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大阪で働く法務パーソンのはなし

法律事務所への相見積もりは必要か

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「仕事に好き嫌いの感情を持ち込むべからず」という信条で仕事をしているのですが、どうにも気が進まない仕事があります。それは、「相見積もりをかけた後のお断り連絡」です。本当に気が重く、「そういうことをしなくていいから法務の仕事を選んだのに…」とさえ思ってしまうこともあります。

お願いできる事務所はひとつ

法務(私)が率先して相見積もりを取らないといけないのは、今のところ、M&Aのような大きな案件の法務アドバイザーを選ぶときくらいです。ですので、当たり前ですが、複数からお見積もりをもらっても、お願いできる事務所はひとつだけで、そのほかにはお断りの連絡をしなければなりません。

結局は価格

アドバイザーで相見積もりを依頼するとき、価格以外にも、類似案件のご経験などをお尋ねさせていただくのですが、結局価格で決まることがほとんどです。1円でも安ければそこにしよう、みたいな感覚の人も多いです。

「1円でも安いところにしよう」という意見に、私はなかなか反論することができません。なぜなら、そもそも、その案件でお仕事をご一緒したいと思う法律事務所・弁護士にしか声をかけていないからです。もちろん、他方は類似案件の経験が豊富で、もう片方はほぼ経験がないとなれば、それは経験のある方にお願いしようと進言すると思います。しかし、一定規模以上の事務所で、私たちがするようなM&Aの経験がほとんどないということは滅多にありません。本当に新しいことをするなら、どの事務所も前例がないはずですし。

よって、結局は価格で決まるのが現実です。

どう断る?

ある法律事務所を選んだら、他の法律事務所にはお断りの連絡をしなければなりません。これ、みなさんどうされているのか教えてほしいです。。

まず、手段。メール?電話?わざわざ訪問して断るということはないですよね。先生方の時間を無駄にしてしまうし…
社員採用だったら、合格が電話で不合格がメールというのが一般的だと思いますが、法律事務所の場合は今後のお付き合いもあるので、さすがにメール一本というのも気が引けます。

そこで、私の場合は、今のところ両方とも電話を使っています。お願いのときは、その後のスケジュール感などお伝えしたいこともあるので、電話のほうが手っ取り早い。お断りは、どのようなメールを打つか考えているといたずらに時間が過ぎてしまうので、腹を決めて電話します。想像するだけで気が重いです。

どう説明する?

お断りの連絡をいれたとき、あまり深くお尋ねにならない先生もいらっしゃいますが、気心が知れていれば「どこがポイントでしたか?」と聞かれるのは当然です。私は嘘が得意でないので、「価格でした」と正直に言ってしまうのですが、こちらもみなさんはどうされているのでしょうか。。

冷静に考えて、当社の新規の仕事が受注できなかったからといって、先生方に大きな問題はありません。もしかしたら、「忙しいときに案件重ならなくて助かった!」と思われる方もいるかもしれません。事実、私は「こんなに忙しいのにさらに案件降ってきたらどうしよう」と思ったことがあります。だから、お断りの連絡をするときは、「うちが断ったくらいで先生方は何ともない。思い出せ事務所時代」と言い聞かせています。それでも気が重いのに変わりはありませんが…

既知の弁護士と久しぶりにお目にかかったりすると、「見積もりだけでいいから取らせて」と営業いただくこともあるのですが、お断りするのがとても苦手なので、起用可能性が低いところにはお声をかけることはしていません…すみません。。損をしているのかもしれないけれど。

相見積もりは本当に必要か 

過去にこんな記事を書いて、「大きな案件だったら相見積もり取らないとダメでしょう!」と言っていたのですが(購買だと相見積もりを取ることが社内ルール)、最近は、本当に相見積もりは必要か?という気持ちが大きくなっています。

legalxdesign.hatenablog.com

なぜか。

  • 見積依頼する事務所=お仕事をご一緒したい事務所=どこでも文句なし
  • 当社が通常依頼する案件は、そんなに特殊性がなく事務所による経験値の差が小さい
  • 価格もそれほど大きく違わないし、案件次第で変動する
  • 結局、どこの事務所とも疎遠になりすぎないようローテで仕事を頼んでいる

というような理由です。もう、「今回はここにしよう!」と決め打ちでいいんじゃないかと思っています。もちろん、コンフリクトに備えて複数のあてを持っておかないといけませんが。

もし、どこの事務所にすべきか決めかねるような難しい案件があれば、たとえば5万円とか10万円とかお支払いして、簡単な見解とともに見積も提示してもらうとかがいいかもしれません。お断りされれば、その案件についてはそれまでの事務所と見切りをつける。

案件に応じて先生方は細かく見積もってくださるので、それを無償で作らせておいてお断りするの、私は心苦しくて本当に苦手です…