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大阪で働く法務パーソンのはなし

何ができたら昇格か

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当社の昇格は、年に一度、春に行われます。そのための試験は毎年秋にあり、夏の終わりに各部から、試験を受けさせるための申請を人事に行います。
そして今年、チームのメンバーにこの試験を受けさせるために、推薦理由を書くことになりました。

うまく書けない

対象となるメンバーはとても優秀で、ぜひ昇格試験を受けてほしいと、推薦理由を書くことを喜んで引き受けたものの、いざ書こうとすると筆が止まりました。

当社の場合、推薦理由として、能力、資質、将来性、人物像などを書くことになっているのですが、一体何を書けば良いのだろう?
今回のメンバーは、いわばジュニアからシニアに上がろうとしています。この昇格にふさわしい能力や資質、将来性ってなんでしょうか。
最初、「法務業務を一通り遂行するために必要な知識を備えている」と書いてみたのですが、法務経験が5年足らずの社員でそれは言い過ぎではないか、次にシニアから初級管理職に上がるときに困るのではないかと考え、書き直すことに。
そもそも、どんな知識があれば「法務業務を一通り遂行するために必要な知識を備えている」と言えるか、自信がありませんし。そんなもの、私だって持ってないかもしれません。。

結局、「うまくリソースを使える」「正しく優先順位を付けて処理できる」というようなことを書いて出したのですが、今思うとメンバーの能力や資質をきちんと人事に伝えられただろうか?と不安です。まぁ、「推薦理由が至らない」という理由で昇格試験が受けられなかった人は聞いたことがないので、大丈夫とは思いますが。

法務パーソンのRequirementsを見える化

そもそも、当社の法務は、専門職でなく総合職採用なので、将来も法務をするとは限りません。人事が明示する昇格要件も、「法務業務がこれだけできるから」ではなく「社会人力がどれだけあるか」が基準になっています。
オフィシャルなスキルマップも用意されていますが、全職種共通のものなので、法務に焦点を当てると正直物足りません。たとえば、ジュニアからシニアへの昇格要件のひとつは「非定型業務を上司の指示の下で行える」なのですが、法務業務は9割以上が非定型業務で、ルーキーから担当します。こんな具合で具体性に欠け、私やメンバーが目安にするには心もとないものです。

そこで、私のチームでは、経産省の国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会が公表した経営法務人材スキルマップをベースに自社の役職に合わせたスキルマップを作って、メンバーに渡しています。
プレイヤーとしては、1年目(ルーキー)、ジュニア、シニア、シニア超と4タイプに、管理職も初中級と部門長の2種類に分けています。目安にしたい資格や業務も示し、「これができたらシニアだね」という感じで定期的にフィードバックするのにも使っており、私自身も一人一人の現在地を確認するのに役立てています。

お手本があるから当然ではありますが、我ながらよくできていて、それぞれの能力差がある程度見える化できるので、若い法務部員を抱える方は、経営法務人材スキルマップを自社用にアレンジされてはいかがと思います(先日のLFCでも勧めている法務部長さんがいらっしゃいました)。

アレンジの具体例

たとえば、経営法務人材スキルマップでは、「企業人としての基本的能力」として「事務処理力」を挙げ、次のように定義しています。

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経営法務人材スキルマップ

当社の場合、これを次のようにアレンジしています。

  • ルーキー
    指示された期限までに指示内容を処理できる
    (そうできる量しか仕事を振らない前提です)
  • ジュニア
    上長と相談しながら自らのスケジュールを立案・調整し、上長の進捗確認を受けながら正確かつスピーディに処理できる
  • シニア
    主体的に自らのスケジュールを立案・調整し、これを正確かつスピーディに処理できる
    ※経営法務人材スキルマップの「スタッフ」のデフォルト
  • シニア超
    担当する案件の進捗に影響する関係者の進捗にも配慮してスケジュールの立案・調整し、これを正確かつスピーディに処理できる。
    ※経営法務人材スキルマップの「プロフェッショナル」のデフォルト
  • 初中級管理職
    自らスケジュールの立案・調整・処理が行えるだけでなく、部下に適切かつ迅速に指示できる
    ※経営法務人材スキルマップの「マネジメント」のデフォルト
  • 部門長
    優先順位をつけて、会社全体の案件の進捗に目を配り、指示を出すことができる
    ※経営法務人材スキルマップの「GC、CLO、法務出身CEOなど」のデフォルト

「事務処理力」だけを取り上げると、シニアにもなれば、初中級管理職レベルの事務処理力を備えていることが多いです。私としては、各レベルで求められるすべての要件のうち8割方クリアできたらそのレベルへの昇格にチャレンジさせるという感覚を持っており、「ここはもう今で十分だね」というようなことが言えるというわけです。

最近の私の悩みは、会社がやたらポストを増やし、等級が7段階になってしまっていること。ルーキーは法務で勝手に作ったレーヤーなので、真面目にやろうとすると、スキルマップを8段階に分けるために、あと2つレーヤーを増やす必要が出てきます。はい、やる気ありません…

これからどうする?

正解のないことですし、経営法友会も経済産業省も色々開陳してくださってとてもありがたいですが、こういう話はもう少しざっくばらんに他社さんとお話ができてもいいかなと考えています。
そこで、知り合いの法務部門に当社のスキルマップをお見せしてみることに。少しでもお役立ていただけたらうれしいです。