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大阪で働く法務パーソンのはなし

社内規程のメンテナンス

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河野行政改革担当大臣が、「行政改革目安箱(縦割り110番)」を設置されました。総理の発言があった翌日には設置され、設置2時間で700通を超え、翌日には4,000通までになり、好評すぎて中断することになったという。ぜひ、良い意見がたくさん大臣に届きますように。

私も何かあれば投稿したいところですが、「大臣の耳に入れねば!」ということが思い当たらず…代わりに、当社に縦割り110番が設置されたら投書したいことを。それは、社内規程のメンテナンスについて。

社内規程のメンテ

私は、これまで3か所で働いてきました。

新卒で入社したのは法律事務所。私も若かったし、社内規程とは、DD時に確認するものであって、自分と関係があるものという認識はありませんでした。だから、どのようにメンテされていたのかもまったく知りませんが、就業規則などは、全員が見ることのできる掲示板的なところに貼られていて、見ることはできるが印刷はできない、というちょっと意地悪なやり方だったことはしっかり覚えています。さすがに、今はそんなことしていないと思いますが。

続いて働いたのは、当時急成長を遂げていたサービス業。「いけいけどんどん」で事業を拡大していて、常にてんやわんやだったけれど、なぜか内部統制はすごくしっかりしていて*1、今振り返っても、社内規程のメンテナンスは素晴らしかったです。

そして現在。オールドエコノミーに分類される製造業。それなりに歴史もあるので、ちょっと縦割り感があります。「決める人」をちゃんと決めているとも言えますが、細分化しすぎ。社内規程でいえば、内容を起案する部門、経営会議や取締役会に付議する部門、規程を保管・周知する部門が全部違って、お見合いが起きやすく、最新の規程はどれ?ということがあったりします。

規程整備のための委員会活動

では、素晴らしかった社内規程のメンテ方法とは。

中心的役割は、規程整備委員会なる委員会活動で、原則として月に1回ありました。常時のメンバーは、総務(法務)、経理、情報システム、内部監査の各部門(しかも原則部長クラスまで参加)。規程は、主管部門が決まっているので、規程を作ったり変えたりしたいという部門は、それを委員会に上程し、常時のメンバーと検討を重ねて内容を固めます*2。内容が固まれば、委員会の事務局である総務で稟議を申請したり、取締役会に諮ったりして、決裁・決議後に総務が共有フォルダに掲示します。

委員会活動を除けば、おそらく多くの企業が似たようなフローをとっていると思われますが、この委員会が設置されていることで、中身の質が格段に上がっていたと思います。情シスや内部監査までが意見してくれるって、少なくとも今の会社では考えられません。法務ですらほとんど見ることがありませんから。

さらに素晴らしかったのは、定期的に業務分掌規程や職務権限規程を見直すことになっていたことです。変化がないと思っていても、改めて見ると追加や変更をしたほうがいいと思える部分があったりします。ここまでできている企業はどれほどあるのだろう。

今振り返っても、あの忙しさでよくやっていたなと思います。

最新の規程が掲示されていない

先日、よその会社の方と規程のメンテフローについて話をしたのですが、その会社さんでは、以下のようなフローをたどるとのことでした。

主管部門(規程ごとに決まっている)が起案
 ↓
総務で稟議・付議
 ↓
決裁・承認
 ↓
総務が保管・周知

おそらく、一般的な流れだと思います。ここでは、各部門からの改定の受付・付議に総務が入ることで漏れがなくなる。一方、当社は以下のとおり。

主管部門(規程ごとに決まっている)が起案
 ↓
経営企画部門が付議
 ↓
決裁・承認
 ↓
総務部門が保管・周知

総務は、経営会議や取締役会に参加しないし、議案名だけでは規程の改定とわからないトラップが仕掛けられることもあり、誰かが総務に「規程変わるよ」と伝達しなければ、総務は規程改定に気づけません。総務が気づけないと、社員も知ることができない。

加えて、当社では、規程の主管部門は規程本文に記載されており、本来、業務分掌が変わって主管部門が変われば規程を変更すべきところ、「面倒くさい」という理由で「それは読み替えで対応する」と規程管理規程に定められています。結果、見かけの主管部門と本当の主管部門がズレてしまい、お見合い現象が起きることも(ただいま個人情報で発生中…)。

ルールは少なく、しっかりメンテしよう

これで終わるとただの会社の悪口になってしまうので…

組織として動く以上、一定の内部統制が必要で、そのためには規程が必要というのは論をまたないことです。でもそのルールは、VUCAと言われる今の時代、臨機応変さが求められ、できるだけ数を減らして、代わりに見直す回数を増やしたほうがいいと考えています。

さらに進んで、ルール作りは、すなわち組織作りだから、いっそデザインセンターを作って、そこでルールも含めて全部デザインしたらいいんじゃないか。デザイン思考やデザイン経営をかじるとそんなことを考えてしまいます。

*1:内部統制を構築された責任者がめちゃくちゃ有能な方でした

*2:たまに数時間にわたる回があり、とても大変そうでした