Legal X Design

大阪で働く法務パーソンのはなし

商業登記電子証明書を手に入れた

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先日、子会社の取締役会議事録の電子化が実現しました。

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そしてこのたび、商業登記電子証明書も手に入れました。「こんなに大切なものをこんな感じで管理してていいの!?」と驚いています。

商業登記電子証明書は意外と利用されている

会社によって様々ですが、法務パーソンは、契約書を起案・修正したり、過去のものを閲覧したりして日常的に触っているものの、契約書に押印することは滅多にないという人が多いと思います(製本も同様。私も事務所時代は上手だったのにすっかり下手に…)。
会社がどんな書類にどれくらいハンコを押しているのかも詳しくは知りません。いわんや電子署名の利用状況をや。

議事録の電子化をスタートさせましたが、役員変更登記申請の添付書類になる議事録まで完全に電子化しようとすると、商業登記電子証明書の取得が必要です。
以下のような代行サービスがあるくらい、面倒くさい手続だと聞いていたので、年に1回しか利用しないのに取得するのは億劫だな…と思っていたところ、財務部門から「グループ会社分全て取得済み」との知らせが。

ttzk.graffer.jp

e-TAXなどで利用するため、財務部門では以前から商業登記電子証明書を取得しており、最近だと労務関係の手続でも利用するようになっているそうです。自分たちで申請しなければと思っていたので、思わぬスキップが叶いました。
(改めて考えてみれば、「すでに取得しているはず」と最初から思い至るべきでした…)

全社の実印同等物が手元に

「来年の子会社の定時総会時の登記では、商業登記電子証明書電子署名を使わせてほしい」と財務部門に依頼したところ、しばらくして「これです。どうぞ」とZIPファイルが送られてきました。開封すると、主要グループ会社すべての商業登記電子証明書と署名鍵が格納されているではありませんか。

複製ってこんなに簡単なんですね。今なら私、各社の代表取締役になりすませます。コピーも簡単にできるし、実際行われていて、なりすませる人が社内に複数存在している…*1

「ローカル署名なら本人確認がバッチリ」
「ローカル署名なら電子署名法3条の推定効が働く」が
いかに眉唾ものであるかを身をもって体感しています…

ちなみに、商業登記電子証明書の署名鍵で電子署名するには少しコツが必要です。無料で行うには、法務省申請用総合ソフトを利用するしかなさそう。この場合、どんな電子署名がついたのかを自分で確認(検証)することはできません。。
申請用総合ソフトを使うのはいいとしても、誰でも電子署名の内容を確認できるようになるとうれしいですね。

ハンコと同じ力があるのにルールはなし

特に上場企業は、法務局に登録した印鑑を極力使わないようにしますし、押印する場合には記録(押印簿)をつけるところが多いと思います。実印でなくても代表者名義の印章については押印簿をつける企業が珍しくありません。厳重に管理していることが、二段の推定を支える根拠にもなっています。

商業登記電子証明書は、日本で利用される電子証明書の中で唯一、法人名と代表者を公的に証明してくれるものであり、その証明書がついた電子署名は、実印と同じ効力があるといえます。

ハンコだったらきちんと申請して押印の記録がつけられるのに、当社の現状では、電子署名にそのようなルールはありません。したがって、電子証明書や署名鍵のコピーも制限なく可能で、私や他部署の担当者が簡単に代表者になりすませてしまいます。

こんなことで大丈夫?と心配になるのですが、大丈夫なわけはない。
商業登記電子証明書がつく電子署名の効果は実印と同等と評価できるので、実印のように電子署名の記録をつけ、特定の部門(か代表者本人)だけが行うような仕組みを作るべきです。
クラウドサインのオウンドメディアでは、電子署名管理規程のサンプルが提供されていて参考になるのですが、このとおり運用できている企業は世の中にどれくらいあるのか疑問。。

電子署名の管理方法も、これから発達していけるでしょうか。あるいは、「ハンコのようにはいかない」とハンコ回帰が生まれるのか…(それはないと思うけれど)

*1:業務上の利用は代表者の手足として行うものであって、電磁的記録不正作出や供用、不正アクセスには当たらないと考えますが、とても危険なことをしている気はします。