Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

オンライン研修をするなら【基礎編】

f:id:itotanu:20210904230556p:plain以前は、研修といえば集合研修が当たり前で、遠方なら出張していました。それが今や、オンラインで全国各地の従業員に参加してもらえます。移動もないし、まったくありがたい。

以前に、オンライン研修の経験談を踏まえた記事を書きましたが、その後のアップデートや周囲の話も参考に、もう少し整理してみました。まずは基礎編から。

legalxdesign.hatenablog.com

legalxdesign.hatenablog.com

まずは自社の環境・ツールをチェックする

「オンライン研修をどうやってするか?」を考える前に、まずは、自社の環境・ツール、そして自身や受講者のリテラシーをチェックする必要があります。
参考までに、当社の環境・ツールは以下のとおりで、同じ規模なら至って標準の装備ではないでしょうか。

  • 法務が使えるオンライン会議ツールは原則としてTeams(使おうと思えばZoomも)
  • 社員には貸与PCがあり、Microsoft 365(Teams、Forms、SharepointWhiteboard等)が使える
  • その他のサービスはセキュリティ上&お財布の都合上使用不可(Slack、YouTube、vimeo、Miro、Notion、Jamboard等のGoogleのサービスなどなど)

Microsoft365のリテラシーは、以下のような感じではないかと。子会社だと、環境的に見られない人もいます。

  • 法務→Teamsでチャット、投票機能、ウェビナー、ライブ配信などは使える。FormsやWhiteboardも使える。Sharepointは使っている実感がない(裏でワークしているのは知っている)。
  • 社員→バラバラではあるが、最低レベルだとTeamsでオンライン会議に参加するのがやっと(チャットとかマイクミュートもできない)。

どんなスタイルで行うか

環境やツール、リテラシーのチェックが終われば、どんな方法で研修を行うかを考えます。方法には、次のようなものがあります。

  • リアルタイムでやる集合研修をライブ中継する
  • 事前に録った動画を観てもらう
  • リアルタイムでオンラインのみで実施する(一方的又は双方向)
  • ブレイクアウトルームを活用するなどワークショップデザインスタイルにする

結論としては、「目的・内容によって使い分けましょう」ですが、他社あるいは他部署では、以下の場合には事前録画して各自に観てもらう一方方向スタイルをとることが多いようです。

  • 何度も使うもの(ハラスメント研修、下請法研修といった数年では内容が大きく変わらないようなもの)
  • 対象者が全社員など幅広いもの(例:ストックオプションの説明)

私自身は、「興味もないのに、ただ動画を観るだけなんて拷問」と感じてしまうので一方方向は嫌いだし*1、受講者が違うと研修は別のものになるので、同じ話を何回かするくらいの汗はかくべきだという考えです。よって、基本はリアルタイムで、できるだけ双方向の要素を取り入れた研修を行っています。やむを得ず不参加となる方のために動画を用意することもありますが。

オンライン研修ならではの準備

オンライン研修でも準備が大切なのは言うまでもありませんが、オンライン研修ならではの準備もあります。

たとえば、今の当社のITリテラシーだと、まだ音量のON・OFFや調整が苦手な方があるので、定時前に音楽を流して確認を促すようなことをします。
また、これは研修の内容や講師の考えにもよりますが、当社の場合は「事前に資料がほしい」という受講者からのリクエストが結構あり、事前にレジュメを送付することが多いです。ただ、ネタバレになるところもあるので、そこは伏せておき、研修後に完全版を送ります。

そして、時間も重要です。オンライン研修は短時間(最大でも60分)がいい。テーマにもよりますが、ずっと画面を観ているのはしんどいので、私のチームでは講義は45分内で終わらせることを目安に構成を考えます。

最後に重要なことは、できるだけ本番と近い環境でリハーサルをすること。特に慣れるまでは何回かやったほうがいいと思います。画面共有(切り替え含む)がスムーズにできるか、受講者からはどのように見えているか、などを確認します。

裏方は欠かせない

そして、当日は裏方が欠かせません。講師が専念できるように…というのが最大の理由ではありますが、当日は次のようなトラブルが起きるので、裏方がいてくれないと研修がままなりません。

  • 直前になって「リンク先がわからない」という人がいる
  • マイクやカメラをONにして他の受講者の集中を妨げる人がいる
  • 何かトラブルがあっても講師は気づけない(し、受講者は教えてくれない)

そのほか、講師は画面共有したPPTの操作でいっぱいいっぱいのため、受講後のアンケート案内、チャットへの書き込みチェックなども裏方のサポートが欠かせません。当社の場合は、最低でも1名、可能なら2名に裏方に入ってもらいます。

もうひとつ、裏方を入れるメリットがあって、それは裏方に入ったスタッフが講師や受講者をよく観察するため、自分が講師になる際の勉強ができることです。研修内容を知っている分、ただ漫然と聞くのでは発見も少ないため、仕事があるほうがいいです。

何を持ち帰ってもらうかを明確にした上で受講者の立場になる

研修で何を持ち帰ってもらうのか、この研修を通して受講者の何を変えるのか、を事前に明確にしておかなければなりません。プレゼンテーションをする上で、オンラインかオフラインかにかかわらず重要です。

オンライン研修では、話し方で抑揚をつけるのが難しかったり、非日常感を作れなかったりして、集合研修と比べると受講者を変えるのは難しいというのが今のところの仮説です。なので、法務が行う「これからは〜してください」というような研修では、よりゴールを絞る必要があると考えています。

さらに、受講者がいる環境を想像し、より「ありそう」な設定を探究するなど受講者の立場になった内容を模索すべきでしょう。

コツは小さなチャレンジを重ねること

長文を書いてしまいましたが、私たちも受講者の協力を得て1年半以上試行錯誤しながら取り組んできました。それでもまだワークショップデザインでの研修はできておらず、発展途上です。

最初からあれもこれもは難しいので、まずは一方方向から始めて徐々に双方向を取り入れる、あるいは少人数から始めて大規模にしていくなど、小さなチャレンジを重ねることがオンライン研修の成功のコツではないでしょうか。

今回は基礎編にしたので、今後は応用編、こんなときどうする?などを書いてみたいと思います。

*1:興味があれば喜んで聞いており、前は東京でしか聞けなったようなセミナーに参加できるようになって、それはとても感謝しています!