先日、電子帳簿保存法の準備は大丈夫かしら…と呑気なことを言っていました。
しかし、ファイナンスチームの話を聞いていると冷や汗が出そうです。電子契約の利用を簡単に認めるべきではなかったか。。
改正電子帳簿保存法では電子契約の紙保存ができなくなる
「それじゃ、電子契約の意味がない」というツッコミはさておき、現在、電子契約は、特別な環境を用意しなくても、印刷して保存しておけば税法上の保存義務を果たせます。なので、保管のオペレーションを大きく変えることなく、契約締結プロセスだけ脱ハンコ・脱紙を先行させることができました。
私自身、「相手方から●●サインを利用したいと言われているのだけど、使ってもいい?」と聞かれれば、「いいけど、原本は印刷して他の契約書と一緒に保管しておいてください」と助言していました。
ところが、来年1月1日より施行される改正電子帳簿保存法では、「電子契約を印刷して保存」が認められなくなり、電子取引に係る記録(=電子契約)は、真実性と可視性(検索性)の要件をクリアした状態で保存しなければなりません。
所属先も急ピッチで準備を進めているようで、ファイナンス部門から最近よく質問を受けるのですが、回答に窮することも。
質問①我が社は誰がどの電子契約サービスを利用している?
一番最初に聞かれたのがこの質問。所属先では、法務が一切関与しなくても契約が締結できるので、「知るかよ(怒)」という話。
「●●サインを使ってもいいか?」といった質問は時々受けるので、その経験から「●●サインと××サインは使っている部署があると思いますよ」と答えるのが精一杯でした。
周囲から漏れ聞く限りでは、法務が把握していない電子契約サービスも使われているようです。全部把握するのは至難の業では。。
質問②各電子契約サービスは改正電帳法に対応している?
続いてやってきた質問は、「●●サインと××サインは、改正電子帳簿保存法に対応しているか?」でした。
メジャーな電子契約サービスは、概して
- 日本の事業者は真実性(タイムスタンプ)・検索性もクリアしており、会社で別のシステムを用意する必要はない
- 他方、外資系の事業者はそれ単体では対応していない
といえます。電子帳簿保存法は日本の法律ですからね。。
サービス事業者が対応していればいいわけではない
しかし、たとえ電子帳簿保存法に対応した日本のメジャーな電子契約サービスを利用機能したとしても、検索項目である取引年月日・取引金額・取引先の情報は自動的に読み取ってくれるわけではありません。ユーザーである自社が個別に付与しなければ改正法に対応したことにはならないわけです。
そして、全社導入していない、各電子契約サービスのオフィシャルなアカウントをもっていない今の所属先では、必要な情報を付与した上で保存できているとはとても思えません。法務からも「印刷して紙の契約書と同じように保管してください」としか言っていないし。。
法律上は、複数の事業者のサーバに分散して保存することも許容されるのでしょうが、「A社との取引基本契約」がどこにあるのかがわかっていることが大前提のはずで、結局、会社では一元的に管理するしくみが必要だと理解しています。
利用する電子契約サービスにかかわらず、特定の事業者のシステムに集約するのか、別の管理システムを導入するのか。当社は、後者を選択する予定です。
1月1日から対応するのは無理ゲーでは…
改正法には、1月1日以降に作成される電子契約から対応すればいいので、現状把握が重要とはいえ、「今どうなっているか」にあまり神経を尖らさなくてもいいんですよね。でも、改正法に耐えるルールを整備しないうちに使い始めたことで、改正法への対応をややこしくしてしまったかも。。
「この調子で年明けから対応するのはかなりの無理ゲーでは…」と心配していたら、先週末、2年間の宥恕期間が設けられるらしいとの噂が。
電子帳簿保存法に適正に対応できなければ、青色申告の承認取消しという恐ろしいペナルティが用意されているので、戦々恐々としている企業も多いみたいですが、国税庁も「よーいどん」は難しいとお感じになっているんですかね。
とはいえ、もし宥恕期間が設けられても、企業としてはすでにベンダーさんの協力を得るなどして来月から対応できるように手をつけているので、全面対応が数か月遅れることはあっても、後戻りすることはなさそうです。宥恕期間の公表がギリギリになっているのは、後戻りさせないためでしょうか。。