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大阪で働く法務パーソンのはなし

感染者発生 そのとき我が社は

 

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少し前のこと、ついに当社でもコロナウイルスの感染者が発生しました。
もっと騒々しくなるかと思いましたが意外と淡々としたものでした。
今日は、その備忘のための記録。

休日に一報

休日、会社の携帯にメールが届きました。「××さん、陽性でした。」と。
当社では、PCR検査を受けた場合には、総務に一報を入れるようになっているのですが、この従業員は、PCR検査ではない方法で陽性が判明。ハラハラすることも、準備することもできませんでした。

感染判明後は、入居するビルに連絡→確認翌日に消毒 とここまでは迅速。少し時間がかかったのは、陽性者の入院と濃厚接触者の特定です。

軽症・単身ということもあってか、感染が判明してから2日間は自宅療養し、その後に入院。大事に至らなくてよかったのですが、ひとりだからこそ、自宅療養は危険ではないかとも思います。
その後の保健所のヒアリングの結果、従業員に濃厚接触者はないという判断だったのですが、感染確認からこの判断を得るまでに数日要したことで、危機対応チームやや迷走しました。

錯綜する指示

当社では、テレワークを推進していますし、原則としてオフィスではマスクをするように指導しています。本人へのヒアリングでも接触した人は限定だったので、保健所の判断が出る前から濃厚接触者はゼロに近いと見込んでいましたが、そうは言っても誰が認定されるかわかりません。

保健所の判断より先に就業日が来てしまうので、感染判明直後、危機対応チームは「向こう2週間は原則出社禁止」という指示をすることに。
ところが、指示を出した翌日、「おたくに濃厚接触者はいません」という保健所の判断を得て、「じゃ、通常に戻しましょう」ということになり、「2週間出社するな」という指示が出たのも束の間、「出社禁止は撤回します」という新たな指示が出ました。「そんなのわざわざ撤回しなくていいでしょ」と、複数からツッコミがあったことは言うまでもありません(現に、私のチームはみんな2週間在宅勤務にしました。)。

要配慮個人情報です

当社は大きな会社ではないので、数週間も療養する従業員がいれば、あっという間に誰が感染したか広まると思うのですが、感染は、要配慮個人情報に当たります。
たまたま発生の少し前に、コロナ対応の勉強会を弁護士とする機会があり、「感染した事実はくれぐれも慎重に扱うように」と釘を刺されていたので、人事からは、「目星がついても口にするな!」という指令が部門長に出されていました。危機対応チームの対策打ち合わせで、みんな誰が感染しているかわかっていても、誰も「××さん」とは言わなくて、我が社ってこういうところは律儀に守るな…と感心しました。
事前に弁護士が危機対応チームに釘を刺しておいてくれたことはとても良かったと思います。

完全フリーアドレスは危険?

ソーシャルディスタンスが不可欠ということで、パンデミック後、当社では、これまでの座席を活用し、「対面左右をひとつあける」というにわかフリーアドレスが誕生しました。
これで急場をしのいでいるのですが、応急措置を改めるべく、感染判明前にレイアウト変更の検討を開始していました。

毎日出社する人がいなくなったので、固定席は不要。より魅力的なオフィスにすべく、開放感も重視して、完全フリーアドレスにしよう!という案もありましたが、感染者発生を受けて一気にトーンダウン。完全フリーアドレスにすると、行動範囲が広がる=濃厚接触者を増やす可能性があるためだそうです。私の経験上、完全フリーアドレスは椅子取りゲーム化し、よほどスペースに余裕がない限りいい案とは思わないので、よかったよかった。

感染が発生しましたが、お越しになりますか?

もうひとつ、対応の検討が必要だったこと。来客をどうするか?

当初、「原則出社禁止」という御触れを出したので、「不要不急の来客は控えてもらうように」という指示だったのですが、御触れの撤回により、「感染が発生しましたが、問題ありませんか?」と聞くようにという指示になりました。当然と言えば当然です。
ちなみに、入居するビルからは、感染者が発生した旨のリリースを出すのであれば、ビルの名前を出すかどうか事前に相談するようにという依頼も。ビルもセンシティブになっているのですね(とはいえ、入居ビルではすでに2桁の感染者が発生しているのですけども…)。

取引先に感染者が発生したことをお知らせすると、意外にも、「問題ないです」という企業が多いそうです。数ヶ月前なら、来訪を控えるところが多かったんでしょうけども。

当社も、半年前は、「もし発生したらどうしよう?」とかなり念入りにマニュアルを作ったりしましたが、いざ発生すると、従業員の混乱もありませんでした。マニュアル通りに動けたのかは定かではありませんが、平時に準備していたことは良かったと思います。