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大阪で働く法務パーソンのはなし

私たちはスペシャルなのか

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先週、LegalForce主催のイベントLegalForce Conference 2020を拝聴しました。

やたら(失礼)豪華な登壇者で、最近の出来事のおさらいができたり、モヤモヤを生じたり、勇気づけられたりするお話を伺うことができました。

経済産業省報告書の解説

拝聴したセッションのひとつは、ここでも何度も言及している経済産業省国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会〜令和時代に必要な法務機能・法務人材とは〜の解説。経済産業省が何度となく解説されていますが、ずっと聴きそびれていたのでようやく伺えました。

私の上司がこの報告書にある以下の図をものすごく気に入っていて、新たに法務に来るメンバーには必ず紹介するようになりました。ガーディアン以外で私たちにできることをうまく説明できるツールです。

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報告書P.7

少なくとも私の周りでひとり、この報告書で行動変容が起きた人がいることは素晴らしく、経済産業省に感謝したい。上司は、経営陣やグループ会社にも紹介してくれるほど、この図を使い倒しています。

セッションでもおっしゃっていたけれど、せっかく良い報告書ができたので、もっと周知されてほしいです。法務のイベントではよくお見かけするし、法務にできることってすごい!と、とても勇気づけられる内容だけど、自己満足で終わってはいけない問題ですから。法務の人たちは、自分たちを鼓舞してくれるこの報告書を放っておいても読むので、経営者や人事のほうに宣伝いただけたらと願っています。(その後、別のセッションで、プレゼンスの低さは、40年来指摘されたまま変わっていないという指摘を聞いてハッともする。)

それと、報告書でも指摘されていますが、リカレント教育の場が増えることにもとても期待しています。個人的には、もう少し法曹資格のハードルを下げるか、新しい資格(ソリシターみたいな?)を作るかして、なんとか働きながら学べたらいいのにと思う。カムバックする前提だから、会社がある程度保障すれば済む話かもしれませんが。

私たちはスペシャルなのか

伺ったセッションの中には、「もうそれはお腹いっぱいなんです」という話もありましたが、それも含めて感じたのは、

  • 法務は会社を救うすごい力を持っているのに、なぜ経営陣には伝わらないんだ!
  • 法務はスペシャルなスキルを持ち、自己研鑽にも励んでいるのに軽んじられている!(特に有資格者でない場合)

というような思いが、自分も含めて法務の人間にはどこかで燻っているのではないかということ。

経営陣や事業部門に重宝されるというビジョンを描いていて、そうでない現実とのギャップの埋め方がわからなくて途方に暮れたり足掻いたり、経済産業省にガツンと言ってもらって喜んだりしているのではないか。「ハンドルを握る経営者のビジネスのナビゲーターです」という法務のコピーも、もしかするとすごくおこがましい発想かも…

もちろん、この仕事に与えられた使命に誇りを持っているし、なんだかんだ言いながら多分他のどの仕事よりも好きで(長くやってるからそうなる)、良い意味でこの仕事はスペシャルだと思っています。ただ、法を武器に盾に、いざとなれば会社や事業を止めることができると特権的な意識を持ってしまっているかも、だから煙たがる人がいるのかも…というようなことを話を伺いながらつらつら考えてしまいました。

人事はヒトを、財務はカネを、経営企画は情報(とカネ)を、と経営資源を握っているから存在感を発揮できるのに、法務はそれがないという引け目かもしれません。

面白かった話

最後に、伺ったセッションの中でもっとも気に入ったお話をいくつか。いずれも、ZHD・ヤフーの法務部門の責任者である妹尾さんのお話です。妹尾さんご自身はMHM出身の弁護士でいらっしゃいますが、法務パーソンが有資格者であるかどうかに大きな違いはないと思うとおっしゃるところに勇気づけられています。

  • 「法務以外への異動にガッツポーズできるか?」という問いを投げかけらた
    部署にもよりますが、基本的には小躍りするほど喜んでしまいそう…法務と喧嘩するほど好き勝手にチャレンジしてみたい。
  • 「法務に止められたらどうしたらいいですか?」という視聴者からの質問に、「上にチクる」とお答えになった
    私も激しく同意。本当に止めるべきケースなら、法務は相手が誰でもきちんと説明するはずだし、適当なことを言ったならどやされればいい。
    ただし、「本当に法務の問題か?」を考えてみましょうともおっしゃっていました。
  • 経営陣とのコミュニケーションはSlack
    道のりは遠いな…と思いました。笑

優等生の話ばかり聞くのはもうお腹がいっぱいなので(真似のしようがないことも多い。予算とか。)、次はもっと泥臭い話を期待。登壇者の所属先が許さないかな。