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大阪で働く法務パーソンのはなし

求人票と採用試験をつくる

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当社はこれまで、新卒の専門職採用はしてきませんでしたが、諸般の事情で急遽法務で専門職採用をすることになりました。
求人票と採用試験を作らねばなりません。初体験です。

法務は人員無計画

当社のように法務部門が独立していない企業では、法務の人員計画を持たないところも多いと思います。当社は、私と人事で認識を合わせたことはありません。
人事にとって法務は霞んだ存在であり、次のような思い立った?ときにだけ、総合職採用を前提として増員・欠員補充されてきました。

  • 新規事業で法務の手が回らなくなった(私はこれで採用された)
  • 新卒採用で名門の法学部出身者が現れた(以前の新卒法務は全部これ)
  • 他部署に配属したが水が合わなかった(最近はこちらのタイプが増えている)
  • 他部署のキャリア採用で応募があり、人物は優れているものの当該部署のニーズに合わなかった(という人がいたが、その後すぐに他部署に抜かれた…)

こちらの計画・都合は無視で面白くはないけれど、「法務の人員を増やしてやろう」というチャンスは、そうありません。なので、声をかけてもらったときは「お願いします!」と答えています。

今回はそんな千載一遇の機会なのですが、さらに珍しいことに、エキスパート人材にしたいという人事の意向により、新卒(第二新卒含む。)で専門職採用を狙うことになりました。
私は、法学部・ロー出身にこだわらないので、総合職採用でも専門職採用でもどちらでもよいのですが*1

最近の学生はキャリアセンターを利用しない

法務の新卒・専門職採用は、当社では初の試みです。私も初めてだけれど、人事も勝手がわかりません。まずは、どこにアプローチをするのが効果的か。

私は、大学のキャリアセンターが良いのでは?と思ったのですが、人事から「最近の学生はキャリアセンターを使いません。」と言われました。。
就活サイトが使える新卒はともかく、既卒へのアプローチ方法がない…

とはいえ、大学が求人票を置いてくれるというので、とりあえず置いてもらうことに。司法試験の結果も出たことですし、いい方の目に止まりますように…

求人票は広告

今回の新卒採用では、法務で求人票を作成しました。勝手が全然わからないので、「こういうことをこれくらいの字数で書くように」と人事からアドバイスをもらいながらの作業です。

記載項目はこんな感じ。

  • 求人票のタイトル
  • 具体的な業務内容
  • 応募資格
  • 求める人物像
  • 必要なスキル
  • 会社からのメッセージ

人事から釘を刺されたのは、「求人票は学生を誘引するためのものです!」ということ。
コロナ禍といっても学生さんは売り手市場のようで、応募を促すものにしないといけないらしい。まるで広告。

求める人物像と必要なスキル

学生さんが何を重視するかはわかりませんが、こちらとしてはミスマッチを可能な限り減らしたいので、「求める人物像」と「必要なスキル」は慎重に検討しました。

仲間に迎えたいのは、熟達目標志向(もっと上手くなりたいから努力する)が高い人です。

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ただ、直接的には書けない。このあたりは、若いメンバーに協力してもらいました。

また、私たちは自社のパーパスや価値観を良心にして仕事をしないといけないので、これらに共感・実践できる人というのも加えました。
ほかにもいくつか書いたのですが、結論、「求める人物像」はこれだけでよかったんじゃないか。。

他方、必要なスキルですが、これは「なし」にしました。交渉力、文章読解・起案力、情報収集・編集力とか、必要な力は色々ありますが、就職してからで遅くはありません。
私自身、入所前、上司となる方に「入所までに身につけておくことはありますか?」と質問したことがあるのですが、「何もいらない。入ってからで大丈夫」と言われたことを鮮明に覚えています。そして、それは正しかったと思う*2

採用試験で何を測るか

今回、専門職採用にあたっては、私の方で知識・スキルをスクリーニングしてほしいと言われているのですが、知識を測るなんてつまらない。
一方で、法務専門職となれば、ある程度の想像力(リスク感知力)や伝える力(何をどう伝えるかを取捨する力)が備わっていないとちょっと厳しい。そしてそれを面接だけで測るは難しそうです。

そこで、通常は適性検査と面接しか行わないそうですが、今回は筆記試験もやってもらう予定です。試験問題を考えねば。。
ちなみに、15年以上前、私が大手法律事務所を受けていたときの筆記試験は次のようなものでした。ちょっとずつ事務所のカラーがあったように思います。

  • 英文和訳
  • 和文英訳
  • 一般常識(漢字テスト的な)
  • 時事問題をテーマにした小論文
  • 似たような法律・用語の違いの説明

採用してくれた元上司と試験作成者を尊敬

私は新卒で法律事務所に入ったのですが、入所するまでどんな仕事をするのか、よくわかっていませんでした。
訳もわからず応募した私に「入所前に準備は何もいらない」と言ってくれた上司は、本当に仏に見えたし、採用試験も法律知識でなく手元の情報から文脈に合ったものを選んだり論述するようなもので助かりました。

法学部生としては及第点レベルだった私でも解ける試験を作ってくれ、採用してくれた元上司と試験作成者(入所後のトレーナーでもあった)は今も尊敬していて、私の採用や育成の指針になっています。

私は、自分の経験をベースにしていますが、みなさんはどうやって採用していらっしゃるのでしょうか。。

*1:他の仕事に興味が湧けばそちらに移る道があっていいと思いますが、学生さんには「最初からずっと法務」のほうが響くのでしょうか…

*2:ちなみに某大手事務所は、「英会話ができること」「入所までにブラインドタッチができるようになっておくこと」というのを課していました。