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大阪で働く法務パーソンのはなし

「法務の仕事は定量化しにくい」のか

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前回に引き続き、こちらの調査結果より。今日は、法務パーソンの人事評価についてです。 

legal-operations.jp

法務の人事評価で重視されるのは?

アンケートでは、次のような結果も公表されています。

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https://legal-operations.jp/questionnaire/

評価で「最も重視されているもの」を回答できる法務パーソンってかなり限られるはずなので、いくらか割り引いて見る必要があると考えますが、「定性的な目標達成」が最も多いというのは意外に感じます。
普通は、「上司からの評価」だと思うのですが。

「定性的な目標達成」って、たとえば「年間計画に従ってコンプライアンス教育を行った」とかですよね。さすがに「一生懸命頑張る」とかではないですよね…

私のチームの場合、私が一次評価を行い、私のボスが最終評価をするのですが、ボスは法務のことがさっぱりわからないので、私の評価がそのまま最終評価となり、給与・賞与・昇格が決まります。つまり、メンバーにとって最も重要なのは「上司(私)からの評価」です。私の評価もボスの一存で決まるので、私にとっても「上司からの評価」が最重要です。

では、私がメンバーを評価するのに何を見ているかといえば、

  • 期初に立てた目標(定性又は定量
  • 依頼者からのフィードバック
  • 自分の閻魔帳(日々の行動を記録している)

といったところ。「閻魔帳を最重要視している」というのが本音ですが、対外的には、期初に立てた目標の達成度です。

「法務の仕事は定量化しにくい」のか?

では、期初にどんな目標を立てるのか。私の場合、定性的な目標になりがちなことは否定できませんが、できるだけ数字で表せる目標を取り入れています。

このアンケート結果では、「法務の仕事は定量しにくい、という定説を裏付ける結果」という考察がされているのですが、正確には「定量していない」ことが明らかになったと捉えています。定量化しにくいからしていない、ということだとは思いますが。

法務の仕事を定量化すること自体は、それほど難しくないと思います。何件処理したか、最初の回答まで何日要したか、研修を何回やったか、その満足度はどれくらいか…など。問題は、特に案件対応を「適切に」定量化するのが難しいことですね。

契約書であれば、難易度は契約の種類やページ数、書式作成者(自分のところの雛形か、先方書式か)などである程度スコア化できるかもしれません。

しかし、これが相談対応やM&A・紛争対応となればかなり難しいです。「法務業務の定量化(スコア化)に取り組んでいます!」という企業も現れているけれど、相談対応とかはどうしているのか是非聞いてみたいところです。管理者が「この仕事は●ポイント」とエイヤーで決めているのでしょうか。

法務の仕事は読みやすい?

「法務の業務量は読みやすい」と感じる方もあるようです。

確かに、私も以前は「法務は秋〜春まで忙しく、夏は落ち着いている」と感じていたのですが、ここ数年は季節で繁閑を感じることはなくなりました。大体いつも案件に追いかけられていて、時々ぴたっと止む、ということを繰り返しています。たまに訪れる空白を「嵐の前の静けさ」と捉え、できることを前倒しでやっておいて、「助かった」と胸を撫で下ろすこともよくあります。

当社は、売上も伸びていない(何なら落ちている)し、オールドエコノミーに分類される業種ですが、だからこそ既存の事業の中で、さらに新規事業においても色々挑戦が必要で、法務も、年々業務の難易度は上がるし数も増えています。
どこがどう増えるのか、事前に予測することも難しい。これは、社内の対話が不十分なだけかもしれませんが…

難易度のスコア化+360度評価で見える化

日々誠実に業務に励むことを何らかの方法で見える化して評価に生かしたい。

法務部門の管理者なら誰しもそう思っているはずです。問題はそれをどう実現するかで、何とか見える化しようという流れが起きているのはとてもいいことだと思っています。

私もまだ案件のスコア化には取り組めていないので、来期はなんとか取り組みたいと思っているところです。

業務のスコア化は、チーム内では客観・公正な評価に思えそうですが、アウトプットの質も評価されなければなりません。今は定期的に、依頼者から、チームに対する評価をしてもらっていますが(これはこれでとても有益です)、できれば、メンバーに対する360度の評価を得ていきたいと考えています。