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大阪で働く法務パーソンのはなし

代表者の副業(兼職)

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従業員に副業を認める企業が増えています。当社もそのひとつ。
起業する人もいれば、家業を手伝う人、Uber配達員をやる人、ファーストフード店でバイトする人など、意外とバリエーションがあります。

役員の場合は、従業員兼務でない限り、従来から副業(兼職)が認められています。社外役員の場合、自社が「副業先」であることがむしろ普通です。

では、企業の代表者がグループ企業以外の企業や団体の役員・代表者を兼務することは許されるのでしょうか。

企業の代表者による兼職は原則可能

結論を先に言えば、「原則は許される」です。会社経営者でありながら公職につく方もいらっしゃるくらいですし。
もう少しちゃんとみると、会社法には禁じる規定がありませんし、「重要な兼職の状況」を事業報告の記載事項にしているくらい想定内のことです。

ただし、公務員は基本的に法律で副業が禁止されているので、代表者が公務員になるときは辞任しなければなりません。

競合企業に行くなら取締役会の承認が必要

では、公務員でなければどこでも無条件に副業できるか?といえばそうでもありません。

「自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき」には取締役会(又は株主総会)の承認が必要です(会社法356条1項1号、365条1項)。そして、取締役会設置会社であれば、取引後遅滞なく、取引についての重要な事実を報告することとされています(会社法365条2項)。

ライバル企業の役員を招聘するところなんてあるのか?と思いますが、私は見たことがあります。ある上場企業の代表取締役が別の競合企業の役員を務めていたのですが、定期的に兼務先企業での活動状況を報告していて偉いな…と感心しました。今思うと、あの中には競合企業の営業秘密が含まれていなかったか?と心配するのですが。

勤務先では、直接のライバル企業ではないにせよ、消費財メーカーの現役役員を社外役員に招聘したこともありました(先方と顧問弁護士が共通しており、当該弁護士には散々反対されました…)。
大企業の中には、代表者が別の大企業の社外役員に就任されることもありますよね。

代表者が代表者を兼務することはあるか?

代表者が別の企業の社外取締役に就任したり、グループ企業や資産管理会社の代表者に就任することは珍しくありません。では、代表者が血縁のない企業なり団体なりの代表者を兼務することはあるでしょうか。

なぜそんなことを考えるかというと、勤務先の代表者にある非営利団体の代表就任要請があり、「問題ないか」と聞かれたからです。。
調べたところ、会社法上はもちろん、NPO法上も問題なかったです。実際、NPOではありませんが、業界団体なんて、みんなその業界の巨人の代表者が(持ち回りで)代表をやっています。

NPOだとE(環境)やS(社会)の色合いが濃くなるので、その代表に就任して自社の事業機会の増大に貢献させられれば、社会課題の解決と企業の持続的な成長を両立させられてESG投資としてはハナマル。だから堂々とやればよろしい」という意見もありました。
「そんなところにうつつをぬかす暇があったら、もっと業績を上げて株主に還元しろ」という株主さんもいらっしゃいそうですが。

中の人間=私は、自社でないほうの活動に多くの時間を割いていたら、「社長って、そんなにうちに興味ないんですか?」と思うかもしれません…