Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

職場の創造性を高めるルールのデザイン

週末、こちらのイベントを拝聴しました。シティライツの水野先生×ミミグリの安斎さんの対談。

cultibase.jp

食い扶持である「法務」と、興味・関心である「自分を含む誰かを"enlight","empower"すること」が重なる日がついにやってきました。特に印象に残った3つの話題をメモしておきたいと思います。

「法律はつくれば守られる」という思い込み

まずひとつめ。「法のコミュニケーション」は未開拓だという指摘がありました。その理由は「法律はつくれば守られる」という思い込みがあるからということ。

国は法の理解促進のために、

といった取組みをしてはいるけれど、確かにコミュニケーションとは言い難いですね。

このお話を聞いて、「法」を「会社のルール」に置き換えた「『会社のルールはつくれば守られる』という思い込みがある」が即座に頭をよぎりました。

私のボスはよく、「これって規程にあるよね?なんで見てないのかな?」というのです。そして、「そんなルールあったっけ?」ともよくいう。前者は自分がつくったルールを指して、後者は他人(他部署)がつくったルールを指していいます。つくったほうは、「つくればみんな理解して守るはずだ」という指摘、まさにそうです。。

ルールは布教活動も大切だな…と改めて実感した次第。誰がするんだ?という難しい問題があるのですが。布教にもリソースがいるので、やっぱりルールはシンプルがいいですね。

ルールは破ってもよい

ふたつめ。特に気に入ったお話なのですが、「ルール」の性質について。
ルールというのは設計しきれないし、破ってもいいやわらかなもの。だから、生成的デザインの有効なツールだというお話。

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メモの一部

普段からルールに意識的に接している身としては、「ルールは破ってもよい」という見方に違和感を持たなかったけれど、聞いている人はびっくりしたんじゃないでしょうか。弁護士が「ルールは破ってもよい」なんていってるよ!と。

また、ルールには悪用(ハック)する人が現れますが、そういう人がいないとよりよい社会が実現しないというお話にもとても共感しました。ルールの逸脱を「バグ」と表現されていたのが秀逸でした。ハッカーがバグを見つけてくれるというわけ。

だから「みんな、もっとルールを使おうよ」と私も社内で呼びかけるわけですが、今ひとつ響かないのが悔しいです。使いもしないルール(=契約)をつくらせるな、見させるなと言いたい。

ルールはつくったら見直す

みっつめ。重要なお話で、「ルールはつくったら見直す」ということ。法律も会社のルールも、多分マイルールも。

ルール(法)に対するネガティブな意識の原因は、「ルールはつくって終わり」なところにあるというご指摘がありました。「ルールはつくって終わり」にしたらダメとわかってはいるけれど、それがネガティブな意識の原因になっているとは考えたことがなかったです。

その心は、ルールが不変だと押し付けになるからで、「ルールは自分たちで変えられる、つくる」となればルールに対する姿勢が主体的になれるということです。だから、「見直すことをルールにする」ということが重要なんだというお話でした。なるほど。

前職では、月に1回は規程改定のための委員会が開催され、職務権限規程は年に1回必ず各部で見直すというルールがありました。渦中にいると「面倒…」と思うこともありましたが、自社にどんなルールがあって、それが今の会社に適切かどうかを常に考えていたので、今思うとよい仕組みだったなとつくづく思います(現職でも提案しましたがあっけなく却下でした…)。

どんどんハックしてやろう

職種的には、会社や相手方とのルールをどう守らせるか?に腐心したほうがよいのかもしれませんが、そういう仕事はつまらない。
それよりも、ルールを活用して「そんな使い方があったか!」「そういうルールに変えたい!」と思ってもらえるような刺激を与えられる仕事をしていきたいなと思ったイベントでした。