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大阪で働く法務パーソンのはなし

転売ヤーとの戦い

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消費財を扱っているので、自社商品は常に意図しない転売にさらされています。
CtoCのECサイトが不正転売(むしろ犯罪)を助長していると考えるのですが、「我関せず」を貫かれ、どの企業も有効な打ち手がないようです。

クレジットカードの不正利用が…企業はチャージバックで泣き寝入り

先日、クレジットカードの不正利用が発覚しました。被害者がカード会社に申し出て判明したものです。一報を受けて調査したところ、どうやら数百万円の不正利用があった模様です。

3年前に改正された割賦販売法の影響もあって、通信販売を行う一般的な企業は、カード情報の非保持化にシフトしているはずです。結果、クレジットカードの名義人を確認できません。つまり、被害者がどなたかも知ることができないのです。

もっとも、被害者は気づいた時点でカード会社に連絡すれば、その分の支払は免除されて金銭的被害は受けないのが普通です。そして、詐取の損害を被るのはクレジットカード会社…ではなく、加盟店。クレジットカード会社は、不正利用された分の支払を拒否し、もし支払済であれば返還を要求します(次回以降の支払と相殺)。さすが、天下のクレジットカード会社です。。

その世界でない人には理解しがたい慣習(契約)ですが、当たり前すぎてクレジットカード会社にチャレンジしようということにはならず*1JADMA団体保険を提供してくれるほど。

一般企業では調査に限界

企業のECサイトでは、顧客がサイト上で自分の個人情報を入力して発注を行い、企業が商品を出荷します。対面でもないし、上記のとおりクレジットカード番号や名義も確認できないので、企業は本人確認手段がありません。

「それでも、商品を発送するのだから、名前と送付先はわかるでしょ?」と思われたかもしれません。しかし、EC担当者によれば、被害額が大きくなる悪質なケースは発送後に受け取り手段を変えるようです。ロッカー受け取りとか、ああいう方法ですね。

ダメ元で送付先の地図や登記簿も見てみますが、実態はつかめません…IPアドレスはとっていますが、(当然)外国でこちらも手がかりなし。
クレジットカード会社も、被害者はわかっても犯人はわからないので、クレジットカードの不正利用は、一般企業には打つ手がありません。

となると、警察の力を借りるしかないのですが、警察も暇じゃない。あまり歓迎されません…端的に言えば「もっとやることやってから来て」というのが本音みたい。
「やること」ってなんだ??弁護士の力を借りるといったって、どこに職務上請求や弁護士会照会をかければよいのか。

当社は、別の事業で(非行)少年によるいたずらの被害を受けやすいのですが、そちらは被害数万円でも被害届をすんなり受理してくれることが多いのに。。*2

CtoCサイトは犯罪の「疑い」だけでは「我関せず」

クレジットカードの不正利用で詐取した商品は、CtoCで販売されることが多いようです。サイトを見れば、「いかにも怪しい」という出品者がすぐ見つかります。個人が販売する常識的な量を超えているので。

当社のサイトでは、転売目的での購入を禁止しており、Amazonなんかはわりとすぐに対応してくれて、出品者もすぐに取り下げてくれるようなのですが、CtoCはそうではない。
「うちはプラットフォームなんで」と一貫した姿勢です。もちろん、盗品の売買はできないし、詐取された商品と立証できれば停止してくれるでしょうが、「限りなくあやしい」というレベルでは、何にもしない。それを非難することは難しいけれど、通常1個単位で購入するものが数十、数百の単位で定価以下で販売されているなんて、異常でしょう?

ユーザーも、新品未使用の商品が大量に出品され、市場価格より安い際には、理由があると疑ってください。

システム投資しか解決策はないのか?

企業と転売ヤーはいたちごっこです。ブラックリストを作ったところで、すぐに新しいユーザーになって同じことを繰り返す。
ある程度はやむを得ないと覚悟するものの、やはりクレジットカードの不正利用は被害額も大きくなりがちなので困ります。

そこで、どんな対策が打てるか?と考えるのですが、今すぐできる打ち手は、利用金額の上限を設けることでした。でも、それでは普通のお客様にも迷惑をかけてしまいます…

システムを改修して、

  • 同じ顧客からの連日の注文にはアラートを出す
  • 違うIDでも送付先が同じ場合にはアラートを出す
  • 違う住所でも、実質的に一緒ならアラートを出す(例:「1番1号」と「1-1」)

といった機能を付加することも考えられますが(大手なら当たり前かも…)、色んな事情で「普通」の顧客も当てはまる例があるでしょう。結局目視チェックなどが必要になって、手間がかかることもあり及び腰になります。

JADMAはかなり大きな組織なので、もっとみんなで対策を考えたり、共有したりできないかと思うのですが、自社がその輪に入っていないだけなのかな。。

*1:厳密には、加盟店が本人確認を十分行ったことを立証すればチャージバックにならないそうですが、なかなか難しいらしい。

*2:捜査してくれるかは別の問題ですが、犯人が見つかって、犯人側代理人に言われるがまま?寛恕の文言を付して示談成立になることも多いです。