Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

内部通報対応どうしてる?

f:id:itotanu:20201003235518p:plain

先月の経営法友会の会報誌(9月号)の記事のひとつに、「関西内部通報実務研究会を終えて」という、内部通報制度を取り上げたものがあります。他社の内部通報のことを知る機会は滅多にないし、参加したかった研究会でもあったので、興味深く拝読しました。

社内でも知る人ぞ知る内部通報

一定規模の企業には、内部通報制度が整備されているものの、その実情を知る社員は極めて限られるはず。
我が社でも、以下のすべてを知っている人は、おそらく片手もいません。担当者である私でもわからないことがあるほど…

  • 誰が受けているのか
  • 誰がどのように対応方針を決めているのか
  • 誰が調査しているのか
  • どんな顛末になるのか
  • 誰がいつ社長などに報告し、記録しているのか

ちなみに、当社では、業務分掌上は法務に内部通報がありますが、実際の対応は部署の垣根を越えたチームで対応しています。悪く言えば、属人化しておりますね…

どの会社も「とほほ通報」の扱いに困る

内部通報の本来的な目的は、会社の不正を正すことであり、職場環境や人間関係といった個人的な悩みは原則的には対象外です。記事ではこれらを「とほほ通報」と形容していますが、「通報制度の信頼性(通報のしやすさ)、会社としての姿勢(問題の早期発見・是正の有効なツール)を示す意味でも、基本的に『とほほ通報』も除外せず受け付け、通報内容を精査し、しかるべき対応をしている会社がほとんど」だったそうです。

当社はというと、「とほほ通報」とされるものはあまりありませんが、ひとまず話を聞き、可能な範囲で事実確認もして対応します。また、匿名の案件は、通報内容が具体的であれば、可能な範囲で裏どりをしますが、中には「上司のパワハラがひどい」というだけの申し出で、手のつけようがないことも多いです。誹謗中傷的なものも含め、こういったケースは「非正規」案件として記録しています。「非正規」と「正規」の違いは何だ?という話ですが、これは社長らに詳細を報告するかどうかで分かれます。

問題意識はグローバル対応

記事によれば、内部通報制度の問題意識としてあがっていたのは、内部通報制度のグローバル対応とのこと。当社も、どうしたものかと考えつつ、のらりくらりやっています…もちろん、日本の本社に通報があれば受け付けるのですが、中国は通報内容によっては通報行為が犯罪になりかねないという噂を耳にしたことがあるし、ロシアも個人情報の海外持ち出しは本人の同意が必要とのことで、ロシア語対応を依頼しようとした内部通報の外部サービス事業者から断られた経験があります。
よって、理想的には、各地域に内部通報窓口を設置するのがよいのですが、なかなか難しいところがありますよね。ある海外子会社は、「トップ直通のホットラインを用意しており、これが内部通報だ!」というけれど、トップの不正はどこに通報すればいいの?という話です。

記事では、研究会参加企業では、各国対応の会社と日本本社で集約している会社が半々くらいとのこと。一元化を目指している企業が多いそうですが、各国の法規制への対応はどうお考えなのか、興味を持ちました。「集約」というのは、個人情報を削除した上で、「こんな通報があり、こう対処しました」という情報を集約するという意味なのかもしれませんが。

通報窓口を日本に集約するという意味であれば、個人情報等の問題もあるし、日本本社に通報が来ても、まさに現在なんかは現地調査に行くこともできず、調査に限界があるので、それはちょっと難しそうです。実効性を追求するならば、現地の弁護士事務所に依頼するのがベストプラクティスなのでしょうが、問題はコストですねぇ…

担当者教育も課題だが、そもそも誰がやる?

課題のひとつとして、記事では担当者教育もあがっていました。私も教育を受けたいです。クレーム対応の講座などはたまにありますが、内部通報対応の講座ってどこかにあるのかな?コーチングとか傾聴を学べという話でしょうか。

そもそも、誰に担当させるか?という問題もあります。当社では、機密情報の取扱いに慣れた=法務や総務の管理職または管理職経験者(役職定年者)が担っていますが、企業によっては非管理職に担当させるところも(経営法友会の「企業法務入門テキスト」でも新人が調査に参加していました)。

個人的には、受付や調査は非管理職が担当してもよいのでは?とも思うのですが、通報者とのやりとりは基本的に最初に通報を受けた担当者が担い、どうしても業務時間外の連絡が多くなってしまいます。当社が、担当者を極めて限定しているのは、そういったところの配慮だと善意に解釈する私。