Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

フィードバックし合いたい

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前回の記事では、外部専門家の弁護士にお願いしたいことを書きました。

legalxdesign.hatenablog.com


最近、複数の弁護士事務所のチームと同時並行でお仕事する機会があり、今回は、そこで感じたことを。前回の記事の続き、各論みたいな話ですが、弁護士の方にクライアントとの接し方を振り返っていただけるとうれしいです。

弁護士にお願いしたいコト

前回の記事では、弁護士にお願いしたいコトを複数書きましたが、そのうちの2つはこちらです。

  • 細部にもこだわる
  • クライアントからのフィードバックを積極的に求める

「当然だろ」と多くの弁護士が思ってくださっているだろうけど、クライアントは満足しているか、本心を聞いたことはありますか?

私は、率直に弁護士に質問したり要望を伝えたりするほうだと思います。「言わないと伝わらない」を信条にしているし、若いときに数百人の弁護士がいる中で仕事をしていて、弁護士に対するスペシャルなイメージが弱いのかもしれません*1。しかし、「そんなこととても言えない」と、弁護士に注文をつける人はそう多くないようです。

細部にこだわる

クライアントの心の内を知っていただくために、最近私が経験した残念な話を3つ。

相手方の名前を(ずっと)間違える

ひとつめは、うちの代理人が相手方やその代理人をお名前を(ずっと)間違えていたという話。

といっても、「高」と「髙」(はしごだか)のような、思わず間違えてしまうタイプのものです。私も社内あてのメールでうっかりやってしまうし、私自身も間違われやすい苗字で、間違われたとて平気ですが、その案件は法的手続も辞さない構えの紛争案件で、数億円がかかっていました。
そういう交渉なのに、相手方代理人の名前が間違っている!!代理人から確認依頼があった際、「形式的修正をして返すなんてイヤだな」と思いながらも修正してバックしたのに、相手方に送付するファックスの宛名ではまた間違えているし、一度ならまだしも、その後もずっと間違えたままやりとりしていた…

「誤字はもちろんダメだけど、なかでも相手の名前だけは間違えてはいけない」と、私は若手に言っているので、プロがこういうことをなさると、社内に示しがつかないんです。。私が相手方だったら、「この人たちの代理人のレベル低いな…」「この代理人、やる気あるのか?」と相手を軽んじてしまうかもしれません。

定義されない用語が出現 甲乙が逆

ふたつめは、契約書で、用語の定義がされていなかったり、甲乙が逆になっていたという話。

企図される取引を「本件株式譲渡」と定義しながら、途中で定義がない「本件取引」を使うとか、主体が逆になっているとかですね。所内の契約書をコピペしてドラフトされているでしょうから、そういうことが起きるのは致し方ないことですけれども。「読めばわかる」という問題ではないんです。クライアントや書面に対する姿勢の問題なんです。
AIが活躍するようになれば、こういうのはなくなるかな?

弁護士×PPTは相性悪い?

最後は、弁護士にPPTで資料作成をお願いすると残念な感じになったという話。これは、企業のPPT病のせいなので、弁護士を責めるのはお門違いなのですが、やめた方がいいなと思いつつ、やめられずに困っています。。
企業におけるクリエイティブ(視覚表現)の重要性の認識の高まりと、弁護士のそれの開きが大きくなっているのかなと。もちろん素敵な資料を作成される方もたくさんいらっしゃるでしょうが…

どういうことかというと、「文字が多すぎる」「文字しかない」「1チャート1メッセージでない」

一部の企業では、一周回って脱PPTの動きもあるし、いっそWordにすればいいのですが、当社ではまだまだPPTが健在。そこで、弁護士も頑張ってPPTで研修資料を作ってくださるのだけど、PPT慣れしている者には残念に映ってしまう。あと2週間早く草案をくだされば、こちらで作るのですが、弁護士ってお尻に火がつかないと頑張れない方が多いみたいです。

弁護士への意見は勇気がいる

これら残念な話をストレートに弁護士に伝えることは憚られます。たとえ誤字脱字でも、いや、そういう細かいことだからこそ、弁護士に意見をするのは、とてもハードルの高いことです。プロフェッショナルですからね。「何か意味があるのではないか?」と深読みしてしまったり。
おそらく多くの弁護士は、「もっと率直に意見を聞きたい」と思ってくださっているだろうし、実際そうおっしゃってくださるけれど、なかなか気を遣うものです。ある超大手企業の方は、「電話会議したいなんて言えない」とおっしゃっていましたし(代わりに言いましょうか?と喉元まで出かけました…)、私のボスも報酬の交渉は気が引けるようです。

フィードバックが大事

事務所時代のことですが、請求書のフォーマットが変わったことがありました。あるクライアントから、「結局いくら払ったらいいのかわからない」というご指摘を受けてのことでした。おっしゃっていただかなければ、所内では改善しにくいことだったと思います。

また、ある事務所では、定期的にクライアントにアンケートを取っていらっしゃるようです。当社はスポットでしかお願いしたことがないので、アンケートの経験も一度ですが、スピードやクオリティだけでなく、報酬を含めた満足度までお尋ねになっていました。全クライアントに対して実施している事務所は珍しいのではないでしょうか。

ここまでつらつらと、クライアント側からの不平を書いてしまいましたが、弁護士にもクライアントに対してご意見やご要望があると思います。たとえば、「毎回【至急】で依頼するのはやめてほしい」とか。

一般に、企業ではフィードバックを重視していて、私もチームのメンバーと年間最低6回は1on1をするのですが、弁護士-クライアント間でも、もっと対話の場があればいいですね。飲み会ではなく。

*1:自分が弁護士から質問されることも日常的だし、一緒にDDに参加するし、若手の弁護士が上司・先輩にしごかれているのも見てきた。