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大阪で働く法務パーソンのはなし

非公開会社の定款をアップデート

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子会社の定款が「時」と「とき」を使い間違えるなど、ところどころいけていないので、変更案をつくっているのですが、ちょっとつまずいています。

取締役会議事録は「署名又は記名押印」が必要?

全株懇の定款モデルには取締役会議事録に関する定めがないので、上場企業の多くも定款には取締役会議事録の定めを設けていません。

ところが、非公開会社となると事情が異なり、定款で取締役会議事録の定めを設けている例も多いのではないでしょうか。たとえば、日本公証人連合会のモデル定款でも、以下のサンプル規定が紹介されています。

 

(議事録)

第31条 取締役会の議事については、開催の日時及び場所、議事の経過の要領及びその結果、出席した特別利害関係を有する取締役の指名、出席した株主の氏名又は名称その他会社法施行規則第101条第3項で定める事項を議事録に記載又は記録し、出席した取締役及び監査役が署名若しくは記名押印又は電子署名をし、取締役会の日から10年間本店に備え置く。

ここまで丁寧に定款に定める例はなかなかないと思いますが、うちの子会社だと、「取締役会の議事の経過の要領及びその結果その他の法令で定める事項については、議事録に記載し、出席した取締役及び監査役が署名又は記名押印する。」といった定めになっています。

どうしてこのような(余計な)規定を定款に置いてしまうのか。理由は2つあると思います。
ひとつは、ひと昔前(会社法施行前)は、定款に定めを置くのが普通だった(と思う)ので、そのまま放置している可能性です。でも、会社法施行から15年経ちましたので、会社法施行後に設立された会社もかなりあります。
そこで考えられるのは、非公開会社は取締役会規程をつくらないこともあるので、大会社なら取締役会規程に書くようなことも定款に詰め込んでいる可能性です。

…うちの子会社はどちらもあてはまらない(会社法施行後に設立され、取締役会規程も存在する)のですが。

今後、世の流れに乗って議事録を電子化したいと考えていて、署名か記名押印しか許容しない定めは妨げになります。そこで、上記の下線部分を「議事録に記載又は記録し、出席した取締役及び監査役が署名もしくは記名押印又は電子署名する」といった感じに変更する予定です。

ついでに設立時の附則も削除したいが、絶対的記載事項は…?

設立してあまり時間が経っていない会社の場合、附則がそのまま残り、設立時取締役の名前や設立時代表取締役の住所なんかがオープンになっていることがままあります。
子会社にもそのようなところがあるのですが、非公開会社でも意外と定款を提出する場面があるので、この機会に余計な附則も削除したいと考えました。 

普段、自社・他社の定款を眺めても附則がないところが普通で、大して違和感を覚えないのですが、いざ自分で削除しようとすると気になることが…

会社法上、定款の絶対的記載事項は次のとおりです(会社法27条)。

  1. 目的
  2. 称号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

4号と5号は、通常は原始定款に附則として記載され、設立登記が終われば用済みです。しかし、定款の絶対的記載事項ということは、削除するとまずいのか?

手元の書籍では、削除の可否を説明してくれるものが見当たりませんでした。もし削除不可だとしても、削除する株主総会決議が無効になる=附則が復活するだけだから、他のグループ会社同様、削除してしまおうと思っています。この考え、間違っていますかね。。

株主の印鑑届出はどうすれば?

さらに、議事録の電子化対応をするのなら、他の書類も可能なものは電子化対応できるように…と他に紙やハンコを前提にしている規定を探したら、(当然)ありました。たとえば、株主等の印鑑の届出です。 再び、日本公証人連合会のモデル定款より。

 

(株主の氏名等の届出)

第13条 当会社の株主及び登録株式質権者又はそれらの法定代理人若しくは代表者は、当会社所定の書式により、氏名又は名称、住所及び印鑑を当会社に届け出なければならない。

2 前項の届出事項を変更したときも、同様とする。

「印鑑」を「印鑑又は電子証明書」に変えればいいのか?と変更案をつくりかけたのですが、「電子証明書」だけじゃ何のことかわからないし、数年ごとに更新連絡をするのか?と考えると手が止まってしまいました。届けてもらうのを「電子証明書」でなく「メールアドレス」にすればいいのか?「メールアドレス」と定款に記載するのはなんだか気後れする…
こちらも本を探してみますが、参考になりそうな記載は見当たりませんでした。論点がマイナーすぎるのか。

実際には、株主に印鑑を届けさせている企業は多くないでしょう。上場企業の子会社で株主(親会社)に印鑑を届けさせている事例は寡聞にして知りません(自社でも当然やってない)。だから、いっそ届出規定自体を削除してもいいかな…と思うのですが、そこまで勇気が持てず、今回は見なかったことにしました。汗