、そもそも、「あなた方管理職は『ハラスメントかどうか』が対応の線引きではなくて、不適切行為があれば対処するべきなんですよ」という話まで一生懸命した後で、「ハラスメントの具体例が知りたかった」って…膝から崩れ落ちる思いです。そういうことをいう人は、「女性なら」みたいなステレオタイプ発言をしたり、部下が話をしているのに携帯をいじったり、みんなの前で罵倒したりしているのではないかと不安になります。

ハラスメント対応をしていることを示すべき

おそらく、「具体例が聞きたかった」の本心は、「どんな行為がハラスメントになるか」を知りたいのではなく、当社でハラスメントをしでかした人間がどうなったか?を知りたかったのだと思います。

しかし、「熱血指導のあまり手を出してしまって降格処分になった人がいます」「執拗に食事に誘って、指導を受けた人がいます」と知ってどうなるんでしょう?「指導だったらやってもいいか」とはならないはずなのに…

「具体例が聞きたい」というのは下衆な話ですが、一方で、そのまま社長に持って行ってやりたい気持ちに駆られたのは、「きちんと対処すべきだし、対処したことを公表すべきだ」という指摘。「誰」はさておき、「会社でこんな不適切行為が発覚し、会社はそれを許さない」というメッセージをしっかり出していくべきだと、私も考えます。

しかし、ハラスメントは、「ヒヤリハット」レベルで収めて公にしないということも往々にありますし、事を表に出したがらない「岩盤」もあるんですよね。。