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大阪で働く法務パーソンのはなし

BUSINESS LAWYERSでお話させていただきました

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BUSINESS LAWYERSさんからのお声がけで、新人法務の方へのおすすめ書籍についてお話させていただきました。恐れ多いことをしたな…と今になって焦っております。

www.businesslawyers.jp

おすすめの本などについては記事をご参照いただくとして、お話した後に浮かんだよもやま話を。

まずお伝えしたいこと:おすすめの本は諸先輩方に聞く

記事にもあるとおり、新人法務の方が読む本を探すなら、信頼できる先輩方に聞くのが一番だと私は思っています。

身近にいれば、自分の業務やステージに合った本を勧めてくれるはず。「周りに信頼できる先輩がいない」という人は、twitterやnote、ブログなどで探せばすぐにたくさん見つかります。たとえば、企業法務マンサバイバルは、私自身15年に渡って本選びのお世話になっています。今回のBUSINESS LAWYERSさんの記事もそのひとつになりましたね。

blog.livedoor.jp

勧められた本はできるだけすぐに読む(+感想をいう)

もし、先輩に勧めてもらって借りたり買ったりした本は、できるだけすぐに読んだ方がいいです。

法務どうこうではなく処世術ですね。私は、「何か良い本ありますか?」とメンバーに言われると、ついつい押し貸ししてしまうので、1か月以内に読んで返してくれたらすごくうれしいです。感想を何かひとつ、「ここがよくわからなかった」とかでもいいので添えてくれると、なお好感度が上がります。若い方はぜひ実践してください。

無理して読まなくていい

大原則として、「自分の成長のために、本は自分で買うべし」というのが私の信条ですが、法律系の書籍は高価ですし、若いうちは本に使えるお金も限られています。私も新人の頃はあまり買っていませんでした。何人かの若手を見てきた私個人の感覚では、本を買い集めているからといって成長が早いということもありません。

初めのうちは、本より条文をしっかり読んだほうがいいです。誤解を恐れずに言えば、「本を読んだって理解できないでしょう?」とさえ思います。何より事実確認が重要で、次に条文を読み、事実を当てはめて、解釈が必要なところ(=自力ではわからないところ)をクリアにしてから初めて本に当たる、というのがそもそも法務の仕事のスタイルですし。

最近は行政も情報提供に熱心なので、「その分野に詳しくなりたい!」と思ったら、まずは所管省庁のサイトなどをしっかり読むことをおすすめします。下請法なら公正取引委員会景品表示法なら消費者庁、個人情報なら個人情報保護委員会など。
ベテラン法務でも弁護士でも、これらのサイトがどんな情報を提供してくれているかを完璧に頭に叩き込んでいる人は少ないので、「この本にこう書いてあった」より「所管省庁のサイトにこう書いてあった」と教えてくれるほうがありがたかったりします。

…ということを、チームのメンバーに教えた記憶はないのですが、メンバーはよく実践しています。これはおそらく、書籍へのアクセスが充実していない副産物ですね。。喜んでいいのやら。

法務外の2冊を選んだ理由

取材にあたり、編集部の方からお勧めの書籍を複数教えてほしいとご依頼いただきました。法務系の書籍は私が紹介するのもおこがましいくらいですので、このブログでもご紹介した2冊のみとし、他は誰も紹介していなそうな畑違いの書籍を選びました。ただし、どちらの書籍もそのカテゴリでは定評があるものです。

なぜその2冊を選んだかは記事のとおりですが、話し尽くせなかったことを少し。

法務の心得的な本には、たいてい「正確でわかりやすい文章を書け」的なことが説かれていますが、どうやったらいいのかをきちんと説明してくれるものは少ないです。法律文書(や論文)の書き方を教えてくれる書籍はいくつもありますが、新人法務はそんな書面を書かないのであまり参考になりません(難しすぎて読めないかも…)。

しかし、やはり法務は書くのが仕事なので、このスキルは絶対に鍛えなければなりません。芸術作品を書くわけではないから、トレーニングをすれば及第点には届きます。その基礎体力・体幹を鍛えるために、ライター向けの本をご紹介しました。私もまだまだ修行中ですが。

また、特に最初のうちは文字だと「わかった気」になってしまう可能性があり、「じゃない方」やあるべきなのに欠けているフローを見落とす可能性があります。そういった見落としを防ぐため、そして、いろんな関係者と同じページに立って議論するためには、一枚絵にするスキルが必要だと考えており、櫻田さんの図解の本をご紹介しました。

どちらの書籍も類書が豊富に存在しますが、①初心者でも読めて自分のものにできる点、②使う場面が豊富にありそう、というのが選んだポイントです。

雑誌は目次を見る

今回は対象が書籍だったので触れていませんが、雑誌との付き合い方について。

本来は購読しているなら全部読むべきなんでしょうが(中村直人先生は、読んだら捨てる(捨てるから読む)と本で書いてらっしゃいましたね…)、なかなか難しいです。。

できるなら、著名な雑誌の目次は目を通した方がいいと思います。ホットな話題、本にはならないであろう話題(研修の仕方とか)を取り上げているので、目次だけでもインプットしておくと、いつか役立ちます(多分)。すべてを脳や自分のPCに記録しておくことはできないので、せめて「Who knows what」を覚えておくということですね。