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大阪で働く法務パーソンのはなし

六法どれにする?

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少し前、ある関西ローカルの番組で、「最近の弁護士の多くは、文献調査をインターネット上でするため、事務所に書籍は必要ない。事務所(クライアント向けの応接室)の雰囲気を作るためだけに、判例集などの背表紙だけが売っていたりする。」という趣旨の弁護士の発言を聞きました。そんな商売があるのですね。

リサーチがオンラインでできるようになるのはとても好ましいですが、まだまだアナログな私には、よく参照する法令は紙でないと困ります。ですので、六法は、会社と家の2冊持ちです。

そもそも紙である必要があるのか

インターネット環境があればeGov法令検索が使えますし、最近は有料・無料のアプリもたくさんあるみたいなので、そもそも書籍としての六法は不要ではないか?というご意見もあると思います。事実、私も、六法に収載されていない法令を確認するのに、毎日のようにeGovのお世話になっています。

elaws.e-gov.go.jp

しかし、私は新人時代、わからないことを質問したら、いつも一緒に六法(と、そこに線)を引いてくれる諸先輩方の中で育ちました。一番トップの先輩(上司)の六法も、一年が終わる頃には手垢でちょっと黒く、ふにゃっとなっているページがいくつもあり、それを見た私は、「あれくらい六法を使い倒さないと、一人前になれないんだな。来年こそ、もっといっぱい手垢まみれにしてやる」と誓ったものです。六法を汚すことを目標にするのは間違いなのですが、それくらい、条文に当たることの重要性をみんなが背中で教えてくれました。

そんな教育を受けていたので、「何回でも六法を引け。六法には線を引け」という刷り込みが強く*1、私は、ついつい主体や要件に線を引くクセがついてしまい、アプリやeGovでの検索だとどうも定着率・理解率が悪く、紙の六法が欠かせません。そして、毎年同じ条文に同じように線を引きます…

自分がそういう性分なので、メンバーにも、会社用と家用に、毎年2冊の六法を購入することを認めています。

六法の選択肢

では、どの六法が良いでしょうか。証券六法や知財六法のような分野別のものを除くとして、選択肢は以下のようなところでしょうか。要は、有斐閣三省堂かという違い。

【分厚さMAX:価格:6,000円〜】

www.yuhikaku.co.jp

模範六法2021 令和3年版

模範六法2021 令和3年版

  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 単行本
 

 

有斐閣判例六法Professional 令和3年版

有斐閣判例六法Professional 令和3年版

  • 発売日: 2020/11/20
  • メディア: 単行本
 

 

【分厚さMID:3,000円〜4,000円】

 

有斐閣判例六法 令和3年版

有斐閣判例六法 令和3年版

  • 発売日: 2020/10/16
  • メディア: 単行本
 

 

判例付き法務六法2021 令和3年版

判例付き法務六法2021 令和3年版

  • 発売日: 2020/10/13
  • メディア: 単行本
 

 

【分厚さMIN:2,000円程度】

 

ポケット六法 令和3年版

ポケット六法 令和3年版

  • 発売日: 2020/09/18
  • メディア: 単行本
 

 

デイリー六法2021 令和3年版

デイリー六法2021 令和3年版

  • 発売日: 2020/09/24
  • メディア: 単行本
 

私は「判例六法Professional」と「ポケット六法」

同じ価格クラスであれば、普通の法務パーソンが使う分には収録法令に有意な差は(多分)ないので、メンバーには、好きなものを選んでもらっています(「六法全書」は実用に向かないため対象外)。

私は、今年用には、「判例六法Professional」と「ポケット六法」を選びました。「判例六法Professional」は分冊になっていて、②があれば日常のおおよその業務が事足るので、手に取りやすさで選んでいます(①が必要になるのは、個人情報の業務のときくらい)。こちらは在宅勤務用。

判例六法Professional」を2冊買うのはなんとなく気が引けて*2、昨年は、「判例六法Professional」を会社用にして、「模範小六法」を在宅勤務用にしていました。しかし、会社にいるときに落ち着いて仕事をすることはあまりなかったので、今年は、分厚いほうを在宅勤務用にします。 

模範小六法2020 令和2年版

模範小六法2020 令和2年版

  • 発売日: 2019/10/12
  • メディア: 単行本
 

「模範小六法」もコンパクトながら重要判例が盛り込まれていて、今年もこれにしようかと思ったら、なんと昨年で刊行中止となっていました。 となれば、同じクラスだと「判例六法」になるのですが、Professionalを買った手前なんとなく重複する気がしてしまい、それなら判例は捨てて、法令数をとろうと、大学生以来久しぶりに「ポケット六法」を購入しました。「模範小六法」や「判例六法」には、商標法が載っていなくて残念に思っていたのですが、「ポケット六法」だと載っているので助かります◎こちらは会社用に。

ちなみに、「模範小六法」の後継と言わんばかりに、三省堂さんからは上述の「法務六法」なる新しい六法が出版されています。その帯には、「法律実務家のニーズに応える判例付き携帯六法」とあり、期待に胸膨らませて手にとってみたのですが、不正競争防止法を除き、知財法が一切収録されておらず、あえなく対象外に。「法務六法」なので、法務パーソンまでターゲットになっていて、自分はその標準的な一人と思っていたのですが、違うのかな…著作権法も載っていないので、どういう購入者を想定されたのか謎です。手形・小切手法や農地法よりも参照頻度高そうなのに。*3

六法は汚してOK 使い倒す ただし毎年買い換えること

私は、新しい六法が手元に届いたら、よく参照する法令には耳をつけてスタンバイさせます。そして、上述のとおり、何かあれば極力条文にあたり、線を引く。これを毎年繰り返しています。
ちなみに、線を引くときは、裏うつりが気にならないネオンピツを愛用中。

こうして、ちょっと開き気味になり、ところどころ手垢で黒い筋が入った六法を年末に眺めて満足&感謝しています。
最近のアプリだと、マークアップ可能なものもあるというので、いずれはそちらに移行するのかもしれないけれど、当面は紙派を継続予定です。

*1:もちろん書き込んでもいいのですが、書き込みのある六法は試験では持ち込み不可だったので、書き込みしない癖がついてしまっているようです。

*2:会社の経費がかさむという懸念もさることながら、同じものを2つ買うというところに抵抗を感じてしまう…ケチ性?

*3:ちなみに、景品表示法や下請法も収録されていません。収録法令一覧より。