我が社はカオスの真っ只中ですが、電子契約がかなり浸透してきています。
「相手方が●●サインで締結したいと言っているがよいか?」と聞かれることが増えてきたので、そろそろまとめたほうがよいのでは?と考えてみました。
デジタル版Battle of formを制するには
すでに自社で導入していれば、そのデフォルトを用いたほうがいいに決まっています。
しかし、世の中には複数の電子契約サービスがあって、相手方の利用サービスと自社の利用サービスが一致するとは限りません。
英文契約ではBattle of formと呼ばれる(自社に有利な)書式の取り合いが当事者間で行われるといいますが、これからはデジタルの世界でも避けられなさそう。
この戦いを制し方(扱い方)が、こちらの記事で紹介されていました。なるほど、重ねがけというアイデアがあったか!と目から鱗でした。
まあ、うちはまだ導入していないんですけど。
自社のデフォルトがない場合
では、まだ本格導入ができていない当社のような会社はどうすればよいのか?
結論からいえば、以下の要件をすべてクリアする場合にはOKとしてはどうか?というのが私の考えで、(特に誰の了解もとっていないけれど)聞かれればそのように回答しています。
- 書面での締結が法律で求められていない
- その契約の重要性が低い(短期間、少額その他万一のときの影響が小さい)
- 締結権限者は社長ではない(社長のメールアドレスが開示されない)
- 名の通った電子契約サービス事業者のものを利用する
「名の通った」とは?というのが難しいのですが、今のところ尋ねられたことがあるのはクラウドサイン、DocuSign、Adobe Signなので、回答に窮したことはありません。
【事業者別】電子契約の特徴
注意点の前に、まずは各社の電子契約の特徴をおさえておきましょう。上記の3社に加えて、導入企業数No.1だというGMOサインも取り上げました。
Adobe Sign
Adobe Signには、「電子サイン」と「電子署名」があります。「わざとか?」というくらい説明がわかりにくくてぜひ改善をお願いしたいのですが、その特徴・違いは以下のとおりだと思います。
- 電子サイン
要するに、事業者署名型の電子署名。電子証明書はAdobeのものだけがつくので、署名パネルだけでは誰が署名したのか確認できず、Final Audit Reportにて確認する必要がある。認定タイムスタンプはつかない。長期署名も当然なし。 - 電子署名
いわゆるクラウド型の当事者署名型の電子署名。電子証明書は署名者のものがつくため、署名パネルで検証可能だが、事前にデジタルID(電子証明書)を自分で取得しなければならない。認定タイムスタンプ・長期署名はつかない。
クラウドサイン
事業者署名型の電子署名。にもかかわらず、署名パネルから「誰が・どのメールアドレスで・いつ」承認したかがわかるのが特長。タイムスタンプ・長期署名も標準装備。
DocuSign
DocuSignには、「電子署名」と「デジタル署名」があります。イメージは、Adobe Signと同じかと思いきや違います。こちらも情報がわかりやすいとは言いにくい・・・
- 電子署名(eSignature)
事業者署名型の電子署名。こちらも署名パネル上では誰が承認したのか不明のため、Audit Report(完了報告書)にて確認が必要。認定タイムスタンプ・長期署名はつかない。 - デジタル署名(EU Advanced)
事業者署名型の電子署名で、署名パネルから署名者などが確認可能。認定タイムスタンプ・長期署名はつかない。
GMOサイン
GMOサインにも「契約印」と「実印」という2つの電子署名が用意されています。
- 契約印タイプ
事業者署名型の電子署名。署名者など署名の詳細は電子契約締結証明書を確認しなければならない。デフォルトで認定タイムスタンプ・長期署名がつく。 - 実印タイプ
クラウド型の当事者署名型の電子署名。署名パネルから署名者が確認可能。デフォルトで認定タイムスタンプ・長期署名がつく。
【事業者別】電子契約利用時の注意点
以上を踏まえて、各社の電子契約サービスを利用する場合の注意点を整理すると、次のようになると考えます。
経験上、有償で電子証明書を取得しなければならない当事者署名型で締結したいと言ってこられることはほぼないし、DocuSignのEU Advancedも登記以外に出番はないでしょうから、これらは省略しました。
といっても、結論は簡単で、
- クラウドサインなら
①契約締結者と電子署名者を一致させること
②署名済み電子契約を適切に管理すること - Adobe Sign・DocuSign・GMOサインなら
上記①②に加えて、
③Final Audit Report、Audit Report、電子契約締結証明書を提供してもらうこと - これら以外の電子契約サービスを利用する場合には、事前に相談すること
外資系のサービスでは、認定タイムスタンプがデフォルトではつかないし、文書管理機能も弱いので、電子帳簿保存法対応が必要な契約の場合は、財務経理との相談も必要ですね。今のところ、国税には話題にされたこともないようですが・・・