Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

議事録の電子化を実現

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取締役会議事録を電子化しました。といっても子会社の話です。
作成から一両日中に議事録が完成するのには、感動すら覚えます。

動機は電子契約推進

取締役会議事録を電子化しようした理由。それは、役員を回るスタンプラリー(押印をもらう)から脱却したいということもありましたが、電子契約を推進したかったからです。

当ブログで何度も書いていますが、当社は電子契約の導入をしたいのに、山が大きすぎて全然登れていません。。
電子契約導入は、別のプロジェクトチームが取り組んでいるので、私が後押しのためにできることとして思いついたのが「将来電子契約を利用することになる役員たちに、今からやり方やメリットを知ってもらう」ことでした。
そこで、取締役会議事録の電子化です。基本的には外に出て行かない書面ですし、でも事務局はハンコ集めに時間がかかっているし…ということで、ちょうどよかった。

準備期間は3か月(事実上は1か月)

導入提案を社長に説明し、OKをもらってから、実際に導入するまでは3か月かかりました。

その間にやったことは、以下のとおり。3か月といっても、ほとんど何もしていない期間があったので、事実上は1か月といってもいいと思います。

  1. 電子契約サービス事業者の選定・契約
  2. 定款変更
  3. 取締役会規程の変更準備
  4. 専用メールアドレスの準備
  5. アカウント発行
  6. 事務局担当+子会社役員への使い方レクチャー

まずは、どの電子契約サービスを使うかを決めました。登記での利用も想定しているので、その観点でもっともお手軽かつ実績もあるという理由で、クラウドサインとしました。

並行して、導入対象子会社の定款変更も行いました。以下の先日の記事でも書いたのですが、なぜか取締役会議事録への記名押印義務が定款で定められていたので、これを削除するためです。ついでに、気になったところをごっそり変えました。

legalxdesign.hatenablog.com

定款変更には株主総会決議が必要であり、当社グループの場合、株主総会での議決権行使については親会社(=当社)取締役会での承認が必要なので、これを得る手続も。導入にあたって、スケジュールで最も融通がきかなかったのはこれです。

また、取締役会規程でも記名押印が義務付けられているので、これも変更案を準備します。こちらは、事前に決議を得る必要はないので、今回のタイミングで承認です*1

取締役会事務局用アカウントを作成

導入にあたって迷ったり苦労したりしたことはほとんどないのですが、唯一悩ましかったのは、「どのアカウントで議事録を送信するか?」ということ。
結局、会社別に取締役会事務局専用のメールアドレス(例:xx-minutes@xxx.co.jp)を作成し、クラウドサインのアカウントはそれを使うようにしました。

もうひとつのアイデアは、事務局担当者個人のメールアドレスを使うことでしたが、そうしなかった理由は、将来、クラウドサインを電子契約でも使うことになった場合、支障が出そうだと判断したためです。

というのも、クラウドサインはチーム単位で契約するのが前提なのですが、同じメールアドレスで複数のチームに所属することはできません。当社の場合、議事録管理は少し特殊(部署・会社横断的)なのでこれを1チームにする必要があり、もし別の業務でクラウドサインを利用するなら、違うメールアドレスが必要です。
そこで、特殊なのは議事録のほうだから、という理由で事務局専用アドレスを別途作成することにしました。

ところで、事業者署名型の電子契約では、誰がどのメールアドレスから電子署名をしたのかが記録されます。したがって、「取締役会事務局」というアカウントで送信するとクラウドサインでも「取締役会事務局」が電子署名したと記録される。

登記申請時に支障があるかも?という噂もありますが、ただの余事記載と扱ってくれると信じています。

来年には当社も、そして登記も

子会社の役員は人数も少ないので、押印に回しても知れています。人数が10名超となるような当社こそ、議事録電子化のメリットが享受できるというもの。

まずは子会社からスタートしましたが、来年からは当社でも利用できるようにするつもりです。そのために、子会社ではすでに実施しましたが、役員と事務局の送信担当者にクラウドサインの使い方を説明したりしていきます(特に役員には、事前に一度練習しておいてもらうことが必須だと思う)。

さらに、電子化に慣れてもらったら、来年の登記ではすべて電子化で対応したいと企んでいるところです。商業登記電子証明書は、すでに取得済みです。

最後のネックは、司法書士さんがこちらのお願いを聞いてくれるか…

*1:特に条件をつけなければ、承認したタイミングで改定の効力が生じるので、取締役会終結時には電子署名が可能になっている。